第4話-1 お寿司

 車に揺られている間、信号待ちになるたびに、逃げ出してやろうか、と小春は想像した。それは、やってはいけないことをやりたくなる衝動で、それは、たしか何とか、という名称が付いていたはずだ、と別のことに意識を向けようとする。


 そんなことをしているうちに、葬儀場に車が到着した。奥にある親族の控室へ入る。そこには、亡くなったおじさんの奥さん、そしてその長男――小春はその人をニカおじさんと呼んでいた――、義姉の夫にあたる、父の従弟がいた。彼らに、わたしはごく簡潔な挨拶をした。そして、早く白い服を着ている状態をどうにかしたく、消え入りそうな声で「どこかでお着替えしてよろしいでしょうか」と伺う。通された脱衣所で、わたしは手早く、不慣れな儀式服へと身を変える。人生で初めて袖を通す喪服は、驚くほど身体にぴったりと合った。太ったら着られなくなってしまうだろうな、と、どうでもいいことを考え、そして、それでいいかな、と思った。


 着替えを終え、再び親戚がいる控室へ戻る。そこには、おじさんの奥さん、ニカおじさん、その奥さんと、わたしを乗せてきた車を運転してくれた従兄にあたる男の子、そして、おじさんたちの長女――先ほどまで車に同乗していたおばさん――、その夫の、六人が座っていた。控室は、少々手狭だった。


 ガラガラと、引き戸が引かれる音がした。振り返ると、おばさんの次男が、家族を連れて部屋に入ってきていた。結婚したのか、と小春は、息を止めて、数秒、心臓が動くのを忘れていた。かわいらしい嫁さんと、小学校低学年くらいに見える、二人の子供がいた。


 次男家族は自己紹介もそこそこに、ニカおじさんと、おばさんと、夕飯の話をしている。子供たちは、退屈を持て余し、遊びたい、と元気いっぱいに母親に駄々を捏ねている。


 小春は、子供が苦手だった。予測不可能で、言葉が通じない。極めて扱いが難しい。ぼんやりと座っていると、子供たちがこちらのほうにやってきて、小春に遊びを要求した。ちょうど手持ち無沙汰だったこともあり、苦手な子供たちと、少しだけ遊んでみようと試みる。自前のノートを取り出し、お絵描きを始めた。子供たちは、集中し始めると、驚くほど静かなものだった。

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