第23話 伝説の魔道武具師の帰還。
太陽の騎士団ライが東の果ての島国に向かっているころ、ゲオルク・バウエルは、ちょうどライと入れ替わる形で、島国を立っていた。
ゲオルクを乗せた交易船は、海洋ルートで南海に浮かぶ島々を抜け、スパイスシティーを経由して、黒い大陸を大きく迂回してから、フライハイ連合国家と隣接する『静かなる内海』を航海していた。南の港町の国『アンバーサー』はもう目と鼻の先だ。
「船長、1年以上の長期のあいだ、どこの馬の骨とも知らぬこの俺を船に乗せてくれて本当に感謝しています」
「何を言ってるんだゲオルクさん! 俺たちゃあんたに本当に感謝してるんだぜぇ。1年以上の航海で、死者一人ださない。これがどんなにすごいことか!! まさか、あの恐怖の『
ゲオルクは、樽に入った山盛りのみかんをひとつ取り上げると、皮をむいて食べながら返答をする。
「『
「船乗りの欠員の心配がなくなれば、船員の代わりに、船にたっっっっぷりと、お宝を積んで帰ることができる。ゲオルクさん、あんたにもわけ前もたっぷりに支払うことができるぜぇ!」
船長の申し入れに、ゲオルクは首をふった。
「船長、なんども言っているが、俺は、この船に乗せてもらえただけで十分なんだ。行きは8年以上かかった華の国までの道のりを、たった1年で引き返すことができたのだから」
「それじゃあ、俺様の気持ちが収まらないって言ってるだろ!! ゲオルク、これは船長命令だ! 港に着いたら、積荷のお宝を、持てるだけ持って帰るんだ!! 命令に背けば、首と胴体がおさらばすることになるぜぇ!?」
船長は、腰にぶら下げたサーベルを引き抜くと、ゲオルクの首元に刀身をひたひたとうちつける。
船長の脅しに、ゲオルクはしばし閉口するも「はぁ」とため息をつき、ついに観念をした。
「わかったわかった。十年前、旅の資金を工面してくれた恩人がいるのでな。その方へのお礼にすることにするよ」
「おう! 好きなだけ持って帰りやがれ!! 安物を選んだら、ただじゃおかないぜぇ!!」
ゲオルクは苦笑いをすると、旅の資金を工面してくれた恩人マシュー卿と、その娘ミエルに思いを馳せる。
ウエステッドに戻ったら、真っ先にマシュー卿のもとに訪れよう。旅の資金のお礼を渡して、『魔断のローブ』という失敗作に対して見合わぬ報酬を受け取ってしまった非礼を詫びなければ。
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