白杖の牢獄から

@Takashi_H

第1章 愚者ぐしゃの木

(人間とは何かAI時代の戸口に立ちて)

東西トーザイ読者方

しゃしゃり出でたる盲(めし)い人

哲学談義はじめんと凡俗やからながら

2023年末全盲の獄につながれたり

読み書き歩行ままならず映画 演劇 展覧会

花やもみじも山や雲

視野に失せたる悲しさは

獄舎に囚われ白壁に囲われた身の如し

専らにするは思索ごと

われらどこから来りてどこへ行く

人なら一度は思うこと

浅学非才を身に負いながら

名だたる学者手玉取り

哲学談義始めんと

二〇二三年(如月)のいま八十六にて

一九三七年 日中戦争起りし歳に生まれ

皇居遥拝天皇バンザイ、戦に励む世なりける

戦後は自由民主主義

その価値転換の大きさは、子供心に猜疑心

二-三〇代は文学青年

仲間集めて同人誌

小説多数書き散らし

「分身」と名付けて修行する

早稲田文学 三田文学に書き出す頃

やがて芽も出るかと思いしに

たつきに追われてしぼみけり

非才文学青年の成れの果て

同人誌たちは今いずこ

五十の坂にかかりし頃

哲学なるものやってきて

日本講談哲学の不甲斐なさに憤慨し

日本の主体化求めんと

哲学書物読み漁り

思いし事を自費出版

『日本の黙示思想』『人類精神史批判』『日本は近代思想をやり直せ』

『侘び寂びの哲学』

費用は〆て一千萬

妻道楽過ぎるとおかんむり

なだめてさらに新聞発行

「鎌倉評論」というミニコミ紙

A4大で四ページ 五〇〇~二千部をポスティング

取材 執筆 編集 割り付け 印刷 配布すべて自分の一人芝居

市政評論と文化評論、中身は辛辣 武勇伝多数

六十六号で止みにけり

なお、懲りもせず投資話

巨額を投じて水の泡

尾羽打ち枯らす年の暮れ

ふと気がつけば八十路

眼病積もりて視野霞む

思いも霞む獄舎の中

この思いを吐き出さんと

まだある余生をいかに生きん

つもり積もりし思索の山

録音機用いて書きはじむ

無事に最後に行きつくか


1.いわれなく獄舎に囚われ盲しい人

       白壁の中で生をこねるかな

2.人おろか戦のニュース世に溢れ

       惨酷が日常となるこの時代

3.人類の繁栄か滅亡かは塀の上

       その危うさを生きる愚かさ

4.存在とは いまに戯れ夢を見る

       その在ることの喜びの中

5.柿食えば口に吹き込む秋の風

       思索虚しく散りさんじける

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