夏のファンタジー短編集ですぞ

ポンポコ

第1話妖精の森の泉にて

妖精の森、今は夏である。


この森の奥深くにある泉にポカラというぬしが住んでいた。

このぬし、いつも泉の真ん中でラッコのように、仰向けになって、プカプカ浮いている。

 そして、いつも歌を歌っている。

 「ぽーからから、ぽーからから♬」。

ポカラ、体全体が薄い白い毛でおおわれている、まぁ、簡単にいえばちっちゃいモコモコのアザラシのような感じの見た目。

 今日もポカラはのんきに泉に浮かんで、歌を歌っている。


 と、そこに一人のちっちゃい妖精が現れた。

 この妖精、もう定番の羽が生えて、緑の帽子とかわいらしい服を着ている。


「ポカラ~、お願いがあるの~」。

ちっちゃい妖精は泉の岸からポカラに話しかけた。

「ああ、妖精Aちゃん、久しぶり~。お願い聞いてあげてもいいけど、その代わりになにかちょうだい~」。

「ポカラ、モコモコの実をあげるから、お願い聞いてくれる?」

「ああ、モコモコの実はおいしいよね。いいよ聞いてあげる~」。

妖精、泉の岸から、パタパタと飛んでいき、ポカラのそばで空中停止をする。

「ポカラ、実は人間の魔法使いが独り、この妖精の森にやってきたの。その人、森の結界を破って入ってこれるような、かなりの魔法の使い手らしいの。

 それでね、妖精ハチミツをよこせって言ってきたの。私たちの一番大切なものは渡せないわ。でもね、渡さないと、妖精たちを捕まえて、人間の街で売りさばくというのよ。怖いわよね~。

 だから、ポカラにその魔法使いを追い払ってほしいの。お願い」。


ポカラはそれを聞くと、うんうんと頷いて言った。

「うん、いいよ。そんな魔法使いがこの森に来たら困るもんね。じゃあ、ちょっと行って退治してくるよ、じゃあね」。

と言うと、ポカラは魔法使いのもとに瞬間移動した。


ポカラは魔法使いのもとに突然現れた。

「初めまして、あんたが魔法使いだね?あまりみんなに迷惑かけたらダメダメだよ」

突然ポカラが現れて、魔法使いはびっくりして、のけぞった。

 この魔法使い、実は女性でけっこうまだ若い。

 魔法で作られた魔法使いっぽい法衣と三角帽子をかぶって杖を持っている。

「うわわわっ、なんなの、なんなの?あんた誰?」

魔法使いはちょっとビビると、ポカラを大きな目で凝視した。

「ボク、ポカラだよ。魔法使いさん、頼むからこの森から出てってくれないかな?もし、出ていかないと言うのなら、痛い目にあうよ、ボク、こう見えて強いからね」。

とポカラは言うと「ぽーからから、ぽーからから♬」と歌いだした。

 魔法使いはポカラを見ると、見た目がモコモコのアザラシのようなので、かなり油断して安心した。

 「なんだ~、お前、ただのモコモコのアザラシじゃないか。うちの魔法でボコボコにされたくなかったら、おとなしく帰りなよ。さもないと痛い目にあうよ」。

「え~、魔法使いさん、そんなに油断していると危ないよ、ボク強いし」。

そう言うと、ポカラは手の指に意識を集中して、魔法を唱えた。


世の森羅万象を司る神よ

我のこの指に大いなる力を宿し

我とこの森の住人に平和を与えたまえ

「フットバーン!」

とポカラが叫ぶと同時にポカラの指から稲妻が走り、魔法使いを直撃した。

魔法使い、その雷光に包まれると、どど~ん、と文字通り、遠くへ吹っ飛んだ。

「あ~れ~~~~~~」。

ポカラ、優しいので魔法使いは遠くの川に無事着水する予定、まぁ、死なないよ。


ポカラと魔法使いのやり取りを木の陰からうかがっていた、小さな妖精たちが、いっせいにどんどんわらわらと出てきた。

「ポカラ~、ありがとう~」

「ポカラはやっぱり強いね~」

「ポカラは頼りになるわ~、普段は役にたたないけど~」

「ぱちぱちぱちぱち♬」

などなど、もう妖精たちはポカラを絶賛した。


「う~ん、ボク魔法を使うと眠くなるんだよ。みんなこれで平和だね。じゃあ、ボク帰って寝ることにするよ、バイバイ」

と言うとポカラ、瞬間移動で森の泉へと帰ってきた。


ポカラ、泉のそばでタオルケットをはおって横になり、ぐーすか眠った。

やっぱり魔法を使うと眠くなるのよね。


ポカラ、いつもは泉にプカプカ浮かんで歌を歌っているだけ。

まぁ、たまには活躍するけど、ポカラ、忙しいのは大嫌いなのだった。


(終)

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