第6話 謎めく記憶

タイトル:占い師(イル・カルトマンテ)


第1章 - フォルトゥーナ


【第6話】 謎めく記憶


【あらすじ】

セスとの対話はゆっくりと深まり、ロレンツォはカードの束を指先で分ける。招かれし者として選ばれた意味を静かに問い直され、香りと儀式の重みが空気を満たしていく。


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偉大なるセス、占い師。

彼はその奥の部屋に潜んでいたに違いない。その登場には、静かな威圧感があった。

彼は少なくとも六十歳には見えたが、その装いと雰囲気のせいか、八十にも、それ以上にも思えるほどだった。

赤黒いベルベットのローブをまとい、そこには神秘的な記号が刺繍され、蝋燭の柔らかな光の中で静かに輝いていた。

その顔は長い年月の軌跡を物語っていた。神秘の世界をさまよい歩いた者の顔──白く長い髭が知恵と古さを象徴していた。

彼の目は透き通るように明るく、少女──オルテンシアと同じ色をしていた。その眼差しは、人の心の奥底まで見通すような深さがあり、秘密や運命を明かす力を秘めていた。

ロレンツォはその視線を受けた瞬間、ぞくりと身震いした。

セスの頭には宝石と羽根で飾られたターバンが巻かれ、彼の謎めいた存在感をいっそう強めていた。

指先は細く長く、その指には銀の指輪が幾つも嵌められ、そこにはルーンのような神秘の記号が刻まれていた。動くたびに光を反射し、輝きを放っていた。

セスは、まるで宙に浮かぶような静かな足取りで、テーブルの向こうの大きな椅子に座った。

ロレンツォはオルテンシアの方を振り返ったが、彼女の姿はすでになかった。まるで消えてしまったかのように。

「ようこそ」

セスの低く響く声が、小さな部屋に満ちた。

「ありがとうございます、先生…」とロレンツォは口ごもりながら答えた。

セスは彼の目をまっすぐ見つめた。

「私はセス、偉大なるセス。アヌビスの強き友だ」

ロレンツォは、オルテンシアが言っていたその言葉を思い出した。

「…ありがとうございます、偉大なるセス」

彼は、セスが望む通りにそう呼んだ。

セスは満足そうにうなずいた。その呼び名に、誇りと悦びを感じているようだった。


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(続く)

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