第15話 初めて推しに、理不尽に怒られた日
人生初の楽しいデートに、頬が落ちるほどの絶品スイーツ。
アキはすっかり気分が良くなり鼻歌混じりで駐屯地の門をくぐっていた。
今日は最高の休日になった。
この世界に来てから1ヶ月ほど。
その間ひたすら働きまくり、最近は神経もすり減ってストレスMAXだったのが全て洗われたようだった。
明日からまた、クビにされないように頑張って働いてー……
そう思った時だった。
「……おい」
「ヒェッ!?」
突然背後から話しかけられた事と、その冷えた声色に恐怖で固まるアキ。
咄嗟に振り向くと、門の裏手に腕を組んだアレンがいた。
その顔は相変わらず整って美しく、怒った姿もまた尊……じゃなくて。
何故こんな所に?
「あ、あの、何か……?」
「どこに行っていた」
低い声が、いつもより数段冷えていた。
アキは思わず息が止まりそうになる。
(……出た。“あの目”)
最近よく見かける、何かを“査定”するような視線。
と同時に、先日ドレスを全力拒否した事も思い出し、一層引き攣った表情で目の前の美形を見つめた。
「質問したんだが?」
「っき、休暇です。申請済みです。確認してもらっても」
「行き先は?」
「……えっ」
(……別に、休暇なんだしどこでもいいじゃん)
それより、早くこの場から逃げたくて適当に「近所です」と答える。
その瞬間、アレンの眉がぴくりと動いた。
「……いいか、雑用係」
「っはい!」
「今後は無断で外出を禁止する」
「え!?無断じゃないですって!ちゃんとジュードさんに許可もらって……」
「休暇申請は直接俺に提出するように」
「えぇー……?」
つい、心の声が漏れた。
出し難い事この上ない。
何のために逃げ回ってると思っているのか。
「仮にも君は騎士団の人間だろう。身元の曖昧な者と勝手に接触するなど、軽率だ」
「へ?」
「いいか。暫く外出禁止だ。……これは命令だからな」
それだけ言うと、アレンは怒った顔のまま駐屯地の中に消えて行った。
後に残されたアキは嫌に鳴り響く心臓を抑えていた。
その“身元の曖昧な者”って……ウィルさんのことだ。
(………怖)
一体どこから見ていたのか。
……いや、それより、休暇の私を監視するほど……そんなに追い出したいのか。
(なんで……なんで?一体私が何したってのよ)
女嫌いの推しのために敢えて距離を取って生活してるし、「女」感が出ないように薄汚れた服ばかり選んで着たりしてる。
これでも、最大限に努力してるのに。
……なのに、声も出せず、ただ背中を見送るしかなかった。
この日、アキは初めて“怒り”という感情を、推しに対して抱くのであった。
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