最強賢者は天然無双

天宮楓呀

第1話 誕生

天帝歴555年5月5日。この日、サレート王国の片隅にあるのどかな村のある家で、男の赤ん坊が誕生した。よく晴れた、風の気持ちいい昼下がりだった。

男の子はフェイと名付けられ、温和な両親と親切な村人達の手で育てられた。



フェイはほとんど泣かない赤ん坊だった。両親は少しの心配をしながらも、手がかからなくて助かると野良仕事をしながら世話をしていた。


ある日、フェイの揺り籠を畑の近くに置いたまま両親が野菜の収穫をしている最中に、揺り籠に近付く影があった。


 ――鷲だ。


両親が気付いて悲鳴をあげながら駆け寄り始めた時にはもう、鷲は揺り籠に到達していた。


無垢な赤子の命が無惨に失われた。父母どちらもがそう思った。


 けれど。


揺り籠からはフェイの笑う声が聞こえ、鷲は揺り籠の端にとまり体を揺すっていた。


「……!?」


何が起きたのか、両親にはわからなかった。ただ、息子の命が助かったことに安堵して、母は涙を流した。



2歳の時には、川を覗き込んでいてバランスを崩して川に落ちた。まだ泳げないフェイは溺れると思われたが、水は柔らかくフェイを受け止めると彼の周りからなくなり、ケガをすることも濡れ鼠になることもなかった。


3歳の時には、強風で飛んできた枝がフェイの前で止まって落ちた。

その他にもフェイが危ない目に遭いそうになると、決まって不思議なことが起きた。


そして5歳になると、フェイはその『不思議なこと』を意図的に起こすことができるようになっていた。


それを利用して洗濯物を早く乾かしたり、料理の火加減を調整したりと家事を手伝ったため、両親はその現象がどうして起こせるのかわからないながらも、息子の成長と喜んだ。

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