その4 ダンジョンに帰って来たなぁ

3日後。

ゼナムさんが護衛にと、二人のハンターを紹介してくれた。


「ども、先日ぶりですリーゼさん」


「私も、世話になったぜ」


「ふふ、まさかお二人が呼ばれるなんてね」


やってきたのは、僕より少し年上くらいのやっぱりガタイのいい男性。

もう一人は活発そうな姿をした赤髪の同年代くらいの女性だった。

リーゼさんともお知り合いなのかな。


「はじめまして、レーンといいます」


「ルミナです」


「あぁ、聞いてるぜ。

 なんかセーラみたいな女の子が居るって聞いてたが、あんたがそうか」


「え、セーラ??」


誰だろう?

この人たちの仲間の人かな?

リーゼさんがそういえばそうねぇ、なんて笑ってるけど。


「貴方たちなら安心ね。

 この子たちを護衛してあげて頂戴」


「わかってる」


「事情も聞いているかしら?」


「あー、全部じゃないが一応。

 そっちのレーンっつったっけか。

 お前さんが元召喚者で色々ヒドい目に会ってきたってことくらいだが」


「あとダンジョン管理人っつったっけか?

 かわったクラスがあるもんだなって思ったが」


え。クラス?

それに管理人?

いや、間違えてないけど・・・

なんか理解のされ方があさっての方向になってるような。


「とりあえず大丈夫そうね。

 馬車はこちらで手配してあるから、二人をお願いします」


「了解した。

 レフィもそれでいいか?」


「あぁ、んじゃ早速行くとしようか」



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馬車で移動中にお二人の事を聞きました。


レフィという女性戦士の方、本名はレフィセス。

『リ・デスティ』というパーティを組んでいて、

現在はなにやら今後のための準備期間ということで、しばらく活動ができなくなってるらしく、

ゼナムさんの頼みを快く受け入れてくれたそうです。


次に、バニアという男性戦士の方。

彼はソロでハンター稼業を営んでいて、5級ハンターだそうです。

どれくらいすごいのかピンと来ないんですけど、

現在王都で活動しているハンターのなかでは1,2位を争うくらいの腕前だそうです。

なお本人は俺より凄い奴は幾らでもいると言ってたけど。


それと驚いたのが、『リ・デスティ』のリーダーを務めているセーラという方が、

城外の森を所有する土地持ちであること。

テイマーであり、

フォレストオーク、ゼスミアキャットらを従えている・・・というか友達だそうです。

オークと聞くと凶暴で力も強い凶悪なモンスターを想像してしまうのだけど、

どうもそのフォレストオークという種は気が弱く、城外の森近辺の人たちとも交流を持っているそうです。


なにそれ1回見てみたい。


とまぁ色々興味深い話を聞きながら、

お返しにと僕も自分の現在の状況を全部話しました。

ダンジョンマスターという立ち位置にいること。

身体的には人ではなく、マナを供給することで活動できること。


二人とも神妙な顔をして聞いていたけど、

そのあとレフィさんが「お前もなかなか大変だなぁ」と僕の背中をばしばしと叩いて来たり。


あっさり・・・というほどでもないけど、

受け入れてくれたことが不思議だった。


・・・のだけど、

なんか納得も出来てしまっていた。


はじめにちらっと出ていた、ルミナがお二人の・・・というか

レフィさんのパーティリーダーのセーラさんに似ているという話を思い出して。

ルミナも僕のことを聞いてからも変わらずにずっと庇い続けてくれていたから、

それなら、そんなルミナに似た人のお知り合いだというなら、

僕を拒絶とか距離を置くこともなさそうだなぁ、って。


なんだか、僕の理解者、味方が増えたみたいでうれしかった。




そして馬車はゼスミア平原のダンジョン前に到着する。


「ふう、それでどうする?

 これで任務終了か?それともダンジョン最深部まで同行したほうがいいか?」


「えぇと・・・」


どうすべきか考えていると、

ひょいっと手を上げたルミナが


「折角だからダンジョンコアさんにも挨拶したいです!」


などと言い始めた。


「えぇ・・・?」


「挨拶・・・挨拶?」


お二人が各々に変な顔をしている。

多分僕も何言ってるんだこの子みたいな顔してると思う。


「このダンジョンそもそもコアねーだろ。

 ボス倒しても宝が出るだけでなんもなかったぜ?」


「・・・え」


そういえば。


「あの、ちょっとダンジョンに入ってもらっていいですか?」


「ん?

 いや別にかまわんが・・・」


僕達は4人でダンジョン内部へと足を踏み入れる。

直後。


<おかえりなさいマスター。

 マナの獲得を確認。

 抽出量、適量。人種と判明。数、3>



やっぱり!


「どうした?本当に入るだけなのか?立ち止まったりして」


「あの、実は・・・」






僕は、今頭に直接声が届いたことを告げた。

数3、というのは多分、ルミナ、レフィさん、バニアさんのこと。

そして・・・。


「おかえりなさいマスター、か」


マスターというのは間違いなく僕のこと。

つまり今までの声は・・・。


「報告、だったんだ」


このダンジョンの目的、それが少しずつ理解させられていく。

多分ダンジョンに戻ったことで、ダンジョンの役割とかそういうのが

頭に直接少しずつ流れ込んでいるんだろうと、なんとなく理解した。


いきなり全部の情報が入ってきたら、

絶対混乱しちゃうから。


だから、いきなり逃げ出した僕には必要最低限の情報しかなかったんだとおもう。


今はこのダンジョンの目的、

運営方法、

そして、存在理由がどんどん頭に叩き込まれていた。


「とりあえず最奥まで移動します?

 僕がいるので罠もダンジョンモンスターも無効化できるので」


「無効化ってお前・・・すげーなぁ」


「それって報酬貰い放題じゃね?」


「あ、報酬自体は行動に応じて得られるので、

 罠もモンスターも何も倒さずに最奥に到着しても何も出ませんよ」


「チッ、そんなにうまかねぇか・・・っていうかそこまで判るのかよ」


「僕、ダンジョンマスターらしいので・・・」


どんどん知らなかったはずの知識が流れ込んでくる。

そして。


「あ。ダンジョンって移設までできるんだ」


「な、なに、移設だと!?」


ダンジョンを望んだ場所に移動させることができるらしい。

ただ、ダンジョンマスターというのが出来たのは僕がはじめてのようで、

他のダンジョンでは機能はあっても実行はされたことがないみたいだけど。

なにせどこになにがあるのかなんて、観察していない以上分からないし。


「あ。ちなみに最奥いかなくても大丈夫ですね。

 ここで問題ないですよ」


どうやらダンジョンにさえ居ればいいらしい。

わざわざ最奥まで移動しなくても、ダンジョンコアと僕はやり取りができるみたい。


「やべぇ、俺だけじゃ理解し切れねぇ」


「ユキトの奴連れてくれば良かったな。

 アイツなら色々理解できただろうし」


二人が頭を抱えながら情報を整理し始めてるみたいだけど・・・。

とりあえず落ち着ける場所があったほうがいいかな?


「えーと・・・」


僕は入口すぐの側面に手をかざし、部屋を作った。


「こんなところで立ち話もなんですし、

 ここに応接間みたいなの今作ったので、こちらで話しますか」


「おう・・せつ・・・ま?」


「いま・・・つくった・・・?」


「あ、じゃあさっそくお邪魔しますね!」


「うん」


お二人はまたまた茫然としてるけど、

ルミナは嬉しそうに部屋に入って行った。


けどすぐ出てきて。


「レーンさん、椅子もなにもないです」


「あー、流石にそういうのは作れないから・・・

 とりあえず凹凸で椅子だけでも作ろうか」


苦笑しながら僕も応接間に入る。

うん、石造りのちょっとした部屋っていうだけで、なにもない。

部屋の中央に四角いでっぱりを作り、そこに腰かけられるようにする。


「背もたれもあったほうがいいかな」


と、でっぱりの後ろ側をもう少し高い石にして、

石の椅子が出来上がる。むしろベンチかな?


「凄いなぁ。

 こんなふうに色々できちゃうんだね」


「流石に材木が作れるわけじゃないから、

 椅子とかテーブルとかは持ち込まないといけないけどね」


そんな風に話してると、茫然としてた二人も中に入ってくる。


「いきなり部屋を作って、椅子っぽいなにかも作るか・・・」


「どんどん出来る事が分かってきます。

 色々と応用も効きそうですよ」


「いや、まぁ、いいんだけどよ・・・」


どこか遠い目をしながら、バニアさんが椅子に腰かける。

レフィさんはきょろきょろと色々と見ながらぺたぺた壁をさわりつつ、

落ち着かない感じに椅子に座る。


ルミナはあんま動じてない。

さっきからすごいとかいいなぁとか連呼してる。この子大物になるのでは?


「まぁ、出来る事はだいたい分かった。

 それじゃあ俺のほうも、ゼナムが今このダンジョンについて考えていることを述べていくぜ」


「ダンジョンについて?」

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