第21話 暴かれた真実
戦いが終わった直後、廃墟に静寂が戻る。
その沈黙を最初に破ったのは、誰かの小さな歓声だった。
「やった……本当に勝ったんだよな?」
アルノの言葉をきっかけに、調査隊の面々から次々と歓声が上がった。
「すっげえぞ、ジョージ!よく、あんな化け物の攻撃耐えてたよな!」
「信じられないわ……あれだけの攻撃を一身に受けて、なお立ってるなんて……」
アリシアとキャシーもジョージの元に駆け寄り、その身体を支えるように立った。
「俺たちが無傷だったのも、あなたのおかげだろ。本当に……ありがとう」
リンが小さな声で頷くと珍しく深々と頭を下げた。
最後にマリアが、周囲を見渡してからジョージに向き直った。
「見事だったわ。あなたがいなければ、全滅していたでしょう……でも――」
言葉を区切る彼女の目が鋭くなった。
「あなたの力を見たからには聞かざるを得なくなった。
戦略を立てるうえで、知らないままでいるのは危険よ」
急にその場が静まり返った。
「なあ、そろそろ話してくれないか……」とアルノが前に出る。
「さすがに隠せ通せないか……」ジョージは静かに頷いた。
「……そうだな。何から始めれば.....」彼は息を整えると、目を閉じてから話し始めた。
「実は……過去の時代。
まだ“アース”が地球と呼ばれていた時代の人間だ。
五千年前の日本という国で生まれた」一同は驚愕に声を失った。
「そんな、まさか……時空を超えて来たってのか?」
「そうだ。ある異常な現象に巻き込まれて、この時代に転移した。
その時に与えられたのが――“クラス”と“スキル”と呼ばれる、特別な力だ」
ジョージはゆっくりと説明を続けた。
「俺のクラスは“タンク”……いわば、仲間を守る盾の役割だ。
その能力の一部を紹介する」
一呼吸いれてジョージは一同にスキル説明をした。
「“鑑定”……物質や生物を指定して分析する能力。
“インベントリー”……物質を空間に格納できる。
格納したものは時間が止まった状態になる。
“マップ”……自分を中心とした半径10キロメートルの地形情報を記録・確認できる。
そして戦闘スキルは、 “ヘイトコントロール”:敵の狙いを自分にする事ができる。
“ガーディアンズ・シールド”:仲間のダメージを肩代わり。
“オートリジェネ”:非戦闘時に自動で回復する」
「模擬戦での出来事とあの時、
敵から攻撃を受けたはずだったが、
誰もダメージを受けなかったのはその戦闘スキルの仕業だったのか」
アルノが納得したように呟く。
続けてリンが鋭く問いかけた。
「じゃあ、あの格闘技は?
あれもスキルなのか?」
ジョージは苦笑しながら首を振った。
「いや、あれはもともと俺の技だ。
父の影響で
……3歳の頃から、ムエタイ、テコンドー、ボクシングなどさまざまな格闘技を学んできた」
「3歳から……?すごいな……」
目を見開いて言ったリンの顔がどこか幼く、ジョージは少し笑ってしまった。
「宇宙船に戻ったら、そのあたり詳しく話してやるよ」
「……すまん、興奮しすぎた」
リンの反応に、場の空気が少しだけ和らぐ。
マリアが改めて問いかけた。
「“タンク”……それが、あなたの役割……?
見たことあるわ、確か旧時代のファンタジーに出てくるような……」
「それだよ。
昔のゲームやファンタジー世界の創作物なんかによく出てくるパーティ編成の基本だ。
タンクが敵視を引きつけてすべてのダメージを受ける。
そのおかげでヒーラーは一人だけ回復しなくて済むので効率的である。
アタッカー(攻撃役)が敵を倒す。この役がいつも一番人気だった。
この役割分担で、効率的に戦闘を進めるんだ」
キャシーが目を輝かせた。
「合理的すぎる……!」
アリシアも感嘆した。
「まさかそんな戦法が実際に機能するなんて……」
「現代ではタンク役が存在しないから、この発想自体が失われていたのね」
マリアが静かに呟く。
そこで彼女の視線が倒れた敵の死体へと向けられた。
「……スキャンを開始するわ」彼女は端末を取り出し、破壊された敵の残骸に向けて照射する。
「っ!ルミエル特有のマナ伝導反応、ヴォラク系筋繊維構造……
でも、間違いなくザーグの核反応もある.......」
「まさか……融合体……?」アリシアが青ざめた声を出す。
「この星の知的住民が消えたこと。
重力魔法を使う敵、その結果異常な重力場で通信が取れなくなった事、
そして調査隊である私たちをここに誘い込んだような環境とザーグ兵……これは.....」「全部……罠だったってことか」アルノが唸る。
「くそっ……」リンが拳を握る。
マリアが静かに言う。
「重力場は時間が経てば弱まるけど……死体を一刻も早く持ち帰って、本部で分析させるべきよ」
「シャトルに戻って、重力反転装置を取りに行くか……」とマリアが言いかけた時、ジョージが手を上げた
「ちょっと待ってくれ。それ、俺がやるよ」
そう言うと、ジョージは融合体の死体に手をかざし、呟いた。
「──インベントリ」
シュゥッと音を立て、死体が青白い光に包まれ、その場から消えた。
「なっ……!?どこに行った?」アルノが仰天する。
「インベントリー空間に保管した。容量は……、問題ない」
マリアが愕然とした表情で呟く。
「……運搬の概念が……根本から覆る……」
「ちょっと、マリア。そろそろなれないとね」
「そうですよ、早くシャトルに戻りましょう!」
アリシアとキャシーに挟まれて、マリアは肩をすくめた。
「……わかったわよ。さっさと戻りましょう」
廃墟を後に、調査隊は勝利の余韻とともにシャトルへ戻るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます