魔法の杖で無双(え?物理ですけど何か?)

えばた のりか

第1話 転生したら健康すぎた件

気がついたら、青い空が見えていた。


「あれれ…?見慣れない天井だ…

 じゃなくて、空?」


草の上に寝そべっていた私は、そっと身を起こした。

ふかふかの草の感触。

すぅっと鼻に抜ける、清らかな森の空気。

どこかで鳥のさえずり。


現実味のない美しい風景。


いや、これは夢……?


「やっと目が覚めたのね!」


甲高く響く声に、私はびくっと肩を跳ねさせた。


目の前には、小さな、小さな……妖精?


きらきらと光る羽根を生やした小さな女の子が、空中で腕を組んで仁王立ち?していた。


「このティア様が、どれだけ魔力を注いだと思ってるのよ! 

ったく、こんな規格外ボディに宿るなんて思わなかったわ」


「え、えっと……どちら様で?」


「あなたの杖に宿る妖精よ!!

 名前はティア、よろしくね。

 っていうか、早く立ってくれないかしら!

 私がせっかく選んだんだからぁ!」



杖?


私はふと自分の隣に目をやった。


 

――そこにあったのは、銀色に輝く一本の杖。


根元にはターコイズの宝石がはめ込まれていて、微かに光を放っている――。


「持ってみて?」


「え、えっと……」


恐る恐る手を伸ばしてみると、杖はぴくっと震え、すうっと私の手に吸い付いた。


 ……めっちゃ重っ!!


「うぐっ……!ん?

 な、何これ……!

 見た目より全然重たいんだけどー!」


「ふっふっふ、これはねぇ、

 ミスリルとオリハルコンの合金よん!

 あたしのお気に入りなの。

 最高に贅沢なのよー。

 普通の人間なら一歩も動けないってのに、片手で持てるなんて……

 本当に、アンタ健康に極振りされたのねぇ」


「健康に……極振り?」


そう。

私は思い出す。



私は35歳、社畜OLだった。

徹夜明けの帰り道、頑張った自分にご褒美のシュークリームとココアを買って、

コンビニを出て家に向かう途中に

……そのままトラックに。


(あ、ありがちじゃん……)


で、目を覚ましたらこれだ。


そういえば、美しい女神様にあった気がする。

夢だと思っていたんだけど、あれは夢ではなかったの?


女神様に何が欲しいって聞かれて、

「ん。寝る時間」

って言った気がする。


そしたら、

「あなたにピッタリの才能をあげましょう」

とか言って、与えてくれたのが【健康】の加護。


(確かに前世は不健康だったよね。

最近ヨガにも行けてなかったし。

ご飯も適当に済ませちゃってたかも。)


そのあと、

「これが、あなたの魔法の杖です。」

そう言って、水色の石のついた杖渡されたかも…

疑問にも思わず、なんとなく受け取ってたけど…



それがこの杖?

水色の石はまっててかわいい。なんか重い気がするけど。可愛いは正義よね。かわいいは作れるって言ってた子もいる気がするけど。



そんなことをぼんやり考えていたら、

お腹がぐぅ、と鳴った。



「ねえ、ティア。

 食べ物って、このへんで手に入る?

 いや、まずは安全な水の確保?」


「……アンタ、いきなり呼び捨て。

 自分の名前も名乗らず、

 いきなり食欲かよ。

 まあ、水はわかるけども。

 野生児ね。

 適応力があるのはいいことだわ。」


ティアは呆れたようにため息をついたが、すぐにくすっと笑った。


「ま、いいわ。

 食べることは生きることよ。

 【健康】は空腹に負けるからね。

 とりあえず、北の方に魔物の匂いがするわ。

 たぶん人間が食べられるやつ。」


「よし、いただきましょう!」


(自分で狩りをするなんてはじめてだわ。

だけど、なんだか不思議と根拠はないけど自信があるのよね。)


 ――こうして私は、

   異世界での第一歩を踏み出した。



女神様から与えられたのは、

【健康】と【魔法の杖】!!!!

おしゃべり妖精もついてきたかな。



目指せ、のんびり異世界生活!



(今流行りの異世界に転生だわ!

せっかくだし、今までやりたくてもできなかったこと、色々挑戦したいわ。)


とにかく前向きなのであった。





♡での応援や★のレビューをいただけますと、何よりの創作の励みになります。

よければぜひ、よろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る