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少女は空き地の大きな木の側に座り、地面に絵を描いていた。
前髪と肩まである髪をぱつんと切り揃えた、可愛らしい少女。
「あの子は」
懐かしさに思わず、彼の口元は綻んだ。
彼は少女のことを知っている。
少年時代、同じクラスにいた物静かで控えめな可愛らしい少女だった。
動きも可憐で同じクラスにいた人気の少女よりも、彼にはその少女の方が魅力的だった。
「昔は話しかける勇気がなくて、しょうもない悪戯ばかりをよくしていたな」
少女の苦手な虫を近づけたり、照れくさくて馬鹿だのブスだの言っていた気がする。
大人になった今では、本当に子供だったなと笑えてしまえる程の小さな悪戯。
そういえばと彼は、景色を見ながら思い出した。
この空き地で少女が絵を描いていた時、丁度、この景色の時だった。
「話しかけたくて、話題がなくて」
彼がそう呟いた時、一人の少年が少女に近づいた。
何か話しかけるわけでも無く、側に立ち、少年は暫く少女の頭上に影を落としていた。
「何か用?」
少女が顔を上げ、首を傾げた。
普段から悪戯ばかりしていたからか、その表情に歓迎の色は見えない。
それに気がついていないのか、少年は話しかけられたことでテンションが上がったのだろう。
突然、少女が描いていた絵を踏み消した。
「へったくそな絵描くなよ!皆に迷惑だろ!」
大きな声でそう叫べば、少年と一緒に遊んでいた少年達がそうだそうだとはしゃぎ始めた。
踏み消された絵を呆然と見つめ、少年達の声を聞きながら少女は静かに立ち上がった。
何かを言うわけでも無く、瞳には涙を浮かべ、口元をきつく締め、そのまま走り去っていく。
その後ろ姿を見ながら少年は首を傾げた。
「これくらいで泣くなんて女って情けないよなー」
大声で少女に聞こえるように叫ぶと、少年達が笑い出した。
その声を聞きながら、エスカレーターは止まることなく動いていく。
「本当に子供ってのは照れ隠しが過ぎるよなー」
懐かしさで目元を細め、かつての甘酸っぱい気持ちを思いだしていると、景色が一変した。
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