今後の方針と……

観戦後、テンションを抑えられず急かしてくるセシーリアと少しうずうずしているリンドウを引き連れてダンジョンに向かった

やはり凄い物をみた日はやる気が出るのはこの世界でも一緒のようだ

そんな俺もテンションストッパーがぶっ壊れそうだけど……


「もっと行くんですの!」


我先にとセシーリアが進んでいくのを何とか制止しつつ3階までを2往復してダンジョンを出た

テンションに任せてMPも気にせずブッパしたせいで、いつもより消耗品の消費が激しい


「まだ時間がありますの!もう一往復行きますの!」


行きたいよ。俺も行きたいけど、鋼の意思で制止する

この後にしなければならないことがあるのだ


「今日はもう帰るぞ!帰って話したいことがある!」


「話したいことですの? ダンジョンを行きながら話せばいいですの」


気持ちはわかる。こういう時はテンションが上がってしまうのだ

そのテンションのままダンジョンへ行きたい気持ちを抑えて、なんとか説得しないといけない

正直困ってしまう……


「セシーわがままいうのはよそう キセロが困ってる」


しっかりと顔に出てみたいだ リンドウがセシーリアを落ち着かせてくれた

そのままリンドウがセシーリアを引きずりながら寮に向かっていったのを確認し、俺は生産棟へ向かっていった

今後の為にやるべきことをやっておきたい


「いらっしゃいませ 本日もいつも通りですか?」


生産棟に入るなり、受付のメルさんが対応してくれる

時間によって受付の方は変わるのだが、いつもメルさんなので仲良くなりつつ?ある

よって今回はお願い事をしてみた


「ちょっとお願いしたいことがあって……」


「お願いしたいことですか?」


はじめてのお願い事に少し驚いた顔をしたが、すぐいつもの笑顔に戻っていた

プロって凄いよ(彼女は学生なので見習いです)


「実は……」


「出来ますよ! 明日の昼には……」


そのように話をし、生産棟を出た

後は二人にこの内容を話しないといけないが、まあ納得してくれるだろう

部屋に戻りゆっくりとシャワーを浴び、これから話す内容をまとめていると


「お待たせしましたの!」


いきなりドアが開き、セシーリアとリンドウが入ってきた


「入るときはノックぐらいしろ」


「善処いたしますの」


反省してる気配のないセシーリアにリンドウと俺は頭を抱えそうになるが、そんなことをしている暇はないので話を進めよう


「まあ、いいか…… ところで今日の試合どうだった?」


「最高でしたの カッコイイと思いましたの」


「私もそう思った 高度な戦いをしていると感じた。プロにも負けてなかったぞ」


プロを見たことが無いから完全に頷くことは出来ないが、今日の戦いは正直お金払ってもいい内容だった

不要なバトルもあったが、全く争わないよりも盛り上がるし楽しめる


「ただ私たちにあのような勝負を出来るようになるのだろうか?」


「私も不安ですの」


ポツリと言ったリンドウにセシーリアが同意する 興奮と不安が入り混じってるって感じか……

観戦してダンジョンに入っている時は興奮のみだったが、シャワーしたりすることで落ち着いたのだろう

今日の試合を今の自分たちで出来るのか?という不安だろう。大きな目標を掲げても何も出来ないから、小さく修正させたら現実味が出るだろう


「大丈夫だ あの試合のメンバーは皆3年生だから後2年もある」


「2年…… 長いようで短そうですの」


「俺らも同じような戦いが出来る準備をしないといけないな」


「どんな準備をするのだ?」


まずは小さな目標からだ それを1つ1つクリアしていけばいい

とにかく、まずは3人ではチームを作ることも出来ないから人を集めるところから始めよう


「まずは人を集めよう 本来のダンジョンに入れる上限の8人を目標にしようぜ!」


「頑張りますの」


「私もクラスメイトに声をかけてみる」


2人ともやる気を出してくれているみたいだ。この目標だったら達成出来そうだ

少しずつでも集まってくれることを願おう

そして、明日のことについても触れておく


「急だが明日は午前中に俺用事あるからダンジョン行けないからね」


「面白くない冗談ですの」


「ちょっと用事があるんだ……昼ご飯を食べたら集まるからそれまで自由時間にして欲しい」


セシーリアの顔が不機嫌になっている

けど、これからの活動に大事な事だから早いうちに進めておきたかったのだ

それを何とか伝えると、遅い時間になっていたので2人は各自の部屋に帰っていった……重要な事伝えきれてない!


次の日の午前中俺は生産棟に来ていた

追加のお願いと昨日のお願いの内容を確認しに来たのである

あのチームバトルの次の日だ 皆やる気になっているのか来ている人が多く熱量を感じた


「いらっしゃいませ 昨日の件ですか?」


「それもあるんですが、チームを作ろうと思いまして……」


「じゃあ、あれの作成ですね?」


「そうなんです。お願いできますか?」


「大丈夫ですよ。いくつか案出しておきますね。金額は完成時で大丈夫です」


「ありがとうございます!助かります。昨日の件については……」


「準備出来てますよ。いつでも大丈夫です」


メルさんが対応してくれたおかげで、かなりスムーズに話が伝わった

無事にお願いを終わらせて、チームを作る申請をするのに事務局へ向かった

事務局ではチームの作成・ランクアップバトルの申請・争奪戦の申請など、クラス・チーム両方の対戦に関するものを取り仕切っている

ゲームでは入った瞬間にメニュー画面が出てくるので、簡単だったのだがリアルだとメニュー画面なんて出てこないので、どこに行けばいいか迷っていると


「初めてのご利用ですか?」


そう声をかけてくれたのはスーツを着こなし、黒縁眼鏡をかけた黒髪の女性であった


「そうなんです チームを作ろうと思って来たのですが……」


「1人ではチームを作れません。最低人数の4人を揃えてください」


「名前だけでは申請できませんか?」


「生徒手帳が必要となりますので本人が来ていただく必要があります」


マジか…… それは知らなかったわ

全員集めて再度来ることを伝えて、リンドウとセシーリアに少し早いが寮の部屋に来てもらうように連絡した

すると、2人ともすぐ来てくれるとのことで急いで戻ったのだが


「俺、鍵締め忘れてた……っけ?」


部屋へ帰ると、俺のベットの上に座っているセシーリアがいた

リンドウは椅子に座ってゆっくりしている

だいぶ、待たせてしまったのだろうか?


「不用心ですの 待ちすぎて疲れましたの」


「セシーそんなに待ってないぞ。ところで急に呼び出しなんてどうしたんだ?」


「チームを作りに行こうとしたら全員で来いって言われたから早いが集合してもらった」


「ん?チームを作るのに必要な人数は4人じゃないのか?」


「もう集めてるから問題ないよ。じゃあ4人目を迎え行こうか」


何かを言いたげな2人を連れて生産棟へ向かった


「いらっしゃいませ お二人は初めましてですね」


「はじめましてですの」


「はじめまして よろしくたのむ」


「ではお願いされていた件について準備してまいりますので少々失礼します」


そう言ってメルさんは奥に行った

そして姿が見えなくなった瞬間、誰かに肩を掴まれた


「説明を求めますの」


セシーリアの顔が非常に怖い……昨日あなたが不機嫌になったせいとは決して言えず

そのまま何も言えずにいると、肩を掴んだ手に入れられた力が徐々に強くなっていく


「痛い!痛い!」


「説明しないのがいけないんですの!」


君、物理攻撃力は初期値だよね?強くない?

あざになってそうなんだが……


「とりあえず4人目がきたら、全部話するから落ち着いて」


「痴話げんかの最中にすみません」


メルさんにからかわれたので、声の方へ向くと灰色の髪の女の子が一緒に立っていた

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