パーティが組めるって最高!

翌日の初心者ダンジョン3階層――


「さて、1・2階層に関してはスライムとこうもりもどきだから正直訓練にもならなかったけど、3階層からはさんぽキノコだから連携を磨くことが出来るぞ」


「それにしても、やはりカリーは強かったな。想像以上だったよ」


「私もびっくりしましたの!」


そうリンドウとセシーリアが褒めるとカリーは照れくさそうに笑っていたよ。

まだスキル振りはしていなかったのでそのまま保留にしていたにも関わらず、1・2階層は一人で簡単に片づけちゃったし……

正直こんなメンバーが増えてくれてうれしい


「さんぽキノコの時は連携していこう。俺は盾役になるから全員で攻撃を仕掛けて欲しい。」


「うちは右から攻撃するんがぁやりやすいわぁ」


「では私は左からいってみよう。練習にもなる」


そう打ち合わせをし、さんぽキノコとエンカウントするために進んだ。

先頭を歩くと、後ろから足音と鎧の音が同じ音量で聞こえてくるので着いてきているのはわかっている

1人で進みすぎないように、後ろと前に注意を向けるのは余計集中しないといけないからちょっと疲れるな……


「もうすぐエンカウントするぞ!」


そういうと、後ろから準備をし直しているような音が聞こえてくる。エンカウントのポイントを知っているから出来るセコイ技だな……

いつ出てきてもいいように前方に集中し直すと、後ろからも緊張が伝わってくる。

もう少し前に進むと、前方から”ガサガサッ”と道ハズレの低木から音がする。エンカウントだ


『挑発!』


緊張している他のメンバーが攻撃をしてしまう前にこちらへ注意を向けさせる

その瞬間に左右から勢いよくリンドウとカリーが飛び出すと……


ゴチン!


槍と拳がぶつかり、両者の攻撃がずれてしまう。

しかも、攻撃を外してしまい、両者とも体制を少し崩してしまう。

カリーは拳に槍が当たり大ダメージを負ってしまった。


「2人とも真っ正面から攻撃しようとするな、もっと側面から行け」


「すまない。気を付ける」


「ごめんねぇ。気を付けるわぁ」


2人はすぐに体制を立て直すが、さんぽキノコは待ってくれない

既に体制を低くして突撃してくる準備が出来ている。

標的は……俺のままだ。カリーだったらヤバかったぜ……


「俺が受け止めたら、攻撃!セシーリアはカリーにヒール」


「”ヒール”ですの?もう攻撃準備出来てますの!」


セシーリア?君は回復役なんだよ?イレギュラーだから仕方ないとは思うが……

突撃してきたさんぽキノコを盾で全員が攻撃しやすい位置に受け流す

敵が立ち上がろうとするが、3方向から一斉に攻撃が押し寄せ、さんぽキノコは光へ帰った


「はい集合」


落ち着く間もなく、全員を集める。

正直上手く行ったから良かったものの、内容は非常に良くない……

集まってきた3人もそれを理解しているのか、少し複雑そうな顔をしていた


「悔しいとは思うが、反省会するぞ。まず……」


「少し待ってくれ。こっちで話し合いしてからで良いだろうか?」


リンドウが率先して3人で話し合いを始める……

俺がのけ者にされるのがちょいちょいあるのは男子メンバーがいないからだろうか?

妙に置いてきぼり感がして寂しい……男子メンバーも頑張ってスカウトしよう


「話終わりましたの……」


「よし聞かせてもらおう」


3人の話を要約すると、チームでの戦闘に慣れていなさすぎてセオリーに体が追い付いていないこと

そして、俺の動きが普通の盾役と違い、動揺してしまったとのことだ


「俺の動きが違うっていうのはこの世界の常識じゃないってことか?」


「そうだ。盾役の役割は聞いたことがあるが、敵の動きは確定しているわけでは無いし、攻撃対象はバラバラだ。だから前線のメンバーは全員が攻撃を受け、後衛のメンバーに攻撃が行かないようにするので精一杯だ。なぜか後衛の特に回復役は多く狙われるからな。」


「なるほどな……。普通はどうやって攻略するんだ?」


ここでも俺の知らない常識が出てきそうだ。ゲーム内の常識を知れるいい機会だ

おとぎ話についても知らないからな……いずれ聞こう……


「普通は前衛の職業の人が攻撃を受けながら、後衛の掛け声で射線を開ける。真正面は一番攻撃が酷いから、盾使いがいて攻撃をメインで捌く。決まっていることはこれくらいと聞く」


「うちもぉそんな感じよぉ」


それだと、相手の攻撃に振り回されているだけだな。肉を切らせて骨を断つみたいな雰囲気がする

かなり昔のゲームでさえ、並び替えで先頭のキャラクターが攻撃を受けるようにする。くらいの戦術は出来るのに……

現在やっているのは攻撃と防御を別々に考えた連動性のない動きだ。何かあった時には取り返しがつかないことになってしまう。


「さすがに今日の動きは攻撃一辺倒過ぎないか?」


「それは否定できない。しかし、相手を早めに倒さないと多大なダメージを受けてしまわないか?物理防御は初期値だし」


「うちはまだぁ攻撃を避けられるからぁいいのぉ。けどぉ初期値のまんまぁはこわぃかもぉ。」


なるほどな……危なくなる前に相手を倒し切ってしまおうってことか。

それでは格下の相手には安全に勝つことが出来るが、同レベル帯になるにつれ危ない戦いが増えてしまうな……

セシーリアはこの戦いについてどう思ったのだろう……


「前衛組はとりあえず分かった。セシーリアは今の戦いにどう思った?」


「私は攻撃と回復の切り替えがよくわかりませんでしたの。 今までは回復する必要がなかったですの」


「回復に関しては上手くいきそうか?」


「教えて欲しいですの。そして、実践もしたいですの。」


これは、実践よりまず座学だな……

授業でもそんなに詳しく教えてないなーと思っていたものの、教えられないが正解だったか……

じゃあ俺が教えるしかないか!(使命感)


「よし3人ともに俺の考える理想の戦術についてレクチャーするぞ!」


そういうと、セシーリアとカリーの目はキラキラし始め、リンドウは小さなメモとペンを持っていた

セシーリアとカリーの頭からは今日聞いたこと消えないかな?大丈夫かな?

リンドウが理解したら2人にも伝えてくれるだろう。頼んだぞリンドウ


「まずは、役割についてだ。皆が認識している役割って何がある?」


「盾役と攻撃役と回復役の3つですの!」


「それ以外は無いか?」


セシーリアとカリーはしっかりと頷いたが、リンドウは少し考えて……


「斥候役なんかはどうなんだろうか?」


「それもあるな。けど今回はそれくらいでいいだろう。まず……」


それから各種役割を説明していった。特に盾役の役割を伝えると驚愕していたよ

正直、盾役って地味だし目立たないけど、重要度は1番なんだよな……

盾役の精度でパーティの動きは全く違うし、安全度も変わってくる


「なるほどな……そんなことが実際に出来るのだろうか?」


「そのために必要なスキルを取る必要があるんだよ。」


「わかった。カリー実はセシーリアと私はキセロから直接ステータスやスキルについてアドバイスを貰っている。」


「それはずるいわぁ。うちにもお・し・え・てぇ」


カリーさん甘えるのはいいんだが、その改造チャイナ服でくっついてこられると色々断りずらくなるんだ……狙ってる?

セシーリア?対抗心かな?くっつかなくてもいいんだよ?あっちょっと肘はそっちには曲がらないんだよ!

これが現代版天国と地獄か……。そんなことをやっている場合ではない。


「わかった。全員教えるから。いったん離れて」


そうして全員を教え終わり次のエンカウントポイントへ向かった。


「よし、もうちょっとでエンカウントするぞ」


3人とも先ほど教えた内容を振り返っている

後は俺が盾役を上手くできれば問題ない……

ガサガサとさんぽキノコが出てくるのを発見する


『挑発!』


さんぽキノコの注意をこちらに向けて、盾を構えて待つ……

敵はこちらに狙いを定め、右手を上に挙げる。攻撃開始のモーションだ


「今!」


俺に狙いが定まったのを確認し、左右からカリーとリンドウが飛び出す。

さんぽキノコは驚いたような顔をしたが、もうモーションを始めているので狙いを変えることは出来ない。

2人は先ほどの反省を生かし、左右から攻撃を始めた。

まだ互いの範囲がわかっていないのか少し遠慮が見えたが、まあ今のうちだけだろう


『受け流し!』


突撃してくる前に倒し切ることは出来なかったので、受け流しで全員が攻撃出来るように敵の位置を調整する

実際この調整はゲームだと跳ね返すか叩き落すのが多かったが、リアルだともう少しやりやすいし選択の幅も広い

何といっても、敵が突撃してきた瞬間には動き出してくれる仲間……最高かよ……


さあ、次も上手くいくといいな……

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