ならばキミの不安が消えるまで、波に揺られて寄り添うとしよう
嬉野K
瞬間移動が存在する世界で密室は成り立たないさ
第1話 魔法学校の屋上です
「勇気出してよかった、って思いました。こうやって告白して受け入れてもらえて……私、すごく幸せです」
目が覚めた瞬間にこんな状況だった、と言えば信じてもらえるだろうか。
状況が自分でも把握できない。前日は普通に自室で寝たハズなのだが、現在地点は空が見える場所だ。
……
しかも眼の前には謎の美少女がいる。ライトノベルに出てくるような制服を着た、黒髪ロングの美少女が目の前にいた。
ボーっとする僕に向けて、彼女が言う。
「私ばっかり幸せになっててもダメですよね。きっと先輩のことも幸せにして見せますよ。お互いに幸せになれたら、それはとっても嬉しいことだと思うから」
なんだか彼女はとても幸せそうだった。
いったい彼女は何者だろう? どこかで会ったことがある気もするが、どうにも思い出せない。
……
というか……なんで僕は膝枕をされている? 見ず知らずの女性になぜ膝枕をされている?
「どうしました?」彼女が僕の顔を覗き込んで、「ボーっとしてるみたいですけど……やっぱりさっきの返事、嘘だったとか……?」
言われて僕は声を出す。寝起きだからか、声がいつもより出にくかった。
「……返事……? ちょっとまってくれ。僕はいったいなんの返事をしたんだ?」
「え……?」彼女は愕然とした表情で、「……なにって……私の告白に返事をしてくれたんですよ」
……告白? 彼女が僕に? なんで?
状況から見るに、僕は彼女の告白を受け入れたらしい。まったく覚えていないし、なんなら彼女の名前も知らない。
「状況が飲み込めないな……」僕は体を起こして、「もしかしたらキミを傷つけてしまうかもしれないが……今の僕は少しばかり記憶が怪しいようだ。現状を教えてもらえると助かる」
「記憶……寝ぼけてます……?」
「そうなんだろうか……」
寝ぼけの範疇を超えている気がする。しかし記憶喪失、というのともなんか違う感じだ。記憶を失ったことがないからわからないが。
……
周囲を見回してみる。
「……ここは屋上か……?」
「はい。ヴァリエート魔法学校の屋上です」
「ヴァリエート……魔法学校?」魔法……? 魔法って魔法? 「魔法があるのか……? この世界には……」
僕が言うと、ようやく彼女が首を傾げた。今までは僕の言動が冗談とか寝ぼけの類だと思っていたのだろう。
「あの……どうしたんですか? なんか会話が噛み合わないというか……」
「こちらのセリフだが……」
突然目の前に僕のガールフレンドらしき存在が現れたのだ。そりゃ混乱もする。彼女いない歴=年齢のこの僕に彼女なんてできるわけもない。
なんて思っていると、
「あ……」
ぐーっ……っと僕のお腹がマヌケな音を鳴らした。どうやら結構な空腹らしい、
「と、とりあえず昼食にしましょうか」現在時刻が昼なことも、今さら把握した。「お弁当作ってきました。一緒に食べてくれると嬉しいです」
……
……
いったい彼女は何者なのだろう。そしてこの世界はなんなのだろう?
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