第24話 魂連結陣式・セラフィックツイン──魔法少女ユニット、降臨す

東京ドーム。満席。観衆5万人。

空調の音すら掻き消されるほどの熱気の中、魔法少女学園のバディペアは滑走していた。


「美月ちゃん……さっきから《魂連結陣式・セラフィックツイン》の接続、うまく起動できてないんだけど……!」


「私も感覚が乱れてるの。たぶん、ヒロの“推し吸引領域”が広すぎて意識リンクが干渉されてる」


「えっ、それってつまり……私たちの感情、ステージの推しエネルギーに割り込まれてるってこと!?尊死!尊侵略!」


空間歪曲すれすれで走る二人の姿は、魔法少女というよりも舞台袖の感情干渉研究者だった。


茅場ヒロ、ステージ中央。悩殺ウインク。

歌唱魔導、発動中。


「……5万人の信仰、俺にください。俺の歌、君の魂に届くように」


その瞬間――空間が弾けた。


光のパルス、感情の律動、魔導陣式が無理やり接続を要求してきた。


「美月ちゃん……!強制接続試していい!?もう時間ない!!」


「やるしかない。詠唱合わせるわよ!」


二人は手を取り、走りながら詠唱を開始した。


「──魂干渉、意識接続、双影起動……我ら、異次元にてひとつ」


《魂連結陣式・セラフィックツイン》、強制発動。


光が反転し、風が巻き、空中に二人の融合変身体が展開された。

紅黒のレース、補佐紋章、瞳の紋様は相互干渉の証。

その姿は、茅場ヒロのステージ照明にすら割り込むほどだった。


「……来たか」


茅場ヒロはほんのわずかだけ、歌のテンポを落とした。

目の前に降り立った二人の魔法少女。汗だく、息切れ、完全同期。


「東京ドームが、融合変身体の発表会場ってどういうことなの……!?」

凪は膝に手をついて叫ぶ。


「だから言ったでしょ。推し信仰の暴走には、舞台上突撃が一番なのよ」

美月は髪を束ね直しながら、すっと立ち上がる。


観客5万人の視線が集まった。推しvs魔法少女。歌vs魂連結。


その瞬間、茅場ヒロは言った。


「君たちの干渉が、俺の歌を補佐してくれるなら──俺、最強になるかもね?」


「そんな軽口言うなら……補佐してあげてもいいわよ。こっちは“最弱の敵に尊死されるペア”だから」


「えっ!?美月ちゃん、その自己紹介ギャグは公式にされるからやめて!!」


東京ドーム、振動開始。


《魂連結陣式・セラフィックツイン》、完了。


そして世界は、推しの輝きと補佐の祈りで、眩しさを更新した──。

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