第25話 首都キャピトルとレジェンダリー装備

それはまるで軍事思想が具現化された都市だった。

碁盤目状に整備された道路には、歩兵用装甲車や警備用ドローンが規則正しく巡回し、建物はすべてが機能重視の無骨なデザイン。

過剰な装飾は一切なく、必要なものだけが必要な場所に配置されている。

アトラス隊は装備の完成を待つ間、短い自由時間を与えられ、

それぞれがこの軍事都市を見学していた。

「懐かしいな、この引き締まった空気……さすが故郷だぜ」

アルノ・コレットが、街路を歩きながら肩をすくめた。

「無駄がないとも言えるけど、ちょっと息苦しいわね」

フェリシア・フェングローが冷静に言い返す。

彼女の目は周囲の高層監視塔を見上げていた。

ビルの壁面に取り付けられた高性能センサーは、

常に通行人をスキャンしているようだった。

「……この街には、自由より秩序を優先する気質が根付いてるな。

ただ戦時中だと考えると、俺たちが生き残るために必要な秩序ってやつもある。

そういう意味じゃ、ここは理想的かもしれねぇ」

アルノ・シュベが隣でぽつりと漏らす。

アルノ・コレットは、相棒の言葉に頷きながら、

「そう言う事だな」と短く返した。

二人はヴォラク人とボルツ人という異なる種族でありながら、長年の戦友として息が合っていた。

一方で、マリアはキャピトルでの事件報告を確認するため自警団本部に足を運んでいた。

「やはり、ここでも誘拐事件が多く起きているのね……

行方不明になっている数をかんがえると相当ザーグの手に人がわたっていると推測したほうがいいわね」

ふと周りを見渡すと、

彼女の視線の先にザーグとの戦闘で戦死した兵士たちの肖像が並んでいた。

マリアはアースとはまったく違う価値観をこの都市から感じ取っていた。

「戦うことが、ここじゃ誇りなのね」と軽く呟く。


その頃、キャピトルの市場区画では、

アリシアとキャシーが地元の食材や加工品を見ていた。

「面白いわね、この魔導素子。

エネルギー密度が高いし、熱伝導性もすごく良さそう」

アリシアが目を輝かせて素材を眺めていると、キャシーが苦笑しながら答える。

「本当に炎魔道士って、こういうの好きよね。

私はこの珍しい食材に興味を惹かれるわ、なんか健康に良さそうですよ」

「さすが光のプリースト。体調管理に敏感ね」

その言葉に、キャシーは軽く舌を出して笑った。

リン・エヌギュイエンは訓練場で地元兵士たちとヴォラク式の近接格闘術を伝授してもらっていた。

「なるほど……戦術は違うが、筋は通っている」

彼は自らの拳を見つめ、更なる高みの糸口を発見したようであった。


──そして、町全体を少し離れたベンチからジョージが眺めていた。

「……統率と戦闘にのみ生きる惑星か、今の時代にはピッタリな文化だな......」

彼は、このキャピトルという都市を眺めながら改めて自分が転生された世界(時代)の違いを実感していた。

やがて夜になり、アトラス隊はキャピトル中心部にある軍用居住区へ戻った。

開発局からの連絡によれば、翌朝には装備と新兵器の第一試作が完成するという。

ミリタリア中央兵器開発局、地下第七ドック

――高純度オリハリウムを素材に製造されたアトラス隊専用の装備が、ついに完成を迎えた。

巨大なリフトの上で、銀色に輝く装甲群が徐々に姿を現す。

まばゆい金属光沢は、ただの兵器ではなく、まるで神話に登場する伝説の武具のような威厳を放っていた。

スロボダン・ミロゼビック将軍が腕を組んで立ち、深い声で宣言する。

「我らヴォラクの全技術を注いで完成させた史上最高の装備だ。

ジョージ、そしてアトラス隊。貴様らに相応しい『鋼』だ」

ジョージが一歩前に進み、目の前の三つの装備を鑑定した。

《セレスティアル・シールド》

レアリティ:LEGENDARY

種別:盾

物理防御力:+950

魔法防御力:+800

特性:エネルギーバースト

受けた攻撃エネルギーを蓄積し、任意のタイミングで反射・拡散可能。

反射エネルギーは魔法・物理問わず蓄積対象となる。

反射倍率:蓄積量の150%(範囲効果)

《セレスティアル・アーマー》

レアリティ:LEGENDARY

種別:鎧

物理防御力:+1050

魔法耐性:+50%(全属性)

特殊効果:高密度な自己修復構造により、戦闘中でも1分ごとに耐久を2%回復。

特性:ビーム系攻撃耐性+20%

《セレスティアル・ガントレット》

レアリティ:LEGENDARY

種別:ガントレット

攻撃力補正:+180%

特性:格闘スキルの威力を常時1.5倍に強化

【セット効果:セレスティアル・シリーズ】

セレスティアルシリーズを3部位装備した場合効果発動

物理防御力:防御力が+50%

特殊効果:戦闘中に一度だけ致死ダメージを受けてもHP1で耐える《不屈の加護》が発動(戦闘終了後に再チャージ)

ジョージは手を伸ばし、思わずつぶやいた。

「……これは凄いな、まさにレジェンダリークラスの装備だ」

続けて装備を手に取り、そのままプリセット登録のスキルを起動した。

装備が瞬時に身体へと転送される様子を見て、スロボダンの目が見開かれる。

「……今のは何だ?装備が一瞬で……」

驚くスロボダンに対し、アルノ・コレが苦笑いを浮かべながら言う。

「将軍、あんたも慣れた方がいいですよ。うちの隊員は規格外なんで」

「本当に、あれは何度見ても信じられないわよね……」とアリシアも呟く。

マリアが静かに説明する。

「あれは“プリセットスキル”。彼だけが持つ特異な能力よ。

私たちも最初は戸惑ったけれど……今では彼の能力として納得しております」

スロボダンは腕を組み直し、しばし無言でジョージを見つめた後、低く唸った。

「……ならば、この装備を託したのは正解だったということか。

ヴォラクの装備で思いっきり暴れて来い!」

仲間たちも次々に自分専用の新装備を受け取り、興奮を隠せない様子で調整を始めた。

アルノ・コレットは分厚い肩当て付きのパワードスーツと大型グレネードランチャーを手にし、「これなら大型ザーグすら吹き飛ばせるぜ」と笑った。

アリシアは両手に装着する火属性魔導アームを受け取り、

指先からほのかに炎を迸らせながら

「魔力の流れがまるで意志を持ってるみたい」と驚いていた。

キャシーには新型のプリーストローブと魔力増幅機が与えられ、

「これなら大規模支援も対応できそう」と嬉しそうに微笑んだ。

リンには動作支援の加速装甲が施された格闘用スーツが支給され、

「……更に速く、強く動ける」と短く呟いた。

しかし一番スケールが凄かったのはアルノ・シュベの大型メカだった。

銀色に全身輝いている機体は新型駆動コアが組み込まれ、

より高出力の近接攻撃が可能となった。

「これが俺の新しいメカなのか!ザーグども覚悟しておけ!」と興奮気味に喜んでいた。

フェリシアは対ザーグ用の狙撃特化型プラズマライフルを手にし、

照準装置を覗き込みながら「ピンポイントに心臓も撃ち抜けるわ」と静かに語った。

そして、マックス艦長にはライトサーベルと最新式のスマートハンドガンが支給され、彼は無言で一礼すると腰に収めた。

翌朝、

出発の準備を終えたアトラス隊は、ミリタリアの格納庫前に整列していた。

リフト前にはスロボダン将軍をはじめ、兵器開発局の職員やヴォラク兵士たちが並び、彼らの出発を見送るために集まっていた。

「これで我が軍もようやく対抗手段を得た。

貴様らがザーグの中枢に踏み込むその時、我らヴォラク軍も必ず参戦しよう」

スロボダンが厳しい声で誓うと、マックス艦長が一歩前に出て答える。

「その時は、共にザーグを殲滅しましょう、将軍」

アトラスのクルーたちが敬礼し、ミリタリアの人々もそれに応えて拳を掲げた。

静かにアトラス母艦へと乗り込むと、機体はゆっくりと上昇し、

白銀の空へと消えていった。

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