昔一緒にゲームやってた友達が、世界一位になってた件

鳥野 餅

第1話

 昔、一度飽きてアンインストールしたゲームをまた無性にやりたくなる時ってあるよね。


 今の俺、神崎かんざき蓮也れんやは絶賛そういう状態である。


 というわけでPC開いて、ゲームストア開いて、ログインして──2年くらい前まで死ぬほどやってたバトルロワイヤルFPSを検索し、再インストールをポチッとな。


 で、ダウンロードが始まったんだが……。


 予測時間:30分。


 いや長ぇわ。


 最初の5分くらいは懐かしいBGMを聴いたり、色々変わったUIを見たりしてノスタルジーに浸ってたけど、10分経ったあたりで飽きた。 


 で、スマホいじりながら暇を潰してるうちに、よく一緒にパーティ組んでた奴らのことを突然思い出した。


「……そういえばあいつら、まだこのゲームやってんのかな。やってたらまた一緒にパーティ組んでやるか。多分足手纏いにしかならんけど」


 てな感じで残ってた5人くらいのゲームグループに連絡。


『へいクソ野郎共。今から復帰するけど、パーティ組んでくれる神様はいますか?』


sh1noしの『お、なら久々に一緒にやりますか』


 マジで居ましたわ。ちなみに俺とコイツ、つまりsh1noとは、9年前から俺がゲームをやめた時まで、基本予定が合ってたらずっとパーティを組むくらいの付き合いである。


『お、そっちも復帰か?』


sh1no『NO、今も毎日12時間やってるぜ』


『やりすぎだろ』


 そんな雑談を挟みつつダウンロードも終わりさっそく通話を繋いで、マッチへGO!……とは行かず一旦訓練場で練習。流石に復帰したてとはいえいきなり戦犯になるのはプライドが許さなかった。


 で、2年ぶりに動かした結果、視点はグルングルン、エイムはガッバガバ。


 こんな状態で戦ったら間違いなく戦犯確定コース。いきなりマッチング開始しようとしなかった自分の判断を褒めてやりたいところだ。


「ちょ、俺昔こんな速さでやってたか? 感度高すぎて引くんですけど」


『おじいちゃん……やめた方がいいんじゃない?』


「誰がおじいちゃんじゃ。まだ21の大学生だわ」


 そんなやりとりをしつつ、感度調整が終わり、軽く感覚を取り戻すために訓練場でタイマン。ルールは単純。先に10キル取ったほうの勝ち。


 ……で、結果は。舐めプされながら3:10でボロ負け。


 いや、サービス開始から今までずっとやって来てる奴に復帰直後で3キルもできたんだから、むしろ褒めてほしい。てか褒めろ。


 昔と変わらない、いやむしろ昔よりえげつないエイム力とキャラコンを見せてきたsh1noに苦笑しながら、ひとまずデュオでカジュアルマッチに突入。


 あ、ランクですか? こっちは復帰直後で認定戦すら終わってないんで物理的に無理でした。


 さて、そんなわけで突入したカジュアルマッチ。


「とりあえず、懐かしの激戦区にでも行ってみますか〜」


 なんて軽口を叩きつつ、俺たちは激戦区に着地。相変わらずの敵マシマシ仕様で、警戒しつつ、武器と回復を拾って──


 パンッ!


「──は?」


 乾いた銃声と同時に、俺の操作キャラクターが地面に這いつくばった。


 スナイパーで頭を抜かれたらしい。復帰直後の脳とおじいちゃん耳では、その音の方向すら掴めないまま、確キルを入れられていく。


「いやいやいや、嘘だろ。なんで開幕スナで頭抜かれるんだよ。ふざけんな」


『ご愁傷様』


 そんなキレてる俺をよそにsh1no──いや、sh1no様は圧倒的な速度で敵をなぎ倒していく。


 まず俺をダウンさせたスナイパーを、高台ジャンプからのフリックショットで粉砕。続いて迫ってきた奴をスライディングしながら全弾ヘッドショットで処理。ついでに漁夫に来た2パをほぼノーダメで粉砕。……本当に人間か?コイツ。


『はい、全員処理完了〜。さて、バナー回収行きますか』


 まるで日常の一幕のように、sh1noが俺のバナーを拾い、敵を薙ぎ倒しつつリスポーンビーコンのある場所へ向かって走り出す。


「お前……ついにチートに手を染めたか……」


『染めてない染めてない。2年前からこんな感じだったでしょ』


 そう、こいつは昔からエイムは立ち回りもうまかった。けど──今のこれは、別格だ。


『はい、復活どうぞ。感謝してね♡』


「きっしょ」


 通話越しに返事をしつつ、復活演出が終わるのをぼんやりと眺める。リスポーン地点の端っこに、武器と弾がぽつぽつとばら撒かれていた。


『一応最低限だけ置いといたから、あとは敵の箱はから拾って』


 案内された先には、文字通り山と化したデスボックス群。さっきまで命を削り合ってた連中の遺品だと思うと少しだけ心が痛む。……いやごめんやっぱ嘘。全然痛まないわとっとと漁るぞ。


「うっわ、装備良すぎだろ。序盤でこんなにいい物持ってた奴らが、何で一人にやられてんだよ」


『その“ひとり”が俺だからじゃない?』


「黙れ怪物変態


 毒づきながらも、金色武器に紫アーマーと、恵まれた装備に身を包みながら復活完了。さすがにこれだけ装備が揃っていれば、多少腕が鈍っていても戦えそうだ。


◇        ◇        ◇


 復活してしばらくは、sh1noの後ろに張り付いて歩いてるだけの人生だったけど、だんだんとこっちも調子が戻ってきた。何戦かこなすうちに動きがまともになってきし、エイムも温まってきた。いやぁ、やっぱ人間って適応するもんですわ。


 その証拠に、さっきのマッチ。終盤でsh1noが削った敵を、横から綺麗にヘッショで持ってったんだよね。


「はいおっつ〜キルもーらい」


『おいこらぁ! よくも俺のキルを!』


「いやいやいや、最後に倒したやつが勝ちでしょ」


『このハイエナ野郎!』


 こういうやり取りができるくらいには、俺も少しずつ勘を取り戻してきたところで、sh1noがぽつりと言った。


『なあ、来月に公式のデュオ大会あるんだけと……出てみるか?』


「……は?」


 いきなりの問いに、思わず言葉が詰まる。


「なんでいきなりそんな話になるんだよ。確かに昔よく一緒に出てたけど、さっき復帰したばっかだぞ、俺」


『いや、さっき久々に一緒にやって、普通に楽しかったし。あと昼に食ったチャーハンがやたら美味かったからイケる気がする』


「どんな理由だよ!?」


 何チャーハンが美味かったからって大会参加するとか、こいついつもそんな軽いノリで大会出てたの?


『しかも今回の大会、ランク制限とかないし、ガチ勢もあんま出ないエンジョイ系っぽいし、ちょうどいいかなーって』


「無視かよ……! というか軽っ……!」


『で、出るんだよね?』


「せめてもうすこし待ってくれません?」


『待ちません。ということではい決定ね。ちなみに拒否権はないよ』


「おい、だから待てって」


『へいへい、明日から軽く練習な。じゃ、今日はお疲れ』


「……あ、逃げやがったなアイツ」


 sh1noは通話を一方的に切り、俺は取り残されたままPC前でぽつんと座っていた。本当にアイツの行動力って突拍子もないよな……と思いつつ、その日はそのままゲームを閉じて寝た。


 ……この時はまだ、俺は知らなかった。あいつがこっそりしたツイートが、あんなことになるなんて。


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@sh1no

デュオ大会、出ます。

相方はちょい復帰勢だけど、楽しみ。

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──sh1noって、あの世界一位の……?

──マジ? sh1noってソロ専門じゃなかったっけ

──相方誰!? 情報求む


 そして、こいつが、このゲームで世界一位って呼ばれてる化け物だってことを。

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