第48話「うちの甲斐性なしの、最後の奉公や」



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「うちの甲斐性なしの、最後の奉公や」


うちの旦那、佐藤三郎が死んだ。

まあ、いつかこないな日が来るとは思とったけどな。で、葬式の案内が来たんやけど、集合場所が斎場やのうて港て、どないなっとんねん。


行ってみたら、案の定や。やけにキンキラキンのクルーザーが停まっとる。「追悼の航海」やて。アホらし。

ほんで周り見たら、おるわおるわ。うちの旦那に手ぇ出された女どもがぎょうさん。みんな喪服着とるけど、目ぇが笑ろてへん。そらそうやろ。うちかて、涙の一滴も出えへんわ。


そしたら、船長みたいな格好した胡散臭い司会の男がメガホンでしゃべりだしよった。


「皆様! 本日はご愁傷様でございます! そして、おめでとうございます! 本日、我々はついに**業界初の『慰謝料回収型葬儀』**を執り行うこととなりました!」


は? 慰謝料? 周りの女どもが「待ってました!」みたいに拍手しとる。なんやねん、この茶番は。


「彼に弄ばれた皆様の気が済みますまい! これからの時代は、彼に最後の奉仕をさせるのです! そう…故人を、**高級魚を呼び寄せる『特製セレブ撒き餌』にしてあげましょう!**」


……魚のエサて! ぶはっ! 思わず笑いが出てもうたわ。

あんた、生きてる間は女に貢がせて、死んだら魚に貢ぐんかいな。ほんま、しょうもない男やで。ええ気味やわ!


船はご陽気な音楽かなんか流しながら、沖へ沖へ。シャンパンまで出てきよった。もう葬式やない、ただの宴会や。女どもは「やっと解放されたわ!」「私たちの勝利に乾杯!」やて。あんたらも大概やな。


「さあ、着きましたぞ!」

司会が叫んだら、スタッフが金ピカのひしゃくを配りだしよった。案の定、女どもの間で「うちが先や!」「あんたより私の方が被害額多いんやから!」って醜い争いが始まっとる。


「それでは故人、佐藤三郎が、皆様の懐を潤しますよう祈りを込めて…さあ、**被害者の会の皆様! 思う存分、太平洋にぶちまけてください! どうぞ!**」


その合図で、女らの恨み節大会が始まった。

「うちの青春返せー!」「この金食い虫がー!」

まあ、やかましいこと。


うちも金のひしゃくを手に取った。寸胴鍋の中の、キラキラしたピンクのペースト…。これが、あんたの成れの果てか。

「おい、三郎!」

うちは海に向かって叫んだ。


「生きてる間、ろくに生活費も入れんかった罰や! あんた、マグロの一本でも連れて帰ってこんかったら、ほんまに承知せんど! うちの苦労、分かってんのか、この甲斐性なしがー!」


ドバッ!と力一杯、海にぶちまけたったわ。気分、スッとしたわ。


港に戻ったら、あの胡散臭い司会が請求書持ってきた。うちがそれ見た瞬間、目ぇ剥いたわ。


【ご請求額: **8,980,000円** 】


**はぁ!? どこまで金のかかる男やねん、あんたは!**


思わず叫んだら、隣におった親友の「俺」くんが「詐欺だろ!」言うてくれとる。ええ子や。

でもな、うちはニヤリと笑ろて言うたった。


「ええよ、払ったるわ。どうせ**あんたがコソコソ隠しとった通帳からな!**」


そうや。あんたのへそくり、とっくに見つけとったんや。最後の最後に、ええ仕事してくれるやんか。


司会は「これは『未来への投資』です!釣れたマグロで山分けしましょう!」とか言うて、女どもも「そうや!」「三郎の最後の奉公や!」で、なぜか一致団結しとる。現金なもんやで、ほんま。


まあ、ええわ。

あんたのおかげで、よう分からん女たちと変な絆も生まれたし、隠し金も見つかったし。最後の最後に、うちの懐を潤してくれたんやから、それでチャラにしたるわ。


**ほな、さいなら、うちの甲斐性なし。めでたし、めでたし。(知らんけどな!)**

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