第31話 伝説の魔道武具師、盲目の少女の瞳を手術する。
アブラアンさんに人工の水晶体を依頼してから10日間が経過した朝、俺はルルとミエルを連れ立って、ローゼンクロイツ伯爵の錬金工房に再訪した。
出迎えてくれたのは、フィオナとイザベラだった。
「おはよう、おじちゃん♪」
「ようこそ、ゲオルク殿、お待ちしておりましたわ」
「はて、10日前に案内をしてくれた、使用人の少年の姿がみえないんだが……」
「フィリップのことですわね。彼はこの10日間、離れのアトリエに入り浸っておりますわ」
「アブラアンさんのアトリエに?」
「ええ。フィリップは元は、バトロン男爵の屋敷で使用人をしておりました。アブラアンさんがゲオルク殿の依頼をうけたとき、助手をかってでましたの」
俺たちは、イザベラに案内をされて、アブラアンさんがいる、古ぼけた工房を訪れると、目にビッシリとクマをつけた使用人の少年、フィリップが出迎えてくれた。
「ゲオルクさん、お待ちしておりました!」
「アブラアンさん。約束の品は完成しましたか?」
俺は、アブラアンさんに首尾を尋ねると、フィリップ少年と同じく、目にクマをつけたアブラアンさんが、鉄の板に乗せた一対の水晶体を差し出す。
「ああ。バッチリだ! こいつが、約束の品だ」
俺は片眼鏡をつけると、水晶体を隈なく観察する。
「どうだ、ゲオルク?」
「さすがは、アブラアンさんだ。期待通り、いや、それ以上の出来栄えです」
「そうかそうか! それは良かった!! それじゃ悪いが俺は横になることにするよ。フィリップ、ご苦労だったな! お前も休んでくれ」
「は、はい……」
アブラアンさんは、使用人のフィリップに声をかけると、そのまま床につっぷして爆睡を始めた。
「あらあら、こんなところで寝たら風邪をひいてしまいますわ」
ミエルは、工房の片隅にあった毛布を、アブラアンさんとフィリップにかける。
「イザベラ、さっそくだが、ルルの手術をしたい。工房を貸してもらえないか?」
「もちろん、かまいませんわ。ゲオルク様がそう言い出すと予想して、お兄様に進言をして本日は工房を貸切にさせて戴きましたの」
「助かる。では早速手術に取り掛かろう」
手術と聞いたルルが、俺の腕をキュッと握る。
「怖いか?」
「少し。でもアタシはゲオルクおじさまを信じているの」
「任せてくれ。必ずお前の視力をとりもどしてやる」
俺は、ルルを机の上に寝かせると、目を消毒して痛みを和らげる薬を打つ。
そして数分後、慎重に瞳を切開して白濁をした水晶体を取り取り出して、代わりにアブラアンさんが造った人工水晶体を眼球に固定した。
手術は30分ほどで終了した。
俺はルルの頭部に包帯を巻きながら、やさしく話しかける。
「よく頑張ったな。切開した眼球の傷がふさがって、人工水晶体が眼球に定着するには数日かかる。それまでは不便だか我慢してくれ」
ルルは俺の言葉にこくんとうなづくいた。
あとは無事人工水晶体が眼球に馴染むのを待つだけだ。うまくいくといいのだが……。
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