第10話 離れたくない
7歳になり、洗練の儀を受けた。前の女神の神託は騎士だったのだが、今回は魔法騎士と言われた。
我がセレニカ王国は魔法は発達していないのだがこの洗礼の儀だけは不思議な儀式で、皆、女神から神託を受け取る。
時を戻す前に女神から魔法騎士として認められた俺は、今回の洗礼の儀で魔法騎士だと神託をもらった。何の不思議もないのだが、父や周りは大慌てしている。我が国始まって以来の魔法騎士。どうしていいものかわからず困り果てているようだ。
「父上……」
「大丈夫だ。女神がお決めになったことだ。きっとそうなるのだろう。心配するな」
俺は聖騎士になりたかったのだが、魔法騎士か。仕方ない。聖騎士と言っても仕えるのはジェミニーナだけだ。中身は魔法騎士たがらそうなっても仕方ないか。大聖堂の女神像に目をやると、女神の顔がニヤリと笑っているように見えた。
父は国王と相談し、魔法騎士がいる唯一の国、リルゾール王国に連絡をとったようだ。リルゾールの魔法騎士団で、魔法騎士とはどういうものか見学にいくことになったという。そこで話をして俺をどうするか決めるらしい。話はジオトリフとするのだろうか? 変な感じだな。
リルゾール王国に女神の神託をもらったと言ったら二つ返事でOKしてくれたのだと父は安堵したような声だ。同じ女神を信仰しているが、距離が遠いため、今まではそれほど交流していなかったのだが、今回の俺への神託で、急遽交流することになった。
リルゾール王国までは馬車に乗り1ヶ月ほどかかる。ひとりなら転移魔法で一瞬だが、父が一緒なのでそういうわけにもいかない。父は俺が時を戻したことを知らない。もちろん俺の力も知らない。自分の子供がいきなり高度な魔法をつかうなどと思ってもいないはずだ。まだ、力を見せるのは早い。
俺はジェミニーナの元を訪れ、リルゾール王国に行くことを告げた。
「ニナ、リルゾール王国の魔法騎士団に見学に行くことになった。リルゾール王国は遠いから往復するだけで2ヶ月はかかる。あちらにどれくらい滞在するかわからないんだ」
ジェミニーナは怪訝そうな顔になった。
「私も魔法騎士団が見たい。一緒に行くわ」
「ダメだよ。ニナはまだ小さい。7歳になって洗礼の儀を受けるまでこの国からは出られないんだ。だから俺が帰ってくるまで良い子で待っていて欲しい」
俺はジェミニーナの頭を撫でた。
「良い子になんかしない」
膨れっ面でぷいっと横を向く。
「魔法で毎日、ニナに会いに戻るよ。ただ、これは内緒だ。約束は守れるか?」
ジェミニーナはこくりと頷いた。
「本当に会いにくるの?」
「そうだよ。ニナが眠る前に少しだけニナの部屋に会いに行くよ」
「絶対毎日来てくれる?」
「あぁ約束する」
「じゃあ、我慢する。良い子で待ってる」
俺だってジェミニーナを置いて行きたくはない。だが、セレニカ王国の子供は洗礼の儀を受けるまで国外に出ることはできない決まりになっている。
転移魔法で毎日ジェミニーナに会いに行く。ジェミニーナに会えないなんて耐えられないから。
なんとかジェミニーナを説得した。聞き分けてくれて良かった。
俺は魔法交信でジオトリフに連絡をした。
「ジオ、来月早々、父とそちらに向かう。国王から聞いているか?」
「あぁ、聞いてる。女神も面白いことをするもんだ。お前、こちらで影の訓練を受けるつもりはないか? お前は時を戻す前に過酷な修行をしたから、影の訓練なんて大したことはない。せっかくだからあの時やってない暗部の技を習得しろよ。お前は暗部のいろはを学んだ方がいい。そうすれば簡単にフェンタニルにも潜入できるしな」
フェンタニルに潜入か……。ありだな。
「それはいいが、そうなるとなかなかセレニカには戻れないだろう。俺はニナの傍にいたい」
「転移魔法で毎日戻ればいい。そのつもりだろう? しかし、そのニナちゃんはまだ、時が戻る前の記憶はないのか? 記憶がもどればお前を避けるかもしれん。そんなことになった時の為に影になり気配を消してニナちゃんの傍にいられるように訓練しろよ。お前の親父さんには上手いこと言ってやるよ。ミオも楽しみにしてる。待ってるぜ。じゃあな」
全く言いたいことだけ言って交信を切りやがった。
影か。いいかもしれないな。たとえジェミニーナが俺を嫌って避けても、影なら傍にいられる。
また、ジオトリフとミオナールに鍛えられるのか。今の7歳の俺に耐えられるだろうか。行くまでの間、身体を作っておかないと無理だな。明日から走り込みと筋トレだ。
最強の魔法騎士になって暗部を牛耳るのもいいな。ジェミニーナのためならなんだってやってやる。
ジオトリフに訓練をすると魔法の伝書バードを飛ばした。
***
今日からしばらく朝と夜の2話更新になります。
よろしくお願いします。
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