第二章 縛界の極、参上
第17話 チャンスはピンチ
~村瀬 雫視点~
雷導君を助けてから3か月がたった。
もうだいぶ時間がたって、視聴者数は1万人程度で安定してきてきた。
あれからたまに雷導君とコラボしてダンジョンにもぐることはあったけど、私がいると雷導君が活動している渋谷ダンジョンの11層のモンスターはすべて一撃で倒せてしまうせいで配信映えしなくなってしまい、コラボはあまりしなくなった。
ほかの配信者ともそうだ。何人かとコラボしてきたけど、やっぱり一撃ですべてが済むのでコラボしなくなった。
私の今いる階層は第13層。渋谷ダンジョンは一層ごとに景色が全く違うし、とっても広いタイプで、一層ごとにボスがいるダンジョンなので、私の攻略速度は異常だ。
その異常性があるから、1万人もの人が私の配信に安定して見に来てくれる。
何度かやった私のユニークスキルの成長のためにやっていた雑魚狩り配信は、ほかの配信者とあまりやっていることが変わらないからか、視聴者数が減ってしまった。
やっぱり私にあるのは3年間鍛え上げ続けたこの攻撃力。そしてその攻撃を生かしてくれる俊敏のステータス。私はこの二つで強いモンスターを瞬殺するという斬新な強さを売りにするしかない。
今日も、私はダンジョンを配信する。
「みんなお疲れ~」
私がいつものように配信をつけると、すぐにコメントがつく。
『お疲れさまです!』
『お疲れ様です!』
『お疲れ様です!』
私の配信の挨拶の仕方だ。
〇が如くのあの人と名前が全く同じなので、そういう挨拶になった。
配信の名前を決めた時に意識したわけじゃないのだけれど、あのゲームは私も大好きなので気に入ってる。
「さて、今日も攻略していきますかねぇ」
渋谷ダンジョンの11階層以降は、上位5%の人しか超えられないといわれている場所。13階層は到達している人の人数がそもそも少ないので、隅々まで探索されているわけではない。
それに、11層目以降はボス部屋が複数発見されている場所もある。
13層にも、もしかしたらいまだ発見されていないボス部屋があるかもしれない。
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道中のモンスター、仮面オーガを一掃して、攻略を進めたいた時、コメントの様子が変わった。
『ここ未探索領域じゃない?』
『見たことない気がする』
未探索領域。それは、ダンジョン配信者がまだ通ったことのない場所のことだ。
冒険者は配信することを奨励されているけれど、義務ではないので、当然誰かが入ったことがあると言う可能性はある。
それでも、配信している人がほとんどなので未探索領域にはまだ開けられていない宝箱がある可能性がある。
「じゃあちょっと探索してみよっか」
私がそう言うと、コメントは二つに分かれた。
『すごいスキル見つかるかも!』
『危ないし、一旦引いた方がいいと思いますゾ〜☝️💦』
この汗臭そうなコメントは
縛界さんには悪いけど、未探索領域の探索なんて滅多にできることじゃない。この機会を逃すわけにはいかない。
私はスマホを取り出して、配信タイトルを切り替える。
[未探索領域見つけたかも]
これでよし。
「よし、お宝見つけるぞー!」
私は未探索領域の探索を決意した。
私がしばらく進んでいると、本当に宝箱を見つけた。
未開封の宝箱……!初めて見た!
「みて!これ宝箱!」
私がカメラの方を見て言うと、コメントが沸き始めた。
『すげええ!宝箱!』
『キ、キターーーー!』
ワクワクしてきた。宝箱はボスと違って復活しないので、未開封の宝箱を見たことがある人はごく一部。
きっと今頃視聴者数は鰻登りだ。
『とりあえず一回蹴ってみとこカ❓😅💦ミミックかもしれないしネ❗️』
はっ、確かに。
ダンジョンでミミックがいたなんて聞いたことないけど、そもそも宝箱が少ないからわからない。
この宝箱がブリッジしながら襲ってきても困るので、一応蹴っておく。
なんの反応もない。大丈夫そう。
「いくよ!?」
私は宝箱を開ける。
中にはなんとスキルオーブが入っていた。
「ええええええ!?」
『マジか!』
本当にスキルオーブが入ってるなんて。
ボスがレアドロップで落とす以外にも手に入れられるなんて…
「後で鑑定してもらわなきゃ!」
私は良い気分でバッグにスキルオーブを入れた。
明日はスキルオーブ鑑定配信かな〜
今日の収穫はもう十分。でも、この未探索領域は、私が帰ってしまえば他の冒険者が探索しにきてしまう。
まだそんなに時間もかかってないし、今日はもう少し探索してみようかな。
しばらく探索していると、次は扉を見つけた。
ボス部屋への扉を。
『うおおおおおお!』
『大発見じゃん!』
コメントもより一掃盛り上がる。
私は気になって視聴者数をスマホで確認する。すると、なんと30万人もの人が見にきていた。
これは、雷導君に迫る同接数だ。
すごい!こんなに人が見にきてくれてるなんて初めてだ!
コメントの勢いがすごい。
チラリとおじさん構文のコメントが見えたけど、一瞬で流されていって、読めなかった。
私は二つの考えが思い浮かぶ。
危険なのでは?
こんなチャンス、きっともう二度と来ない
ここまでの敵は全て一撃で倒してきた。おそらくここのボスも一撃で倒せる。もし一撃で倒せなかったとしても、2,3発入れられれば勝てるはず。
やらない後悔より、やる後悔。
私はすぐに結論を出した。
「よし、じゃあ未発見ボス、倒しに行くよ!」
私は意気揚々とボス部屋の扉を開けた。
すると、そこにいたのはオーガロードだった。
でも、普通のオーガロードと違って、肌の赤色が明るい。そして、角も歯も金色で、左目は宝石のような義眼が入っている。
それでも私は迷わず速攻を仕掛ける。
「飛燕斬」
私は一気にオーガロードに接近し、切り払う。確かな感触。
私はオーガロードの後ろで止まり、後ろを振り返る。
その瞬間、私は吹き飛んだ。
何が起こったかわからなかった。
だんだん視界が赤く染まる。
血?
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HP:0 / 4600
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私を守るバリアがなくなったんだ。さっきの一撃で。
たったの一撃で。
動けない。
身体が言うことを聞かない。
嫌だ………嫌だ………
あの日よりも深い絶望。
オーガロードの手が私に迫りくる。
オーガロードに持ち上げられそうになったその瞬間。
「え?」
急にオーガロードの手がはじかれた。
私を半径2mほどのドーム状の膜が守ってくれていた。
オーガロードはニヤニヤした笑みから表情を変え、全力で金棒でたたきつけてきた。
シールドはびくともしない。
しかし、時間差でヒビが入っていく。
シールドが割れたその瞬間、振り下ろされた金棒をつかむ男性がいた。
「縛界の極、参上」
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