自信の無い男の子
「ダンジョンに嫌われてますの……いや、そんなはずないですの。こんなに愛してるから大丈夫ですの」
セシーリアがダンジョンに恋焦がれているよ。気持ちはわからないでもないが、毎日同じことやって飽きないのかな……俺はゲームの時飽きたよ
ただ、ゲームの時はオート機能がついてたから攻略した階層まではオートで周回できるからよく使われてったけ……
そんな暗い雰囲気を漂わせているセシーリアに声をかけて面接に行かせる
「いらっしゃいませ 今日も買取ですか?」
「いや、今日は別の用事がありまして……」
そう今日の俺は、またも生産棟に来ている。オルクス教官に紹介していただいた人を一目見に来たのだ。
どんな人なのか正直興味はあるからな……
少し待つと、メルさんが小柄な髭の濃い男の子を連れてくる。ショタっぽいのに髭はダメだろ……
「はじめまして。【ソイルガーデン】のキセロです。よろしくお願いします」
「ビーラント。よろしく。」
すんごい緊張している。手を差し出して握手してみるが、ナチュラルに手が震えている。
こんなに緊張している人が目の前にいるとこちらも緊張しなくなるのは、どんな世界でも共通だろう
しかし、詳しくはオルクス教官に聞いてなかったけど、彼ならどこだって大事に育ててもらえるだろう。
「彼は見ての通り、鍛冶などの金属系の生産に特化したドワーフなの。けどね……ここから先は自身の口から説明してもらった方が良いわね」
「ありがとうございます。メルさん。ではお借りしますね」
ビーラント君も何か話づらい感じがしたので、例の個室のある喫茶店へと向かうことにした。
しかし、毎度割引券を出してくれるメルさんには感謝しかない……
今度、恩返ししよう。何がいいかな……エイルにでも相談してみようか。セシーリアに相談?絶対秘密に決まってるだろ。両手メイスの餌食になるのは嫌だ
「オルクス教官に紹介されて、君に会おうと思ってきたんだ。これからよろしくね」
「オルクスさん……。いいのか?おれ、【シード】」
今まで出てこなかった関係で紹介していなかったが、実はこの世界には人間(ヒューマン)以外にも異世界ならではの種族が存在する
エルフにドワーフ、妖精、獣人がそれに該当し、それぞれ固有の職業がある。例えばドワーフの場合だと、【土精生産士】とか【土精採掘士】などだ
よって【シード】が嫌われているこの世界では絶対にならない。俺たちの周りに人間以外がいないのはそれが理由だ。
「なるほどな……俺も【シード】だし、一緒だから何も問題ないよ」
「【シード】使えない。親父言った。」
「おいおい。それじゃあ、俺も使えないって言われているみたいじゃないか。やめてくれよ」
今、【シード】の本当の価値を知っているのは俺しかいない。
だから、周りの評価に左右されて、自分を卑下してしまうのもよくわかる
けど、人の本当の価値はそうじゃない。
「俺。まだレベル1。なにしてもダメ。自由週間終わり。レベル1。俺だけ。頑張った」
「なるほどな。それは確かに自信も無くなるわな……」
「もう、ダメ」
実際、俺たちのレベルが上がる速度を遅いなって思う人もいるだろうが、仕方のない話なのだ。シードは一番弱い職業のはずなのに、必要経験値はかなり多い。
スキルを最初から覚えられない為、スキルを使わない様々なことで、経験値を得ることが出来るが、スキルを使った方が経験値を得やすい
今は回復薬を作っているエイルも最初ダンジョンに潜ってもらったのも、最初に効率よくレベルを上げて、スキルを覚えてレベルを上げやすくするためだ
「そんなに落ち込むなよ。元気出せって」
「親父昔から言ってた。俺、ダメな子」
昔から、ダメな子と言われて実際に出来なくなってパターンかもしれない
俺の痛い前世の記憶が……く、苦しい。それよりもだ。こういうことを言われ続けてきた人は自信をつけてやればいい
時間はかかるが、褒めて褒めて褒めまくる。出来なかったことより、出来たことにフォーカスを当ててやればいい
「ビーラント。君はその出来ない子のままでいいのか?」
「よくわからない。でも、今も嫌」
「じゃあ、変わるしかない。俺と一緒に親父さんを見返さないか?」
実を言うと、先ほど話した、ドワーフやエルフなどは絶対一種族につき一人は加入させたい
やはり、種族専用の職業は特化したものが多いからだ。その代わり、デメリットもかなり多いけど……
しかし、長所が分かっているというのは使う所が理解しやすいということでもある
「見返したい。俺、鍛治極めたい。でも」
「でもじゃないぞ。やるなら俺は手伝う。どうだ?」
「君。初対面。なんで俺?」
自信がないうちに、いきなりこんなことを言われても怪しいのは正直、理解出来る俺だってそうだ
けど、この世界にたった1人だけのドワーフで【シード】なのだ。
薬の高品質で皆が驚いたように、武器なども高品質で揃えたいのである
「俺は【シード】がバカにされるこの世界が好きじゃない。だから評価を覆す為に手を貸して欲しい。俺1人じゃマグレって言われちゃうからな」
「俺出来る?」
「出来る。俺が世界で一番にする。一緒にならないか?」
俺は強く言い切る。ここで弱気になるとビーラントも不安になる。それで断られたら俺にとってはかなり損だ。
世界に1人のドワーフ【シード】だぞ。次の機会なんて早くて来年だ。そんなもん待ってられるか
ビーラントは黙って考えているようだ。時間が経つにつれ少しずつ緊張してきた。彼が決心したように頷く……
「俺。やる。鍛冶師。世界一」
「一緒に頑張ろう」
聞こえた決意の言葉に安心し、手を差し伸べる。
交わした握手に力強さと痛みを感じる。セシーリアとはまた違った痛みだ……皆内緒だぞ
また1つ重たいものを背負ってしまったなと感じた。この責任に答えるのも心地良いものだなと思うよ
「じゃあ、早速だがうちのチームメンバーを紹介するよ。今から時間はある?」
「大丈夫」
チームの加入手続きやチームハウスの認証などを行い、ビーラント君を連れてチームハウスに入る
部屋から何か異様な雰囲気がしている……ビーラント君を入口で待たせて、1人で恐る恐る入ってみる。
「おかえりなさいですの。遅かったですの。今日はどうしたんですの?」
まるで新婚さんのような甘い声を出しながら笑顔でセシーリアが駆け寄ってくるが、その背中に隠そうとして隠れてない両手メイスはどうしたのかな?
この状況を打開しようとリンドウを見る……リンドウは俺が悪いと言わんばかりに顔をそらす。
仕方ないならカリーを……ボキボキ! 拳を鳴らして威嚇するのはやめて欲しいのですが……
「あ、あのですね……オルクス教官の紹介で……面接しておりまして……」
3人がビックリした顔をする。俺なんか信用されてない……?
「新しい人はどこにいますの?紹介してほしいですの」
「いや、その前にどんな人なのか教えてくれ。もう来ているのか?」
「もう来ているから紹介するな」
セシーリアとリンドウが前のめりに出てきたが、それを無視してビーラント君を連れてくる
ビーラント君は声が聞こえていたのか、少しおびえているような気がするが今は無視して3人の前に差し出す
「鍛冶師希望のビーラント君だ。最初は俺たちと一緒にダンジョンへ行くからよろしくな」
「俺。ビーラント。よろしく。頑張る」
「ビーラント君か。ちょっとこっちに来てくれ」
リンドウがビーラント君を呼んで内緒話を始める
またも独りにされる……男子を入れたら独りにならないと思ったのに何故!?
ただ独り待たされること10分……
「事情は把握したよ。ありがとう。さてキセロには首輪をつける必要がありそうだな」
「鎖を買ってきてきますの!私が管理しますの」
「それわぁうちにぃ任してぇ」
色々とヤバそうな雰囲気がするぞ……
これはダンジョンに行って雰囲気を変えよう
そうじゃないと……
「よし、親睦を深めるためにも、皆でダンジョンに行くぞ!」
「ダンジョンですの!」
「うれしいわぁ」
そうして、全員でダンジョンへ移動する。皆で装備を用意している間ビーラント君は何をしたらいいのか戸惑っていたが待機してもらっておいた
まずは何も出来ないからな。ダンジョンを体験するのも最初だけだし、サブメンバー扱いだから装備も適当でいい
ということでとっととレベルを上げて鍛冶を頑張ってもらおう。
Let's go ダンジョン!
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