第44話「植村さん、ついに」

休日のお昼。

日向めぐるはアパートの共用スペースでリコリス弁当を広げていた。


今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


高野豆腐のチリ炒め(ピリ辛ソースがじゅわっと染みる)


山菜和風炒め(ほろ苦さと醤油の香り)


若芽とコーンの和え物(磯の香りと甘みのバランス)


「今日も安定のリコリス……」

めぐるが箸を進めていると、ふと隣の植村恭子さんが顔を出した。


「また美味しそうねぇ……毎回毎回、飽きないの?」

「はい! 今日は高野豆腐のチリ炒めなんです!」

めぐるは嬉しそうに答え、弁当を見せる。



「……高野豆腐をチリで? そんなの、自分じゃ思いつかないわ」

恭子さんは腕を組み、少し考え込む。


「……ねぇ、めぐるちゃん。リコリスって、私でも頼めるのかしら?」

「もちろんですよ! アプリから簡単に注文できます!」


めぐるはスマホ画面を見せながら説明。

恭子さんは興味津々で操作をのぞき込み、

「……じゃあ、試しに今度頼んでみようかしら」と小さく笑った。



その時、偶然通りかかった北山望が、にやりと笑って口を挟む。

「植村さんまでリコリスに……ついに来たな」

「な、何が来たっていうのよ」

「まぁ、そのうちわかりますよ」


めぐると植村さんは顔を見合わせ、笑ってしまった。



弁当を食べ終え、献立表を何気なくめぐるが見やると──

やはり隅に小さく書かれていた。


──監修:山岡るり


(植村さんが食べたら……どんな反応するんだろう)

めぐるの胸に、期待がふくらんでいくのだった。

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