ニート、《アカシック・オフライン》を当てる

昨日の《覗き穴》事件は、割と本気でヤバかった。


なんか赤い目に覗き返されたし、明らかに向こうのやつ“いた”し、

姉はそのことを一切信じてくれなかったし(というか無反応)、もうメンタル的に限界。


……なのに、今朝も普通にガチャ画面は出てきた。


《デイリーガチャ・無料!》


「いやいやいや、怖いってマジで……。今日こそなんか出るだろ、殺意……」


文句を言いつつ、俺はガチャを回す。


ピロリロリーン♪


──すると、空中にぽんっと何かが落ちてきた。


「……パッケージ?」


そこにあったのは、ゲームソフトのような見た目の箱。

手に取ると、パッケージには煌びやかなタイトルが踊っていた。


《アカシック・オフライン》


「おぉ……中二っぽい……!」


興奮して裏面を読む。


『“アカシック・オンライン”の世界を一人で楽しめる待望のスピンオフ!』

『無限のスキル! 無限の冒険!』

『現実と見分けのつかない没入体験を、あなたに――』


「……やっべえ、めっちゃ面白そう……!!」


あのアカシック・オンライン? 伝説のMMORPG? サ終してもうプレイできないはずの?

そのオフライン版とか……神じゃん……!


俺の脳内ではもう、最強スキルを手に入れてラスボスをソロ撃破してる俺がいた。


「よっしゃあ、今すぐプレイだ――!」


――と、思ったそのとき。


パッケージの隅に、小さく注意書きがあった。


※本製品は「フルダイブ型VR機器(A.D.V.E.R.)」が必要です。

現在の地球文明では未対応のためご利用いただけません。


「……………………は?」


パッケージを二度見した。

なんか聞いたことない単語と、意味不明な一文。


「今の地球文明……未対応……?」


夢から現実へ、脳内が急降下していく。


「……いや、意味わかんねぇ……!」


VR機器なんて、せいぜい頭に被るやつくらいしか知らん。

これはそれよりも、もっと、完全に“存在しない”系のやつだ。


……要するに、宝の持ち腐れ。プレイ不可能。


「くっそ……せっかく中二心くすぐるタイトルだったのに……」


布団に沈み込みながら、俺は天井を見上げた。

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