全人類から勘違いされた男

かんたろう

転生

第1話 

 ん?

 何処だここ?



 俺は気付いたら見慣れない部屋の椅子に腰掛けていた。前のテーブルの上には金の細工がなされたティーカップとこれまた高価そうな皿の上にお菓子が置かれている。


 こんな部屋は見覚えがない。

 さっきまで自室にひきこもってだらだらしていたはずだが…


 ちゃんと部屋を見てみるととても豪勢な部屋豪勢な部屋だった。

 しかも、めちゃくちゃ広い!


 部屋には自分の身長の1.5倍の長さはあるベッドやテーブル、2台の本棚、おそらくデスクワーク用の机、ソファーがあった。 

 青を基準に家具が揃えられているようで部屋全体に統一感があり、家具1つ1つが高級そうな雰囲気を醸し出していた。



 おいおい。何処の金持ちんちだよ。

 羨ましいな。


 コンコンコン



 扉をたたく音が聞こえた。


「お皿を下げに参りました」


 おや?

 誰か来たな。ここの住人か?

 それにしては、ちょっとよそよそしい感じだな。敬語使ってるし。



「入っていいよ」


「えっ?」


 あれ?驚かれたっぽい。

 やっぱ、敬語使っ方が良かったか?



「で…では、失礼…しま…す」


 何故か怯えながら入ってきたのはショートボブがよく似合う黒髪黒目のメイドだった。10代後半ぐらいだろうか。

 すごく若い。しかも美人だ。


「どう…されました?…アッシュ様」


 アッシュ?

 誰だそいつ。俺の名前はそんな外国人みたいな名前じゃない。


 っていうか、お皿を下げる用があって、君が来たんじゃないのか?



「あのー。俺の名前は────ッ」


 ウッ……何だ。

 急に頭…に何かが入ってくるような…


 ─ッ 記憶だ。誰かの記憶が頭に流れてくる。


 …誰の記憶だ?…アッシュ…?


 混濁していく記憶を覗いてみると…


 衝撃!


 なんと、異世界で過ごしているアッシュ・ロズベルクという貴族の記憶だった。おそらく、そのせいでさっきまで、豪華だとしか感想が湧かなかったこの部屋が、親しみのある落ち着く空間に変わってしまっていた。


 手を見る、そして胴体、次に足。


 ちっちゃ過ぎる!

 僕の体は高校生でもっと大きいはず。

 ということはつまり


 ──────子供になってる──────


 6歳 しかも、異世界貴族の。


 転生したのか?異世界に。何故だ?…さっきまで自分の部屋でくつろいでいたはず…危険な状況ではなかったはず。


 いや、考えても仕方がない。考えて戻るわけでもないだろうし。


 よし!現実を受け入れよう。貧民とか難民なら嫌だったけど、記憶を覗いてみるとかなりいい生活をしていた貴族みたいだった。


 よーし。切り替えていこー。


「何でもない。何でもない。お皿、取りに来たんだよね?」


「…はい」


 何か反応がおかしいな。さっきから。ちょっと記憶を除いてみるか。


 ほうほう。


 記憶を除いてみて分かったことだが、このアッシュという子供はとんでもなく口が悪かった。ひどい時は癇癪をを起こして、炎上したインフルエンサーを叩くアンチの如く悪口雑言が止まらない。なのに、貴族で権力だけはあるからたちが悪い。だから、アッシュについていたメイド達はどんどん離れていき、今のアッシュ専属メイドは1人しかいなくなっていた。


 その1人というのが、今、テーブルの上を片付けてくれているメイド。リースだ。

 彼女のメイド歴は半年。

 アッシュに仕えたメイドの中では1番期間が長いこともあって口調が変わったことに違和感を感じているのかもしれない。


 おや?


 リースいつの間にかテーブルの片付けが終わり、こちらを見ている。


「何かありましたら遠慮なくこちらのベルをお鳴らしください。」


 やはり、以前と違う態度をとったことで何かあったのかと勘ぐられいるみたいだ。


 どうやって言い訳しようか…馬鹿正直に転生したからっていうのは絶対信じてもらえないだろうし。何かアッシュが優しくなってもおかしくない理由は…あった!


 アッシュの母親、ステラだ。アッシュの記憶の中の母親はずっと寝込んでいた。病気なのだそうだ。そのため、あまり母親と話した記憶がない。しかし、アッシュの最近の記憶の中では、父親から母親の体調がだんだん良くなってきて、病気も治ってきてるとアッシュに言っている記憶がある。そして、アッシュの昨日の記憶にもうすぐ母親が退院する言っているものがある。


 よし。この記憶を使おう。


「すまない。もうすぐ母様の退院だということで、少し浮かれていたようだ。……やっと母様と……ウぅッ…雑談したり………ゥッ…一緒に食事を……摂ったり……することが…出来る…ウぅッ」


 どーだ。この俺の演技力は。


 今まで母と話したり、食事したことがないとういうこと遠回しに伝え、母親の愛情を知らずに生きてきましたかわいそうな子供と思わせる。そしたらやっと母が退院だからという理由で少しテンションが上がったということにしておけばさっきの口調にも納得できるだろう。


 リースは信じられないことを聞いたというような表情でこちらを見ていた。


「ま…まさか…アッシュ様がそこまでステラ様の退院を待ち望んでおられたなんて…。ハッ。もしや、ステラ様の退院の知らせで優しくなったということは…今までステラ様のお体の調子のことが気になって、気がきじゃなく、心に余裕がなかったからあんな厳しい言葉を。」


 いや、いやアッシュが厳しい言葉を使ってたのはただただ傲慢な性格だったからだと思いますよ。


 まあ、訂正する理由ないし、これからは砕けた口調で話せるからいいか。


 なので「うん。まあね」とだけ答えておいた。

















































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