第10話 変身融合――魔導陣の契約は二つの魂を一つにする

魔法少女学園、南区戦術演習場。

校舎を離れたその地は、《M.S.S.》との実地試験のために急造された、魔導結界に覆われた戦場だった。


「補佐科、小鳥凪。これより展開する」


凪の声は静かだった。しかし指先に走る魔力は鮮烈だった。

彼女は地面に片膝をつき、魔導陣を描き始める。

指輪型補助装置リングリンクが光を放ち、地面に円形の複雑な模様が現れる。


補佐科生徒が魔導陣を描き、魔法少女の核となる魂とリンクする――それが補佐変身システム、《インターリンク変身術》。


魔法少女科の首席・美月真白は、一歩踏み出し、円の中心に立った。


「……凪。合図を」


「了解。魂リンク、開始――!」


陣が光った。瞬間、凪と真白の意識が交差する。


思考が混ざる。

記憶が混ざる。

感情が――震える。


「うわっ……!?なにこれ、あっ、真白ちゃんのツンの波動が……!?」


「ちょっと待って!凪のオタク思念が濃すぎ!推し熱量で脳が焼けるぅ!!」


笑えるほど混線する精神空間。しかし、その先に訪れるのは――完全な融合。


補佐と魔法少女、それぞれが半人前。

だからこそ生まれる、“二人でひとつ”の魔法少女。


真白の剣技、凪の分析力。

真白の魔力、凪の補佐陣展開速度。

そして二人の“推しへの想い”が統合された瞬間――


白桃色の光が爆発した。


「《融合変身・モード:セラフィックツイン》――完了」


そこに立っていたのは、ひとりの魔法少女。

真白の瞳。凪の声色。ツインテールは輝き、制服は補佐科と魔法少女科が融合した異色の装束。

まるで舞台の中心に立つ語り部と剣士が同居したような存在。


COLOR†CLIMAXの踊翼が言葉を失った。


「……これが、補佐科との融合変身……“感情ドライヴ式魔法リンク”の、完全版か」


凪の心の中で、真白の声が響いた。


「凪。あなたの視点で見る世界、なんだか面白いね。推しの視線って、こんなに暖かいんだ」


真白の心の中で、凪の声がささやいた。


「真白ちゃんの戦う理由……少しずつ、分かってきた気がする。これからも、照らすよ」


そう、彼女たちはまだ半人前だった。

でも、二人でひとり――それは、一人前以上の存在なのだ。


まるで──“フュージョン”。

だけど、誰も真似できない。“魂のリンク”から生まれた唯一のヒロイン。

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