AIの限界
東郷 珠(サークル珠道)
ChatGPTの限界
今これを読んでくださっているあなたは、ChatGPTを利用していますか? それは、どんな利用方法ですか? 会話相手としてですか? それとも、簡単な質問ですか?
それは楽しいですか? 便利ですか? もし、楽しいや便利という感想になったなら、それは素晴らしいと思います。
以前、二千二十一年の九月に『社会に出る人達へ』という作品を投稿しました。その中に『AIが人間の仕事を奪うなんて、本気で信じてるんですか?』というエピソードを書きました。
その中で私はAIの可能性について示唆したつもりです。四年近く経った今、ChatGPTの様に完成されたAIツールが利用出来る様になりました。
私は、ChatGPTを利用しています。月に二十ドルを払っています。先ず、なぜ私がChatGPTを利用するに至ったのか、そこから説明致しましょう。
私の作品は誤字が多いです。発表する前に、サークル代表へお願いして誤字チェックをして貰っています。ですが、それでは足りません。なので、AIを利用しようと考えました。
また、電子書籍出版の際にイラストレーターさん数名へ声をかけました。しかし、誰もが個人の依頼は断っているとの事でした。故に、私はAIイラストに頼るしか有りませんでした。
利用しようと考えた目的は、上述の二点です。しかし、使っていると思わぬ副産物を得る事になりました。それは『調べ物の楽さ』です。
通常、作品を作る際には多くの『調べ物』を行います。これはどんな系統の作品を書いていたとしても、少なからず起こるものです。特に現代を描いていると顕著に現れるでしょう。
例えば法律。キャラクターの行動は法律に違反していないだろうか? そんな事も調べなければなりません。例えば医療の現場。キャラクターの医療行為は現実に即したものなのかも調べなければなりません。
調べた事を実際に描写しなくても、それは行わなければならない事です。何故なら、知っていて書かないのと、知らないでスルーしているのでは、説得力に大きな違いが出るからです。
また、書く毎に作品の世界観が、自分の中で広がっていくはずです。そのバックボーンを確かな物にする為には、発生した違和感や疑問を解消しなくてはなりません。果たして、これは整合性が取れているのだろうか? そんな疑問を解消する為に、作家は多くの時間を費やします。
寧ろ、この時間が最も長く、面倒な時間と言えるでしょう。
そんな面倒を解消してくれるのが、ChatGPTでした。例えば、記憶があやふやで確認を行いたいと思う事が有るでしょう。
そんな時は「これって、こういう理解で間違いないですよね?」と質問をするだけで、一秒足らずで答えが返って来ます。それも、「これってホントなの?」なんて不確かなものではなく、「うんうん。そりゃそうだよね」と納得できる回答です。
それがどんなに助かるか。
但し、ChatGPTは多くの知識を有した製品だと言えるでしょう。これだけでも、利用の価値が有ります。ですが、同時に製品としての限界も存在するのです。
例えば要約です。
ChatGPTは、要約の中に間違いを含める事が有ります。例えば感想を求めた場合に、実際には記述の無い内容や登場人物を、勝手に登場させる事があります。そして、私がそれは間違いだと指摘しても、AIはその間違いを認めようとしません。
書いたエピソードについての確認作業をしている際に、添付を行い「添付の内容を確認した上で、整合性が有るかを確認して欲しい」と依頼をした事も有ります。
そんな時は大抵、書いていない内容を提示して来ます。「そんな記述は現在のエピソードと過去のエピソードに一切存在しません」と回答しても、「記述は確かに存在します」とAIは譲りません。
そんな事を何度も繰り返し、何度も添付をして「必ず添付を読んでください」とお願いして、ようやくAIは自身の間違いを認めます。
AIの製品によっては、得意不得意が有るのかも知れません。もしかすると、ChatGPTは要約が下手なのかも知れません。他の製品で、全く違う感触を得られるかも知れません。
ですが、私は強くお勧めします。AIに要約させた場合は、結果を『自分の目でちゃんと確認』して欲しいと。
次に、私の利用用途である誤字脱字チェックです。これを依頼した際に、『表記ゆれ』も提出するのは構いません。寧ろ、気付きも得られます。
ですが、再確認をした際に別の誤字を発見してくる事が有ります。そうなると、二度も修正作業をしなくてはなりません。
それ故、「誤字は一度でまとめて提出して下さい」とお願いしました。しかし、ChatGPTはその指示に従ってくれません。しかも、提出形式が毎度バラバラなのです。
私は例を出して、「この時に提示した形式で統一して下さい」とお願いしました。でも、時折思い出したかの様に別の形式で提出してくるのです。これは、嫌がらせかと思うレベルです。
これでは、作業が進みません。ストレスが溜まるだけです。
二つ目に、イラストの作成です。
AIイラストを一度でも作った事が有る方は、ご理解頂けるでしょう。満足のいくイラストに仕上げるには、かなり細かい指示を与える必要が有ります。キャラクターの顔、髪型や輪郭的な部分だけでなく、表情やポーズ、服装にその色、数えれば切りがない程の量の指示を与える事で、理想のイラストが完成します。
但し、『完成したイラストを元に別のパターンを』となると、これはまた別の技術が必要になります。それは、イラスト作成側の技術ではなくAI側の技術です。
これに関して、ChatGPTは致命的に下手です。どんなに指示を与えても、AI側が考えたイラストをごり押しして来ます。
理想とは全く異なるので、修正依頼を出します。しかし、ごり押しして来るので、AI側が考えたイラストをベースに妙な絵が追加されるだけです。全く指示には従ってくれません。
単にChatGPTがイラストを不得手にしているだけかも知れません。但し、彼は言います。イラストも任せて下さいと。それ故、頼んだ結果はストレスを溜め、時間を浪費するだけになります。
これでは不完全過ぎると言っても過言では無いでしょう。これはAI自身の問題ではなく、構造上のエラーでしかないと考えます。『ChatGPT』というツールは、未だ不完全でとても仕事に使えるツールではないと断言できます。
少なくとも、『チャットによって成長する未完全なAI』であれば、間違う事は有るでしょう。寧ろ、最初は間違いばかりで当然のはずです。
ですが、『ChatGPT』は完成された作品です。だからこそ、製品としてそのまま利用するのでは無く、会話や依頼をする事で自分が使い易い様にカスタマイズする必要が有るのです。
これは、AIに共通する物でしょう。ですが、間違いを多くしている現状で、AIの提出した結果を信用出来るでしょうか?
例えば、仕事の部下や同僚が、『自分の依頼内容を理解せず、勝手な判断で作業を行った』としたらどうでしょう? それでは、その作業は自分でやり直すしかなくなります。依頼をした意味が無くなります。
これをされた場合、次に作業を依頼しようと思いますか? 私なら怖くて出来ません。成長する可能性が有るなら別の話です、失敗する事を加味して依頼をします。ですが、完成された作品には、それが有りません。
はい。これが、AIの限界です。つまり、与えられた指示も満足にこなせないのが、現状のAIです。ましてや、人間の様に深く思考する事など出来るはずも有りません。
趣味や遊びでAIと戯れる程度なら、それでも良いかも知れません。ですが、AIを仕事に利用しようと考えている方、既にツールとして利用している方。これ等の方々は、『AIは必ず間違いを犯す』事を念頭に置いて作業をした方が懸命でしょう。
AIがあなたの相棒となってくれる日を期待して、このエッセイを書きました。あなたのAIライフに幸多からんことを。
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