2-4

「なんだったんだ・・・今のは」

止まることのないエスカレーターの上で、彼は通り過ぎていく少女の部屋を見つめていた。

暗い和室はいつしか、見飽きたと思っていた白い世界へと姿を戻していた。

「たちの悪い冗談だ」

そう呟くと、彼は深呼吸をした。

大きくゆっくり息を吸って、ゆっくりと息を吐く。

その動作を繰り返せば、戸惑いを隠せない心拍数が徐々に穏やかになっていく。

「・・・せっかく思い出した初恋を汚された気分だ」

やれやれと首を横に振り、この映像を作り出した誰かに心の中で文句を言った。

「あの程度の悪戯で彼女があそこまで追い詰められる訳がないだろう」

甘く照れくさかった思い出を脚色されたことに不満を覚えながら、彼は白い世界の先をまっすぐと見つめていた。

何もない白い世界。

どこへ行くのかも分からないエスカレーター。

そのエスカレーターが平坦になり、今度は下りへと姿を変えた。

「なんだ、上るだけではないのか」

どうやらエスカレーターの道は真っ直ぐではないらしい。

「いつまで立っていれば良いのか。さすがに立ちっぱなしは疲れるんだがな」

手すりに右手を乗せ、身体を預けるように少し体重を移動させると彼は大きな欠伸をした。

先程の少女の映像は物語としては興味深かったが、脚色が過ぎる。

「そういえば彼女は元気なんだろうか」

同じ年代なのだ。

もしかしたらあの世で再会できるかもしれない。

「だとしたら嬉しいんだがな」

目を細め、再会したときの話題を考えている彼をエスカレーターは静かに運んでいく。

下りの先、白い世界が再びガラスの破片となりきらきらと輝き落ちる。


そこは彼が通っていた中高一貫の男子校だった。

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