第16話 二人のきずな
俺をリンチした二人は、警察に暴行の現行犯で連れていかれた。
ゆきちゃんが俺を心配してかけよってきて。
「雁太くん、血が出てるよ! こんな、こんなになるまで……。ごめん、ごめんね。いたいよね、すごくいたいよね」
顔を真っ赤にしてボロボロと涙を流しながら、俺の血を肩にかかったサクセスのタオルで拭いてくれる。
「ちょっとキツかったけど、これくらいゆきちゃんの為なら平気だ。だって、俺、ゆきちゃんのことが好きだから」
さらっと本音が口から出た。
だって、本気じゃなきゃ、こんなことできないから。
「私が平気じゃないよ、雁太くんがこんなに血を流してるなんて! 私がつらいよ。だって私も雁太くんのことが好きだから!」
え? 今なんて言った?
「え、ゆきちゃんはジュンみたいなイケメンが好きなんじゃないの?」
不思議に思ってそう言うと、ゆきちゃんは眉を寄せてさらに目に涙をためた。
「ジュンはジュン! 雁太くんはカッコいいよ! 私にとっては世界一カッコいいよ!」
ボロボロとまた瞳から涙がこぼれる。
「入学式のときから好きだったの。だって、優しくしてくれたから!」
あ、あれか。名前をみつけてあげたやつ。
「その後も、アイドルオタクな私でも引かなかったし、こうして一緒にライブに来てくれるし」
だって、俺だってゆきちゃんが好きだから。
「雁太くんは私にとって世界一、カッコいい人だよ」
そう言われて、俺はゆきちゃんがとてもいとおしくなって、強く抱きしめた。
「俺もすき。大好き。世界一好き」
「わたしも」
無意識で熱い青春を語ってしまっていたら、周りから拍手がぱらぱらと沸き起こり。
それは、盛大な拍手となって、抱きしめ合う俺たちを包んだ。
「なんか映画みてるみたいだったなー」
という、周囲の人たちの声が聞こえる。
俺たちは顔を見合わせ一気に赤くなって、急にはずかしくなって距離をとった。
すると、その時をみはからったように警察の人がきて、俺たちに声をかけた。
「あー。熱いところ悪いけど、さっきの乱闘の事情聴取をさせてくれないかな。こっちきてくれる?」
俺たちはその警察官についていき、あらかたの事情を話して、家にも電話された。
そのときは、ゆきちゃんの父親と俺の父親も呼び出されて、夜も遅いし、ゆきちゃんは車でかえり、俺は病院へ行って救急外来で怪我をみてもらった。頭に包帯をし、腹にシップをした。念のためCTも撮ったが、内出血もないようだったらしい。ふだん腹筋を鍛えていて良かった。
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