2-2

少女は空き地の大きな木の側に座り、地面に絵を描いていた。

前髪と肩まである髪をぱつんと切り揃えた、可愛らしい少女。

「あの子は」

懐かしさに思わず、彼の口元は綻んだ。

彼は少女のことを知っている。

少年時代、同じクラスにいた物静かで控えめな可愛らしい少女だった。

動きも可憐で同じクラスにいた人気の少女よりも、彼にはその少女の方が魅力的だった。

「昔は話しかける勇気がなくて、しょうもない悪戯ばかりをよくしていたな」

少女の苦手な虫を近づけたり、照れくさくて馬鹿だのブスだの言っていた気がする。

大人になった今では、本当に子供だったなと笑えてしまえる程の小さな悪戯。

そういえばと彼は、景色を見ながら思い出した。

この空き地で少女が絵を描いていた時、丁度、この景色の時だった。

「話しかけたくて、話題がなくて」

彼がそう呟いた時、一人の少年が少女に近づいた。

何か話しかけるわけでも無く、側に立ち、少年は暫く少女の頭上に影を落としていた。

「何か用?」

少女が顔を上げ、首を傾げた。

普段から悪戯ばかりしていたからか、その表情に歓迎の色は見えない。

それに気がついていないのか、少年は話しかけられたことでテンションが上がったのだろう。

突然、少女が描いていた絵を踏み消した。

「へったくそな絵描くなよ!皆に迷惑だろ!」

大きな声でそう叫べば、少年と一緒に遊んでいた少年達がそうだそうだとはしゃぎ始めた。

踏み消された絵を呆然と見つめ、少年達の声を聞きながら少女は静かに立ち上がった。

何かを言うわけでも無く、瞳には涙を浮かべ、口元をきつく締め、そのまま走り去っていく。

その後ろ姿を見ながら少年は首を傾げた。

「これくらいで泣くなんて女って情けないよなー」

大声で少女に聞こえるように叫ぶと、少年達が笑い出した。


その声を聞きながら、エスカレーターは止まることなく動いていく。

「本当に子供ってのは照れ隠しが過ぎるよなー」

懐かしさで目元を細め、かつての甘酸っぱい気持ちを思いだしていると、景色が一変した。

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