Eternal (永遠)
龍誠
第1話 名もなき者
碧き海が広がる砂浜の上で、龍誠は波をチェックしていた。
数日前から湘南海岸には、台風のスウェルが帯状に何本も押し寄せている。
龍誠の横に、ちょこっと膝を抱えて座っているのが瞳である。
大空は快晴で雲一つなく、西には富士山が、その雄姿を誇っていた。
東には、江の島、正面に烏帽子岩が見える。まるで葛飾北斎の富嶽36景を眺めるような絶景が目の前に広がっている。
龍誠は、考えた、名もなき数多くの御魂(みたま)がこの大海原に散っていった。
その中に、横にいる姫の過去世もあるのだなと思っている。
大和の国の武士道の精神を伝えし、大和魂と大和撫子の伝説が蘇るのだ。
龍誠は、静かに瞳の笑顔を見てから、カレントの潮流に乗って沖にゲッテングアウトしていった。
オフショアの透明な風が、龍誠の金色に輝く髪の毛をたなびかせている。
沖合で盛り上がる6フィートオーバーのセットの波がレギュラーからブレイクするのが察知された。
龍誠は、全速力でパドリングして波のピークからテイクオフしていった。垂直にオーバーハング気味に抉(えぐ)れる波をボードのエッジを掴んでバックサイドで垂直に落下(テイクオフ)する。
ビーチブレイクの波は、インサイドでえぐれてチューブになる。
龍誠は、サーファーズ・イヤーを恐れて鼻から耳へ空気を抜いた。
次の瞬間、目の前に真白(ましろ)き富士を包むように波がしらが落ちてくる。
気分爽快このうえなし。
つづく
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