第2話憂鬱な日常の終わりと謎の少女

 放課後


「はぁ、ほんとに学校生活は憂鬱だなぁ……」


「私の顔を見られるんだから、感謝しなさい?」


「いや、鳳凰院よ……何故お前の見飽きた顔を見なければならないのだ」


「なっ!失礼ね!」


「別に失礼じゃないが、そしてそろそろ失礼したいんだが?」


「待て待て、失礼するんじゃない。ここで帰らすわけにはいかないな」


 悪役みたいなことを……

 それに、この女は相変らず傲慢な女だしそんな性格だな。

 ほんとに、呆れてしまう。


 この女は、どうして傲慢なことしか言えないのか、そしてどうして自分の顔に自信を持っているのか……

 まあ、美人なのは間違いないしそうなるのも仕方ないが自分で美人と言っているからこそ厄介なものだなと思ってしまうのはこの女……


 鳳凰院真希ほうおういんまきという女なのだ。


「今失礼なこと思った?」


「いや?」


「そう、それなら生徒会委員として仕事してくださる?」


「それは断る、それに今日姉が来るし」


「ああ、それなら……帰っていいわよ」


「これはこれは、どうも」


 はぁ……ほんとに呆れるほどどこまでも困る女だこと……

 というか、こいつにもとある因縁があるがどうしてこんなにも堂々と過ごしているからこそ恐ろしい。


 いや、女というのは恐ろしすぎる。


 恐ろしいからこそ女というのはやばいのかもしれない……って、世の中の女に殺されそうな言い方だったな……危ない危ない。


 さて、僕は生徒会室から出て帰路に帰る準備をする。半ば強引に生徒会室に連れてかれたから荷物などは教室に全て置きっぱなしにしていたのだ。


「ふぅ……ほんとに今日も大変な一日だったな……どうして僕の周りは騒がしい奴らしか居ないのか。」


 生徒会副委員長として、自覚は無いのかとか言うが……こんな不真面目な人間を生徒会副委員長にしたのがいけないのだろうと言ってはいけないのだろうか。


 なんで僕はこんなにもモテるのか……不思議すぎる。

 でも、モテると言った割には……


 どうしてだ、あんなにも女子が僕にはすりついてくるのに肝心な告白をすると物凄い勢いで振ってくるのはほんとに失礼なのではないかと思うけど……


「はぁあ……ほんとにこの世は理不尽なのではないだろうか」


「理不尽と思ったらこの世はもっと理不尽だよ?」


 扉の方を見ると、凪沙が扉の端を押さえてカッコつけて立っていた。

 ほんとに……こういう所はかっこいいと思ってしまうのはこいつのいいところなのか悪いところなのか……


 分からないところではあるけれど少なくともこいつはそういうことを考えずにやっているから天然なのだろうな。


「凪沙か……何のためにここに来たのか知らないけど理不尽だからこそこの世界は回っているんじゃないかと思うが……」


「それはそれで、いいじゃないか。私はこの世界が理不尽でも、それに私は龍馬と帰るためにここに来たんだけど?」


「やっぱり……一人で帰らす選択肢は?」


「無いに決まってるでしょ?」


「ですよね……」


 それを笑顔で言われるとは思わなかった……まあ、僕は二人でも問題は無いけどさ……


「それじゃあ帰るか?」


「うん!」


「はぁ……」


 まあこれも……いい日常の終わりっていう人間は多いからこそわかってないヤツらが多いのだろうなぁ……


 理解してくれ……

 僕は振られた女が付きまとってくるんだぞ?振った後に、ニコニコで、しかもそれを妹にも把握されてるとか地獄すぎないか?


「いいじゃないか……知られていても。それに妹さんにも告白されたんでしょ?」


「それは……それに、あいつとは血が繋がってないことをいいことに……」


「まあまあ、別にいいじゃないか」


「はぁ……僕がどういうことをされてるか苦労を知らずに……」


「まあ、傍から見れば凄い妹さんや色んな人に好かれてる高スペックな一般男子高校生だからねぇ……」


 それを言われると……もう何も言えなくなってしまうのだが……

 まあとりあえず……僕はそうだと思われたとしても……嫌なんだよなぁそういう風に見られてるなんて。


 いや、そうウジウジ思ってたから多分だけど告白しても振られたのかな?

 そうなのだとしたらそれはそれで嫌すぎる……

 告白したらはい嬉しいですと言って付き合ってもらいたいくらいだ。


「絶対自分は悪くないって思ってるでしょ」


「なっ、なぜそれを」


「それだから振られるんだよ」


「うるせぇ……」


 それなら……なんで僕を振ったのさ。


「それは、まだ友達として居たいと思ったからだよ」


「あ」


 あ……あ……あ!!

 言ってしまった……言ってしまった?!いや、なんで言ったの?!口から漏れてしまったのか?!うっかり……

 いや、い、いつものように思考を読まれたのか?!

 それなのだしたらどうして的確なことを?!


 いや、ま、ま、ま、まさか……!!


 この僕が失態を犯したというのか!!


「はぁ……まあ、こういうところが好きなんだけどさ」


「え?なんか言った?」


「なんでもなーい、お腹すいちゃったな」


「あ?え?あ、ああそうだなそろそろ家だし飯の時間か」


「そうだね、そうだっ!家行っていい? 」


「家?家か……」


 そういえば今日はあのめんどくさい姉が来るしな……またからかわれるのが嫌すぎるし……

 だけど、ここで来ないようにさせるのはそれはそれで酷い気がするし……


 まあ、凪沙とは一緒に居たいし……でも因縁の相手だし……

 だけど、ここで嫌われるのはそれはそれで嫌だからな……


「ほら、どうするのさ」


「それは……来てよ……家に」


「……っ」


「?」


 なんか、問題があったのか?

 分からないけど、震えてる感じがするのだが……どうしたんだろう。

 いや、なんか変なこと言ってしまったのか?


「変なこと……言った訳じゃないけど……」


「それじゃ……」


「ま、まあ……その、家には行くけど……とりあえず!またね!」


 そう言い、凪沙はそそくさと家の方向へといなくなってしまった。

 僕も凪沙の後ろ姿が見えなくなったから歩き出す。

 この二差路左に行ったすぐ側にあるから、ほんとに合理的な場所だ。


 まあ……凪沙の事はなにか酷いことを言ってしまったのなら家に来てくれたときに謝るか……そうしないと何か関係が悪化しそうで嫌だし……


 でも……どうしてあいつのためなんかにそこまでしなきゃいけないんだ?

 いや、そう思うからいけないのか……

 だからこそ……気持ちを改めなきゃいけないんだろうな。


 反省点と……自分の悪い点を見つめ直さなきゃな……って……


「ん?」


 僕の家の目の前にピンク髪の女の人がいる……

 よく見ると、茶色いチェックのスカートに赤いカーディガンに青い蝶ネクタイと……うちの生徒が着ているものではないみたいだ。


 でも、どうして僕の家の前にこんなよく分からない子がいるんだ?

 おかしい……なにかした訳でもないのに……


 そう考えていると……


「あなた、久遠龍馬くん?」


「は、はいそうですけどって近っ……」


「ふーん……あなたが」


 そう言うと、なんか……ジロジロと見られている気がする……

 これは……何か意味があることなのか?

 いや、なんで僕のことをこうして見つめているんだ?


 なんかいいことがある訳でもないというのに……


「久遠凌斗って、知ってる?」


「はい?」


「知らない……か」


「い、いえ!凌斗は……久遠家の現当主なので知ってます……けど」


「へぇ、そうなんだ」


「な、なんですか?」


「ふふっ、なんでもない」


 な、なんか……ふわふわしてるな。

 可愛いというか……なんというか……でも、何かおっとりしてるって訳でもないのに何か頭がおかしくなりそうな……そんな感じがする。


 だけど、何か……解されるような隠してるような……そんな感じがした。

 だから、僕は……そんな気持ちに当てられないために居なくなろうとした。


 けど……


「待って」


「な、なんですか……腕を、掴まないでください……!」


「だって、いいじゃん可愛いんだから」


「?!」


「ふふ」


 そう、言われると……

 僕は……キスをされた……

 初対面なのに……どうしてそんなことをしたのか、されたのかすらよく分かってない……


 どうして……こんなことを……


 そしてこの女の子は……何者なんだ……?


「っは……あなた、ほんとに面白いね」


「はぁ……はぁ……は、はぁ」


「また会おうね、久遠龍馬くん」


 そう言うと、その女の子はいなくなってしまった。

 僕は家に入るまでの間……しばらく動けなかった。


 だって、キスされるだなんて……思いもしなかったのだから。



 to be continued

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