蛇足でありますが、どうやらこの結婚は✕✕✕です。

音央とお

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私が育った場所は、閉鎖的で古いしきたりに囚われているような小さな町だった。


その町で一番の旧家と言われる舘端たちばな家に人智を超える現象が起き始めたのは70年ほど前だったという。

不幸が重なり一家離散の手前となった状況が一変し、富と繁栄がもたらされるようになっていく。それは不自然なほどで、当時の当主は狐に化かされでもしたのかと恐れ慄いたそうだ。


――ある時、当主の友人が5歳の子どもを連れて訪ねてきた。

その子どもは敷居を跨ぐと何もない場所に頭を下げたかと思えば、にこにこと笑いながらこう言ったそうだ。


「おにいさん、こんにちは」


もちろん周囲の大人たちは困惑した。

なんの冗談だと笑い飛ばそうともした。

しかし、子どもはずっと何かが見えているように振る舞った。


そして、「おにいさんがいれば、このいえはだいじょうぶなんだって」と言い出したことで、当主は古い言い伝えを思い出した。


それは怪異だとか妖怪だとか言われる存在で、住み着いた家に繁栄をもたらすのだという。しかし、その家を離れるとそれはそれは恐ろしいことが起きるとされる。


このことから「座敷童子」と言われる存在に近いことが分かるが、童子と呼ばれるような幼い姿ではない。

妖しく艷やかな美丈夫の形をしている。見た者を釘付けにさせるその様から、私は“魔性の男”と呼んでいる。


どうして私が明確にその姿を知っているかというと……


母親の腹の中にいる頃から、この不可思議な存在と契約結婚することになったから!!!


そう、大伯父が一族の安寧のために私を勝手に売りやがったのだ!末永く家に縛り付けておきたいからって!許せないっ!

このことは一生かけて恨もうと思う。




――これはそんな異質な夫婦の話である。

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