第58話:『突撃!隣の不貞現場~全米が泣く前に笑えSP~』





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### 短編小説:『突撃!隣の不貞現場~全米が泣く前に笑えSP~』


「はーい! こんばんワッショイ! 視聴者のみんな、元気してる~!?」


 深夜一時。静まり返ったラブホテル街の路上で、私はスマホの画面に向かって満面の笑みを弾けさせた。

 画面の向こうでは、配信開始と同時に視聴者数が爆上がりしている。

 『閲覧数:12,450人』『コメント:草www』『何この格好ww』


 無理もない。今の私の格好は、ドン・キホーテで揃えた「パーティー用司会者セット」そのままだ。

 テッカテカの原色レッドのジャケット。

 パツパツの白いタイトスカート。

 そして首元には、漫才師のような巨大な蝶ネクタイ。

 片手には自撮り棒、もう片手にはおもちゃのハンドマイク。


「さあさあ、始まりました! 深夜のゲリラ企画! その名も……」

 私はカメラ目線でウインクを決めた。


「**『実録! ウチの旦那の浮気現場を、世界中にシェアハピ☆しちゃおうのコーナー』**!!」


 コメント欄が滝のように流れる。

 『タイトル長すぎw』『ガチ勢きたー』『旦那逃げてー(棒)』

 ハートのエフェクトが画面を埋め尽くす。よし、掴みはオッケー。


「現場レポーター兼、サレ妻のナオミでーす! 今日はなんと! 私の愛する旦那様、和樹くんが! あそこのホテル『シルキー』で、若いツバメちゃんと絶賛ピロートーク中との情報をキャッチしました!」


 私は背後のホテルを指差す。

 すると、自動ドアが開き、一組のカップルが出てきた。

 帽子を目深に被り、マスクをした男。そして腕を組む茶髪の女。


「ああっ! 来ました来ました! 本日の主役の登場でーす!」


 私はハイヒールでダッシュした。自撮り棒を高く掲げ、LEDライトの強烈な光を二人の顔面に浴びせる。


「こ・ん・ば・ん・は~!!」


 まばゆい光に照らされ、男が手で顔を覆う。

「うわっ、なんだ!?」


「奥様ですよ~! 和樹く~ん! こっち向いて~! 笑顔でピース!」


 私は男のマスクを剥ぎ取った。

 露わになったのは、紛れもなく我が夫、和樹のマヌケな驚愕顔だ。

 隣の女が「キャアッ!」と悲鳴を上げてしゃがみ込む。


「な、ナオミ!? お前、何して……その格好……」

「何してって? **生・配・信**だよっ☆」


 私はスマホの画面を和樹の目の前に突きつけた。

 『旦那アウトーw』『顔真っ赤じゃん』『浮気相手ショボw』

 容赦ないコメントの雨あられ。


「えっ、配信? 嘘だろ、やめろ! 切れ!」

 和樹がスマホを奪おうとするが、私は華麗なステップでかわす。


「ダメダメ~! 今、同接3万人超えてるんだから! 投げ銭も止まらないよ~! このお金で慰謝料の足しにしちゃうぞっ☆」


 私はおもちゃのマイクを、震える和樹の口元に突きつけた。

 司会者モード全開、目は笑っていない。


「さあ、和樹くん! 世界中の視聴者が君の言い訳を待っているよ! 『仕事』って嘘ついて、こんな安いホテルで何してたのかな~!? はい、30秒以内でどうぞ!」


「ふ、ふざけんな! 会社にバレたらどうすんだ!」


「も~う遅いよ! さっき部長のアカウントも見に来てたもん! アーカイブもしっかり残しま~す!」


 和樹は絶望で膝から崩れ落ちた。

 女は顔を隠して走り去ろうとしているが、もう手遅れだ。スクショ祭りは終わらない。


 私はカメラに向かって、今日一番のドヤ顔を決めた。


「浮気は文化? ノンノン、浮気は**『無料コンテンツ』**だよ!」


 そして、冷や汗まみれの夫を見下ろし、高らかに叫んだ。


**「さあ! どうする? あなた!!」**


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