ささやかながら、日記
大河井あき
2025/07/25 夜の侵入者
昨夜、小説の執筆がきりのいいところまで終わり、睡眠薬を飲み、電気を消して布団に入ろうとしたときでした。
背後、カーテンのあるほうから、音。
低音のチェンソーを唸らせるような響きにビクッとしましたが、リビングは三メートル四辺、逃げ場はありません。思い切って振り返り、電気を付けました。
そこにいたのは、意外な侵入者でした。
――カナブン。
窓は網戸にしていたので、昼間に洗濯物を取り込んだときに入って来てしまったのでしょう。まるで睡眠を邪魔してやろうというかのようなタイミングで、羽音を振りまき始めたというわけです。
眠気が迫るなか、髪を乱雑にかきながら、殺虫剤を取るために玄関へ行こうとしました。しかし、急に
窓を開けたままにして逃げるのを待つのは、別の虫が入り込む可能性があるので即却下です。
観察していると、一定時間ぐるぐると飛び回ったあと、休みを取っているのか壁にひっついてじっとすることに気づきました。
その間に、何かで捕獲することはできないだろうかと思い至りました。
しかし、不幸なことに虫取り網は持っていません。
畳んだ新聞紙ですくい取ろうとしましたが、うまく先のほうに力が伝わらず、頑固に壁にしがみつくカナブン相手には
やっぱり、窓を開けるしか方法はないのでしょうか……。
そう諦めかけたとき、ぱっとひらめきました。
飛んで逃げようとせず、頑なに壁に引っ付こうとしているのなら。
手に取ったのは、IHコンロを買ったときの段ボール。厚めなので力が伝わりやすく、フラップ(ふたの部分)でちょいちょいと脚をいじると、さすがのカナブンも耐えきれず、そのまま足を滑らせて段ボールの中に転がり落ちていきました。
そのあとは急いでフラップを閉じ、裸足のまま革靴をつっかけてドアを開け、外へ逃がしてあげました。殺さずに済んだこともあり、達成感が大きかったです。睡眠もしっかりと取ることができました。
もしかしたら、人の姿に化けて、助けたお礼をしにきてくれるかもしれませんね。機織りはしないでしょうが、執筆の手伝いをしてくれたら嬉しいな、などということを冗談半分で思った次第です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます