サイバーヤクザ
三流木青二斎無一門
いにしえのヤクザ、妖しき街・サイバーカブキシティ
妖しく光る電光看板の乱立。
違法建築の建造物が素知らぬ顔で都市へ発展させた。
行き交う人々はカブキの如く肉体を機械へ改造して往々していき、
喧噪と共に栄華を誇る一大国家と化していた。
サイバーカブキシティ。
裏社会の人間が集うこの街で、今日も鬼気迫る狂乱の声が響き渡る。
「タマトッタラァアア!!」
大きな声が響き出す。
灰色の肌。
鋼で出来た筋肉。
サングラスの奥から迸る赤色のサイバーアイ。
小柄なサイボーグがドスを持って接近する。
向かう先は黒塗りの高級車。
そこから出てくる強面の男たち。
対象者は護衛対象でもある、黒の和服を着込んだ一人の老人。
サイバーカブキシティに
「
「組長を守れェ!!」
「タマトッタラァアア!!」
数十種類の男性の声を合成して作られた人工音声が喉から響かせる。
安物のサイボーグは鉄砲玉として突進した。
その声に反応して、護衛たちが即座に体制を整える。
護衛対象を守るための肉壁の布陣を取った。
「ぐ、オォ!!」
正面にいたヤクザの一人が、サイボーグのドスによって腹部を貫かれる。
激痛を覚える強面のヤクザ。
しかし、持ち前の気合いと根性で痛みを我慢する。
だが、それだけでは凶行は止まらない。
鉄砲玉サイボーグの内部から、カチリと音が発生した。
その音を察して、即座に男は声を荒げる。
「逃げろ!」
「爆だヴぇッ!?」
その言葉を発するよりも先に、鉄砲玉サイボーグが眩い光と共に爆破した。
一帯を巻き込んだ自爆型サイボーグである。
対象に向けてドスを突き刺すことで身動きを封じ、動けなくしたところで爆発するのだ。
「ぐわぁあああ!!」
「お、オヤジぃいい!!」
彼らの親である組長が爆破と共に塵と化した。
古風なヤクザはサイバー化を嫌い肉体を改造するのは御法度とされた。
地面に横たわるヤクザたち。
苦しそうにうめきながら、彼らのそばに近寄る影があった。
下半身を吹き飛ばされたヤクザは顔を見上げて、彼らを見渡す。
それが彼らヤクザの親分を爆発させて殺した張本人であった。
黒色のスーツを身に纏うサイバーサイボーグが一人の男を守っている。
周囲のサイバーサイボーグとは違って、生身の肉体であるその男は、異様に長い黒色のリーゼントをしていた。
口元は空気を洗浄する機能が付いているマスクを装着し、ファスナーを首元まで締めた青色のスカジャンを着込んでいた。
「て……テメ、ェ」
「なに、もんだァ!!」
ヤクザはその男を睨んだ。最後までヤクザとしての矜持を保つために、ドスを効かせた声で必死に叫んだ。
「アァん?俺らが何者かってェ?」
彼の顔を見ながら、リーゼントヘアの男はポケットからポケットコームを取り出した。
折りたたみ式のバタフライナイフのようにクシを展開させると、自らのリーゼントを撫でるように整えながら、改めて男はヤクザと同じようにドスを効かせて喋る。
「これを見やがれッ!!」
そしてそのヤクザはおもむろに、自らのスカジャンのファスナーを下げて後ろを振り向いた。
「ぐぉ」
直後、ヤクザは大きく目を見開いた。
「まぶしッ」
「な、眼がァ!!」
男の背中は発光した。
サイバーデバイスから発生するナノマシンによって形成された七色に発光するゲーミング刺青であった。
液晶画面のように繊細に映り込むハンニャオーガが、嘲笑うかのようにケタケタと顎を震わせる映像であった。
ただゲーミング刺青を見せたわけではあるまい。
瞬時に背中の画面が切り替わる。
そして、現れたのは「関東」と書かれたエンブレム。
それこそ、彼らの正体を示すものであった。
恐れるように、ヤクザは唇を震わせる。
「そ、その代紋、は」
このサイバーカブキシティを支配しているのは、近代化が進む現代においてサイバーシステムに順応したヤクザの組織、
「泣く子も黙るイーストゲイツ組だ」
リーゼントの男はそう言った。
第三次世界大戦にて、サイバー軍需品を横領し、いち早く世界に適応した。
現在では、サイバーカブキシティを裏から支配しておりオフィサー的立ち位置に属し、その勢力の手は政治業界にも伸びている。
現在の総理大臣は、イーストゲイツ組の会長の靴を舐めていた。
「冥土の土産に知れて良かった……なァ!!」
既に蟲の息。
手足を捥がれたヤクザにサイバーサイボーグが迫る。
懐に仕舞い込んだ自動拳銃を取り出す。
そして、辛うじて生きているヤクザたちに向けて発砲。
「がァあああッ!!」
介錯を済ませたリーゼント男は満足気に呟く。
「時代遅れのロートルヤクザが」
本格的に縄張りを拡大させるイーストゲイツ組。
既に周辺のブロックを縄張りにするヤクザは一掃されていた。
その話題は、周囲のヤクザたちに稲妻の如く知れ渡る事となった。
―――サカヅキを交わすか、血で血を洗う抗争に発展させるか。
二つに一つの選択を与え、傘下と縄張りを増やすイーストゲイツ組。
そして、
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