第24話 君から強引に迫られたら
「本気で言っているのか?」
「だから、こんな
彼女は挑発するようにスカートの裾を指でつまんだ。
「バカにするな! そんな真似ができるか!」
本気でキレた。
それは僕に対する侮辱だ。
「──ほら、そういうまともな君だから恐いんだ」
どこかホッとしながらも、少しだけ切なそうにも見えた。
「君はまともを誤解している。世間一般のまともな男ならとっくに襲いかかって裸にされているよ」
「
「悪ふざけをしたんだ。今度ばかりは謝らないぞ」
「わかっている。すまない」
さすがに僕の本気が伝わったらしく、白金は素直に謝った。
「らしくないぞ
「私としてはさほど嫌とは感じていないのがまた厄介なんだ」
今度こそ絶句するしかない。
「多分、君から強引に迫られたら断り切れない気がする」
僕は白金の横顔を見た。
彼女はこちらを無視しながらも、耳を赤くしていた。
そんな隙を見せられて、どうしろと?
「断ったことを後悔したか?」
ニヤリと笑った。彼女は敏感にこちらの揺らぎを察知していた。
前言撤回。
金剛寺白金に甘い顔を見せると、すぐに手玉に取られる。
「やれやれ、私の捨て身の説得は空振りに終わったわけだ」
「凶悪な脅しだったよ」
「魅力的な条件だと思うが、着飾るのが足りなかったか?」
白金は自分の恰好を点検する。
僕は盛大なため息をつくしかなかった。
「十分すぎる。だからこそ腹が立つ」
「そういうことに興味のある年頃なのに、君はすごいね」
「こう見えて実は照れ屋なんだ」
「親友たちに秘密を作るのも、それはそれで興奮しそうで悪くないんだがね」
そんな破滅的な関係があってたまるか。
どうも彼女の露悪的な振る舞いには若干の無理しているようなところがある。
きっと欲望のままに従っていたら、気づくこともできなかった。
「なぁ、基月氏。モテない男の理由を教えてあげようか」
「なんだ、急に?」
「嫌われる覚悟がないからさ」
こちらの反応も意に介さず、白金は言いたいことを言い続ける。
「何が言いたい?」
「君は
教室に奇妙な長い沈黙が訪れる。
かなり間を空けてから、ようやく僕は言葉を絞り出す。
「…………僕は、玻璃が好きなのか?」
オウム返しに確認してしまう。
頭の上には巨大なクエスチョンマークが浮かぶ。
「ん? 君は彼女に恋をしているから私たちと交流していたんだろう?」
白金としても僕の反応が予想外だったらしい。
「どうしてそういう解釈になる?」
僕は真顔で訊ねる。
「それは君が玻璃を見る目が特別に感じられたから」
「綺麗なものに目を奪われるのは人間の本能だ。見た目の話なら金剛寺だって負けないくらいに美人じゃないか。正直、今の感じには驚いたぞ」
それが僕の嘘偽りない感想だ。
普段の恰好が気を抜きすぎているだけで、圧倒的な素材の美しさだけで学年で三本の指に入る。こうしてきちんと整えたならなおさらだ。
「そういう感想は先に言え!」
「正体を隠していたのは自分だろう!」
あれほど余裕だった白金が急に動揺していた。
「あーやめだやめだ。焦った私のひとり相撲じゃないか。気合いを入れて損した!」
お手上げとばかりに、白金は教卓から飛び降りた。
「とにかく私が言いたいのは、これ以上玻璃の心を乱す真似はよしてくれ」
「君も似合わない悪役ムーブはやめろ」
僕らはお互いに条件を突きつけ合い、この場では手打ちとした。
「しかし、そうなると恋でもないのに、君が我々に応じているのはなんでだい?」
「僕なりに君らと話すのが楽しいのは認めるよ。まぁ誰だってそうだろうけど」
五つ星ギャルに声をかけられて喜ばない人はいない。
「少なくとも、ただのクラスの男子はひなわや美悠から頻繁には誘われていないよ」
「僕からもひとつ忠告する。玻璃が心配なら横できちんと支えてやれ。裏でコソコソせず、堂々と守ってやるべきだ」
「……そういう見透かした態度、ムカつくよ」
「出過ぎた発言だったか」
「男の言葉を真に受けるような愚かな女ではないからな」
「そっか。じゃあ、聞き流していいから聞いてくれ」
「なにが?」
「ズボラな君もいいけど、今みたいにちゃんとしている恰好も素敵だぞ」
今度こそ完全に沈黙した。
「君もあれか、女は小綺麗にしておけというタイプか?」
「聞き流さないのか?」
「聞き捨てならないからだ」
白金が急に近づいてきた。
「どんな恰好をしても本人の自由さ。ただ金剛寺白金の良さを隠してしまうのはもったいないと常日頃から思ってはいた」
開き直るつもりはないが、男に化粧の良し悪しを正しく判断するのは難しい。
ただ、その準備が大変なことも想像することはできる。
時間をかけたことに対して僕は良いと褒めることしかできない。
「君も玻璃と同じで、原石を放っておけないタイプか。この似た者同士め!」
「そんな怒るようなこと言ったか?」
「はぁ~~美容には手間がかかるんだよ。ろくに化粧なんかしない男にはわかんないだろうけど。私は早起きだって苦手なのに」
口振りは怒っているようだが、白金の表情はまんざらでもない様子だ。
「それはまぁ、すまん」
自分なりには慮っているつもりだったが、女性からすれば足りないようだ。
「気が向いたらな」
「楽しみにしているよ」
「そういうことを誰にでも言うから、皆を勘違いさせるんだ」
白金は唇を尖らせた。
その表情は、恋人のいる女が迂闊に向けていい微笑ではない。
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