第6話 星空ナイト
ふと仁を見ると下を向き震えている、まさか喉に詰まった⁈と焦る。
「お兄ちゃん、どうしたの?大丈夫?苦しい?」と仁の袖を引っ張り確認する。
「ボ、ボク、こんなに楽しいの初めてだ!」と身体を震わせ笑っていた。
葵の妄想世界『猫の転移者と地の果てにいる』という設定に、仁もいつのまにか引き込まれていた。
その様子にホッとする葵。
ふと仁が「サンドイッチとこのドリンク合うな!葵タンのセレクト最高!」と笑顔で褒めてくれた。
普段のクールな姿からは想像できない柔らかな笑顔に、カワイイなと見惚れていると急に照明が変わり星空が映し出された。無数の星がシャンデリアと共鳴しキラキラと輝いている。
「今夜は星空ナイトです!みなさんで星座を探しながら煌めく夜を楽しみましょう!」とボーイの声が聞こえ、テーブルに星型の琥珀糖が配られた。
ざわめく店内で、葵は仁の手に自分の手をそっと重ね、「お兄ちゃん、今夜は星が綺麗だね。女神様が私たちに星を落としてくれたよ。」と、琥珀糖を仁の口元へ運び、仁はニヤけながら琥珀糖を口に含んだ。
地の果てにいる自分たちだけの世界に入り込んでいた。
突然、仁が思いついたようにニヤリとし「実はオニイタマはアイテムボックス持ちなんだぜ!好きなデザートを選びな!」と効果音をつけて大袈裟にメニューを広げた。
「お兄ちゃん、アイテムボックス持ってるの?宝箱覗いているみたい!ドキドキする。」と言いながらメニューを覗いた。
フルーツ盛り合わせ3万円⁈葵は自分の感覚と違いすぎるメニューにたじろぎ、一番安いアイスクリームを指差した。
「え?これでいいの?」と不思議そうな顔をする仁に「うん、一緒に食べよ!」とスプーンを二つ用意するようボーイにお願いした。
二人でアイスクリームを食べ合いながら、こんなところにいたら金銭感覚がおかしくなる、今日で辞めようと葵は決意した。
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