第48話「再現と本物」

昼休み。

めぐるたちのテーブルには二つの弁当が並んでいた。


一つは、いつものリコリス。

もう一つは──春原小夜が作ってきた「リコリス再現弁当」だ。


今日の献立(リコリス版)


ご飯


味噌汁


漬物


擬製豆腐(豆腐と野菜を卵でとじた優しい味)


コーンフライ(サクサク、甘みがじゅわっと広がる)


蒸し鶏和え(さっぱりとしたヘルシー副菜)


今日の献立(小夜版)


同じく「擬製豆腐」「コーンフライ」「蒸し鶏和え」を再現(やや家庭的な味付け)


「すごい、小夜ちゃん! ほんとにリコリスそっくり!」

れいが写真を撮りまくる。


星南はコーンフライを食べ比べて「こっち(小夜版)は家庭の甘さ、リコリスのは“プロの技”って感じだな」と真顔で言う。


静香は栄養データをチェックして、「配分は近い。でも微妙に油の温度管理や調味料の使い方が違う」と冷静に解析。



めぐるも食べ比べて、思わず笑った。

「……どっちも美味しい。でもやっぱり、リコリスは“完成された全体設計”を感じるんだよね」


小夜は照れ笑いしながら言う。

「やっぱり本物には勝てない。でも、再現するのも楽しかったよ」



献立表の片隅には、やはり小さく。


──監修:山岡るり


小夜はその文字を見て、ぽつりと呟いた。

「……この人の影響がある限り、私たちじゃ完全には届かないのかもね」


めぐるは箸を置き、少し胸が高鳴るのを感じていた。

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