第48話 ダンジョンは何でもあり
アイテムスロットに入れたカード。
それは、モンスターカードと表示されていた。
モンスター名は『リフェリア』。
雨木はその名前を知らなかったが、
そういう名の蝶のモンスターなのだろうと受け取った。
その『リフェリア』のカードが、《レコルド》の中で振動する。
まるで、抗議するかのように。
「何だよ? あん? そこじゃない?
あぁ、スキルスロットに入れろ?
いや、最初はアイテムスロットに入れるもんなのっ。
でないと名前がわかんねえんだよっ
たくっ……ちょっと待ってろ」
言葉はない。
だが、意思が《レコルド》を通して伝わってくる。
抜いて、スキルスロットのページに挿し替えようとした、その時。
雨木は変化に気づいた。
アイテムスロットの枠が増えている。
縦横三枠ずつ、合計九枠だったものが、
縦に一列増えて、十二枠になっていた。
眉を寄せながら、雨木はページをめくる。
スキルスロットのページへ。
「こっちもか」
そこでも、一列増えていた。
元のスキルスロットは、中央やや上に三枠だけ。
だが今は、その一段下にも三枠。
二段構成で、六枠になっている。
アイテムスロットのページも同様だ。
上から三段だったものが、四段目まで増えて十二枠。
雨木は左上から順に使う癖があるため、
最下段に増えた枠の存在を、一瞬見落としていた。
「なるほどな。ボスを討伐すると、こうなるのか。
これはイージス端末にも出てない情報だ。
アイテムスロットはともかく、スキルスロットが少ないとは思ってたんだ」
「……おっと、分かったよ。今、挿す」
アイテムスロットから抜いたままの『リフェリア』のカードが、催促するように揺れる。
自己主張の強いカードだなと思いながら、増えたスキルスロットの空き枠へと差し込んだ。
すると、《レコルド》が再び振動する。
「今度は何だよ?」
《レコルド》のページが自動で捲られ、表紙裏へと戻る。
そこに文字が浮かび上がった。
「……何々。
モンスターカード『リフェリア』が、《レコルド》内のスキルカードに干渉する権限を要求。
承認しますか? yes/no……だと?」
「それはちょっと
分かったよ。頭の中に文句言ってくるな、響く。
承認するって。イエス、いえす、イエス」
yesを選択した雨木。
表紙裏に、文字が次々と追加されていく。
それを雨木は目で追った。
『モンスターカード『リフェリア』が《風魔法/Lv.1/+2》カードを吸収しました』
『吸収により、対象が所持していた《風魔法/Lv.1/射出型》がLv.2へ進化』
『同条件で、貴方が所持していた《風魔法/Lv.1/纏流型》もLv.2へ進化』
『これにより、モンスターカード『リフェリア』が上記二種のスキルを所有します』
……
…………
『モンスターカード『リフェリア』が《火魔法/Lv.1/+6》カードとリンク』
『モンスターカード『リフェリア』が《嗅覚強化/Lv.1/+6》カードとリンク』
……
…………
………………
「何か……色々おかしなことが起きた予感がする」
一瞬呆然とした雨木は、目をこすりながらスキルスロットを見直した。
ボス部屋到達前は三枠。
火魔法、棍棒術、風魔法の順で挿していた。
今は二段構成の六枠。
そして二段目の左端に、
モンスターカード『リフェリア』が収まっている。
《嗅覚強化/Lv.1/+6》はアイテムスロットにある。
スキルスロットには無い。
それなのに、表示には名前がある。
だが問題は、そこではなかった。
「いやいやいやいや。
風魔法スキルカード、消えてるんだけど?」
《レコルド》も、ダンジョンと同じだ。
分からないことばかりで、
冒険者たちは皆、手探りで進んでいる。
スキルカードも、モンスターカードも。
雨木はモンスターカードの存在自体は知っていた。
だが――
「確か、取引停止扱いだったよな。
そのせいで情報がほとんど無い。
まあ……よく分からなくても、やらなきゃいけない時はあるんだけど……
最近多いな……」
「……とりあえず、確認だ」
魔法スキルと同じように意識を集中する。
《レコルド》を開き、スキルスロットのカードに意識を向けると、情報が流れ込んでくるのだ。
「ふむ。『リフェリア』を入れてると、どっちの風魔法も使えるのか。
くそっ……やっぱりか。『射出型』の
これが嫌で、ダンジョン内でスキルを挿すのを避けてたのに」
風魔法をもらった時、雨木が選んだのは纏流型だった。
今は遠距離を急いでいない。
だから、火魔法と同じ設定にした。
ダンジョン内での即断だったこともある。
魔法スキルカードは、アイテムスロットにある間は何も起きない。
だが最初にスキルスロットに入れた瞬間、「どう使うか」を迫られる。
放置すればしばらくして、盾・壁型に自動設定される。
火魔法の時は情報があった。故に時間を稼げた。
悩んで、悩んで、長く保留した。
棍棒術が手に入らなければ、今も決めていなかったかもしれない。
だが風魔法は違う。
ボス部屋に行く前提で受け取った。
急場で、だから火と同じ設定にした。
……その、はずだった。
それが消え、『リフェリア』に統合された。
「くそっ……スキルスロットに入れたあとの制限時間が分からないのに、
モンスターカードでまで選択を迫られるとか、理不尽だろ。
……まあいい。設定だ。射出型の」
魔法使いの多くは射出型だ。
だが威力は、使い手で大きく変わる。
新人ほど強いのは、イージス端末に情報が出ているからだ。
雨木も、その恩恵を受けた一人だった。
だから時間をかけて、外で考えた。
すぐ使おうとする者ほど、魔法は雑になる。
中途半端な魔法になる。
それが「魔法は弱い」という定説の理由の一つだと、雨木は思っている。
射出型レベル1の射程は二メートル。
雨木は、サークル臨時に四度参加した。
その中で、魔法スキル使いを注意してよく見てきた。
初期設定を誤った魔法は、ただの棒立ちだ。
特に 思い出すのは、女性冒険者が突き飛ばされた場面。
アーチャーレッサーコボルトを、瞬殺できる魔法使いはいなかった。
サークル臨時に、魔法スキル使いがいなかったわけではない。
九階層まで温存していただけで、複数人いたのだ。
だが、弓より速く、あの位置で、強い魔法を撃てる使い手はいなかった。
誰かが囮になる。
魔法はその後だ。
それが、今の魔法の現実。
魔法の選択に時間をかけてきた雨木には、その理由が分かる。
細かく。
実戦で使えるように。
魔法という言葉に縛られる。
すると大半は杖と詠唱に行き着くらしい。
だが実際は違う。
威力は、スキルレベルとカード枚数で決まる。
格好は関係ない。
それでも格好に逃げた冒険者を、
雨木は何人も見てきた。
※本作は作者による構成・執筆を基に、一部AIを補助利用しています。
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