第14話 こういう女
「ま、いいや。お昼寝しましょうか」
私がそう提案すると、ユリィさんが驚愕の声を上げた。
「こ、この流れでお昼寝を!?」
「? 何か変でしたか?」
「変でしたか、って……」
なぜだか唖然とするユリィさんの両肩を、アルーとミワがポンッと叩く。
「諦めた方がいいわよ」
「優菜さんは神経図太いですから」
失礼な。こんな繊細な少女を捕まえて。
「あー……」
なぜか納得の声を上げるユリィさんだった。解せぬ。
なにやらユリィさんから誤解されているようだけど、パーティーメンバーとして過ごしていくうちにその誤解も解けていくことでしょう。
というわけで、私はさっそく地面にブルーシートを広げ、その上に寝っ転がったのだった。
「おー」
元々が草原なので感触は柔らかめ。視界に広がるのは真っ青な空と、白い雲。ダンジョンの中だというのに柔風まで吹いている。
続いて私の両隣に寝っ転がるアルーとミワ。
「あー、いいわぁ。たまにはのんびりするのもいいわねぇ。コンクリートジャングルですさんだ心が癒やされるわぁ」
「久しぶりに日光を浴びると気持ちいいですねぇ。いえしょせんはダンジョンが作り出した偽物ですが」
なんだかいつもの雰囲気が漂ってきたね。
「……うわぁ、本気でお昼寝する気だ……。ダンジョンの中なのに……」
生真面目なユリィさんはまだちょっと不安なようだ。
「大丈夫ですよ。ダンジョンの初層なんて素材収集をさせるための場所で、魔物なんて滅多に出てきませんから」
「いや出てくるのなら警戒しなきゃいけないと思うんだけど?」
「まっじめ~」
自己攻撃力上昇・Sなんていう凄いスキルを持っているのだから吹き飛ばしてしまえばいいのにとは思うけど、まぁ魔物の襲来を警戒しながらではゆっくり昼寝もできないという気持ちも分かる。
というわけで。私は空間収納から昔使っていた魔導具を取り出したのだった。
「はい、じゃあ魔物避けの魔導具を使いましょうか」
「……魔物避け?」
「えぇ。さすがに強力な魔物は無理ですけど、そういうのが近づいて来たら気配で分かりますからね」
「……魔物避けの魔導具なんて、そんな高価で貴重なもの、なんで高校生が持ってるの?」
「貴重なんですか? もらい物なので値段は知らないんですけど」
「もらい物……。それにしたって、授業でも魔導具の相場は習ったじゃないか……」
「授業はほとんど聞いていませんので」
「それはまぁ隣の席だからなんとなく分かってるけど……それにしてもさぁ……」
疲れたようにため息をつくユリィさんの肩を、ポンコツ二人が再び叩く。
「諦めた方がいいわよ?」
「振り回されて疲れるだけですからね」
いつも私を振り回している二人がそんな寝言を言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます