ー1章ー 16話 「森よ、ぬちゃぬちゃと蘇れ」

森の再生プロジェクト、通称“ぬちゃぬちゃプロジェクト”が、ついに本格始動することになった。


 俺は村に戻ると、真っ先に女王スライムのもとへ直行した。


【リュウジ】「なあ、女王。森の再生、お願いしたいんだけど、スライムたち、動けるか?」


【女王スライム】「もちろんよ! ふふっ……みんな〜!集合〜〜〜!」


 その声に応じて、わらわらとスライムたちが集まってくる……が。


【リュウジ】「……いや、ちょ、ちょっと待って!え? なんか、増えてね!?」


 広場いっぱいに、昨日よりも明らかに多い数のスライムたちが、ぷるぷると跳ねながら集合してきた。


【リュウジ】「サイズも色もバリエーションが増えてるじゃねぇか!?なにこれ怖い……いや、可愛いけど怖い」


【女王スライム】「あらん? 言ってなかったかしら?」


【リュウジ】「え、何を?」


【女王スライム】「スライムって、一定の養分を吸収すると分裂して新たな個体が誕生するのよ♪」


【リュウジ】「え!?何!? 今さら!?それめっちゃ重要な情報だからね!報連相はもっと大事にして!?なに、それは世界の理よーみたいな顔しちゃって!」


【女王スライム】「まぁまぁ、可愛いから許してね? ぷるぷる」


【リュウジ】「おまっ……!その語尾やめろ、和むんだよ!」


 目の前では、ちびスライムたちがぴょんぴょんと跳ねながら整列を始めていた。

 この世の癒やし成分が詰まりすぎてて逆に泣きそう。


【リュウジ】「……これ、もう森再生どころか、スライム幼稚園の遠足だな……」



---


【女王スライム】「じゃあ、いくわよ〜♪ ぬちゃぬちゃ部隊、森の拡張、展開開始〜〜!」


【リュウジ】「ぬちゃぬちゃ部隊ってなんだよ!!嫌いじゃないけど!」


 ぬちゃぬちゃ……ぷるぷる……ずるずる……

 なんとも言えない音を響かせながら、大量のスライムたちが森の方へ出撃していく。

 思ってたより“作業員感”あってなんか感動してきた。



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 次の日の夕方。

 進捗を確認しに、再び森の中へ入ると──


【クラウガ】「……これは……」


【リュナ】「緑が……本当に、芽吹いている……!」


 昨日まで死んだように見えた丘に、小さな若葉が点々と広がっていた。

 緑色の命が地表を覆い始め、岩肌すらも一部、苔が覆い始めている。


【リュウジ】「ふふっ……どうよ。トリア村のぬちゃぬちゃ部隊!なかなかやるだろ?」


【クラウガ】「まさか……これほどの変化が、一晩で起こるとはな!」


【リュナ】「あの子たち……本当に、すごいわね。ぬちゃぬちゃ……あなどれない」


【リュウジ】(今、ぬちゃぬちゃが褒め言葉になってる……!)



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【リュウジ】「よし、森の再生はスライムたちに任せて、俺は森に川を引き込む準備だな。やっぱりあの窪みは池だったんだろう。

 水が入ればもっと植物が育つし、他の生き物も戻ってくるだろうからな!」


【女王スライム】「ふふっ……まだまだぬちゃぬちゃ頑張るわよ♪」


【リュウジ】「よーし、それじゃあ“ぬちゃぬちゃフル稼働計画”始動だ!」


【ちびスライムA】「ぷにゅー♪」


【ちびスライムB】「ぷるるー!」


【リュウジ】「やばい、かわいすぎてもう働きたくない……癒やしの暴力……」



---


 こうして、森は確かに命を取り戻し始めていた。

 争っていたウルフたちがその光景を、静かに──どこか誇らしげに見つめていた。

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