第5話 千年を迎える日⑤

 巨大化して見つけた家は、牧場みたいな様相を呈していた。柵で囲われた草原に、背の高い倉庫を兼ねた風車、造りの荒い大きなログハウス。


 今は誰も草原には出ていないようで、主人あるじがどんな人かはまだ分からなかったが、ログハウスの煙突から煙が出ているので在宅であることは間違いなさそうであった。



 リリアンの発案で、私とリリアンは茂みに隠れて遠目にその家を観察していた。


 ここの住人が鼻がいいとか、耳がいいとか、そういう可能性を考慮して、距離は十分にとってある。

 リリアンは焦燥感を隠しながらぼやいた。


「なかなか出てこないわね……。

 日も傾いてきたし、さっき作った拠点に戻る時間も考慮すると、早くこの家の住人とその数、それから川の水を飲用しているか把握しておきたいのだけれど。……いや、せめて川の飲用可否だけでも知りたいわね」

「そうだねぇ……。なら、直接聞くのは?」


 私がそう言うと、リリアンはやれやれと首を振って私を諭した。


「お馬鹿さん。あれが人間牧場だったらどうするのよ。私たち死ぬより辛い目に遭うかもしれないわ」

「……そっかぁ。じゃあ、もうちょっと待つしかないか。ところで、人間牧場ってなに?」

「人間を家畜として飼っている牧場。童話にあるのよ」



 しかし、そんな話をしていると、どうもログハウスが騒がしくなった気配がした。


 リリアンが耳をログハウスの方に向けて私に尋ねた。


「なんか騒いでない?」

「うん。たしかに」

「あそこに複数人いるのは確定ね。いざとなったら強盗に入るしかないと思ってたけど、それは無理そうね」


 私はリリアンをじっと見た。


「……リリアン、そんなこと考えていたの?」


 リリアンは慌てて手振り身振りを大きくして弁明する。


「誤解しないでよ?!い、いざってときの話よ!本当にご飯も何もなくて、しかもあそこにいるのが偏屈で食糧を分けてくれたりしない性悪ジジイだったってときの話!それより、少しでも騒ぎから情報を得ましょう。フェルン、一旦お黙りなさい!」



 すると、遂にログハウスの戸が開かれた。そして、私達は雷が落ちたかのような衝撃を受けるのだった——。



***———作者コメント———***


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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 ついに家の観察を始めました。ま、まだ出会っていませんね……。予告失敗!


今後もよろしくお願いします!


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