第23話「リコリス工場の扉」

めぐるは大学帰り、バイト先の友人に誘われて町田の外れを歩いていた。

ふと鼻をくすぐるのは、リコリス弁当で馴染みの香り。気づけば工場の前に立っていた。


「ここが……リコリスの工場?」

普段は無人のように静かだが、今日は配送トラックが並んでいて、作業着姿の人々が出入りしていた。


今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


鶏のピカタ


バターソテー


ドレッシング和え


昼に食べた弁当を思い出す。

カリッと焼き上げられた鶏のピカタ、やさしく香るバターソテー、シャキッとしたドレッシング和え。

どれも工場で大量に作られたとは思えないほど、家庭的で手がかかっている。


「やっぱり秘密があるんだよね……」

めぐるは呟く。



搬入口の横に、献立表らしき紙が貼られているのを見つけた。

そこには「本日のメニュー」と並んで、隅に小さく書かれた文字。


──監修:山岡るり


またこの名前だ。

「やっぱり……全部この人?」



帰り道、偶然すれ違った北山望が工場の方を見てニヤリとする。

「お、リコリスか。あそこのメンチ、最高だよな」

めぐるは驚く。「北山さん、知ってるんですか!?」

「まぁな。けど、裏まで知るのはまだ早いかもよ?」


まるで意味深な台詞を残して去っていった。

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