第18話 交流会②
ケースの中で中学生たちは驚愕した。大樹女子高校は非常に大きな組織だとは聞いていたが……
目の前にある壁はマンションのようだがただの校門の壁である。その奥にそびえている物これが校舎である。
「これ学校じゃねぇよ。ただの要塞だろこれは」
男子の一人がそう呟く。確かにそうだこんな所に攻め込もうものなら米軍だろうが壊滅するだろう。
校舎の窓辺には複数の巨人女子が集まっていた。
共通点は一つ。全員が男子たちを“覗き込むように”見下ろしている。全寮制の彼女たちも直接男子を見る機会は中々ない。
「わ……ほんとに小さい……」
「人形みたいなのに動いてる……」
彼女たちは完全に好奇の目を向けている。
彼らは気づく。この学校では男子が珍獣枠なのだと。
中庭には数人の巨人女子が待っていた。
一歩前に出たのは、高級制服に身を包んだ長髪の深雪お嬢様だ。
「ごきげんよう。あなた方が……本日の“交流対象”ですのね」
声は柔らかい。だが視線が完全に上からだ。
端で取り巻きらしい女子たちが話している。
「翔太様よりは大きいようですわ」
「でも小さいですわねぇ。杏花の指サイズですわ」
「小さいのですから当然でしょう」
「安心なさい。わたくし、踏みませんわ」
「踏まない”が前提なんですね……」
「ええ。最低限の礼儀ですもの。無論いい子にしていればですが」
深雪は扇子を軽く閉じる。
「そ、それで翔太は?」
尋ねる男子に少し離れていたところにいた麻衣が答える。
「ここよ」
そう言って手を退けると翔太が出て来たのだった。
「しょ、翔太!生きてたのか!」
「うんおかげさまで」
つかの間の再会を喜ぶ間もなく交流会が始まったのだった。
中庭に設置された交流用スペース。僕たち男子は巨人用の机の上に並べられていた。今までを見ていたが怖すぎる……
「それで内容は椿が決めているのでしたわね」
「えぇまずは杏花が提案したことをします」
同級生たちは杏花と言う名前だけで震える。どれだけ怖い思いをしたのだろう。
「まずは力比べっす」
そこで一人、前に出た男子がいた。
僕の同級生健斗。
小森中で「怪力」と呼ばれていた運動部の男子だ。体力テストではいつも満点、僕より数倍強い男だ。
「……俺がやる」
「健斗……無理すんなよ」
「分かってる。でも……杏花とかいう女に何もしないまま圧倒されるのだけは、嫌だぜ」
「うんうんチャレンジャー精神は大切っすよ。しごきがい……じゃなかった」
杏花さんは腕を組み、ニヤッと笑う。
「まぁアタシがやってもいいっすけど。アタシこれでも運動部のレギュラーで通常の大きさだったとしても下手な男子ぐらいなら勝てるんスよね。それで不満が出るのも本意ではないっス。だから……」
杏花さんは視線を向ける。
深雪は一歩前へ。
「やれやれ仕方ないですわね」
ゆっくりと、机の上に人差し指を置く。
ドン……
指が置かれただけで、机全体がわずかに揺れる。
「この指を、動かしてごらんなさい。殿方ならできるはずですわ」
声は静か。挑発でも嘲笑でもない。
ただの事実確認だった。
健斗は歯を食いしばる。
「……行くぞ」
両手で深雪さんの指に取り付き、足を踏ん張る。
「うおおおおおお!!」
全力で押す。
空気が張り詰める。
でも動かない。
か弱い深雪さんの指は、一ミリも動かなかった。
「……っ、はぁ……はぁ……」
力を抜いた瞬間、健斗はその場に座り込む。
取り巻きの女子たちが覗き込む。
「あらあら弱いですわね」
「深雪様の指なんてほっそりしていて美しいというのに。彼らには大木なのかもしれませんわ」
「まぁこんなものですわね」
深雪さんは取り巻きを手で制してからこう告げた。
「これが“種族差”ですわ」
その言葉は冷たかったが突き放す様子は無かった。
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