恋愛偏差値0の俺んちに、異世界の恋マスター女が勝手に居着いて恋を指南してくる件

せろり

第1話「恋の召喚、は突然に」

「カナメー!お前、ほんっとにチャンス逃してばっかだな」


放課後の教室。親友のアツシに言われた言葉が、いつまでも耳に残ってる。


今日も話しかけられなかった。


前の席の星ヶ丘さんは、掃除当番だった俺の代わりに黒板を拭いてくれて、そのまま笑って帰っていった。


以前も嫌な顔一つせず、俺に消しゴムを貸してくれた優しすぎる天使のような子なのに……。


「……ありがとう」って言うタイミング、何度もあったはずなのに。


なんで、俺はいつもこうなんだろう。



家に帰ると、いつものように何も起きない日常が待っていた。宿題もせずに、ぼーっと古本屋で買った怪しい文庫本を開く。


——“真実の恋が叶う召喚の儀”。


怪しいにもほどがある。でも、なんとなくページをめくる手が止まらなかった。

書かれていたのは、ただのふざけた詠唱。


「いざ問わん、真なる愛の導き手よ……とっとと現れやがれ、このクソ雑魚恋愛人生に光を!」


笑いながら、誰にも聞こえない声でつぶやいた。


……次の瞬間だった。


バチン、と空気が弾けたような音。

蛍光灯が一瞬消えて、またついた。



——突然、ベッドの上にいたのは、

現実離れしたピンク髪の少女だった。


「待たせたわねッ!恋の敗者に希望を灯す者——恋マスター・ルル、爆誕☆!」


……何だ、この全力の中二病は。

少女は片足をベッドに乗せ、謎の決めポーズ。

肩にはキラキラと光る銀色のマント、そして頭にはハート型のティアラ。

胸元には“恋”と刺繍されたブローチ、まるで特撮の悪役か何かだ。


だが、極めつけは——


「ふふっ、この恋愛スキャン機能付き、《ラブアイズ・スコープ》があれば、あらゆる恋の気配を見逃さないんだから!」


そう言ってドヤ顔で指差したのは、両目をすっぽり覆うド派手なハート型サングラスだった。

片方のレンズには「LOVE」、もう片方にはなぜか「JUSTICE」と書かれている。


完全におかしい。


「……その格好、どこからどう見ても頭イっちゃってる人だけど」


「えっ!? これ、異世界じゃ最新モテファッションなんだけど!? “恋マスター”認定試験の公式ユニフォームだよ!?」


「いや、まず恋にそんなぶっ飛んだ見た目が必要ってところからズレてると思うけど」



彼女は堂々と歩き回りながら、いちいちポーズを決める。


・スカートの下から謎の“恋愛パワー増幅ストラップ”がぶらさがっていて歩くたびにピロンピロン鳴る


•靴の底がLEDで光る(しかもピンクと赤に交互、てか家の中で履くなよ)


•背中のマントが風もないのにパタパタ動く


見た目だけならコスプレ好きの迷子だ。

ましてや、こんなヤツに“恋のアドバイス”をされるなんて、絶望しかない。



「よーし、じゃあさっそく恋愛状況をスキャンしちゃうぞ~☆」


彼女がグラサンのつるをグイっと持ち上げると、レンズの奥で小さく「ピーッ」っと電子音が鳴った。


「……恋愛対象:星ヶ丘ヒナ。好感度数値、現在……68・ラブポイント!」


「何その適当な単位……」


「ちょっとバグってるけど、誤差の範囲内だから!」



俺は思った。


たぶんこの人(?)、絶対モテないタイプだ。


——

※ルルイメージ

https://kakuyomu.jp/users/ceroking2/news/16818792438042607893

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