第32話 理念の対立?お菓子で和解!

次元の壁の綻びから現れた転生者、アークスとの遭遇から、数日。

『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。窓から差し込む陽の光が、船内を明るく照らしとる。

ミオの工房は、アークスという新たな来訪者で、ちょっとだけ騒がしくなっとる。

(うぅ、なんでうち、あんな面倒な人、工房に連れてきてもうたんやろ……)

ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながらため息をついた。その手触りは、ひんやりとしてて、心地ええ。

資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。


アークスは、相変わらず世界の「再構築」について熱弁しとった。

彼の声は、どこか冷たく、響き渡る。まるで、凍りつくような氷のようだ。

「そなたの生産など、所詮は『模倣』に過ぎない。この世界は、一度全てを破壊し、ゼロからやり直さねばならんのだ!」

アークスの瞳は、狂気にも似た光を宿している。

彼は、ミオが作った『魔力製氷機』や『自動給湯魔法風呂』などを見ても、鼻で笑うだけや。

「ふん、そんな生ぬるい生産で、この淀んだ世界を変えようなどと……甘い!甘すぎるぞ、眠りの魔女!」

アークスは、ミオの作るものを「所詮は模倣」と一蹴する。


「そんなん言うても、うちの生産で、みんな幸せになっとるんやで?戦争も止まったし、みんな美味しいもん食べてるし!」

ミオは、ムキになって反論した。彼女の顔は、不満げに膨らんでいる。

「ふん、所詮は一時的な延命に過ぎない!淀んだ世界を根本から浄化するには、破壊しかないのだ!」

アークスは、手のひらから黒い光を放ち、工房の壁を、瞬時に灰に変えようとする。その光は、まるで闇そのものだ。

「ちょ、何してんの!?うちの工房壊したらあかんて!」

ミオは、慌てて資材スライムに指示を出す。

「スライムはん!あの黒い光、モグモグして片付けといてな!」

資材スライムたちが、アークスの放った破壊の魔力をモグモグと吸収し、壁を元通りにする。彼らの体が、魔力を吸収するたびに、微かに輝く。

アークスは、その光景に驚きと困惑の表情を浮かべる。彼の瞳が、信じられないといったように大きく見開かれている。

「な、なんだと!?あの粘液が、ワタシの破壊の力を……!?」

彼は、信じられないといった様子で、スライムたちを睨みつけた。


「アークスはん、そんなこと言わんと、うちの作ったお菓子、食べてみてくれへん?」

ミオは、アークスに『魔力たっぷりロールケーキ』を差し出した。ロールケーキからは、甘い香りがふんわりと漂ってくる。

アークスは、ロールケーキを不審そうな顔で見つめる。その表情は、警戒心でいっぱいだ。

「お菓子など、破壊とは無縁の、愚かなものだ」

そう言いながらも、アークスはロールケーキを一口食べる。

その瞬間、アークスの冷たかった表情が、驚きと恍惚に変わった。彼の目尻が、微かに下がる。

「な、なんという甘美さ……!これほど純粋な甘さ、ワタシの破壊の力をもってしても……!」

アークスは、ロールケーキをあっという間に平らげた。

「ぐぬぬ……甘い!甘すぎるぞ、だがそのお菓子は最高に甘い!」

アークスの顔が、悔しさと、そして隠しきれない幸福感で歪んだ。その姿は、まるで子供がお菓子をねだるみたいや。

(はい、懐柔成功!)

ミオは、心の中でガッツポーズをした。


資材スライムたちは、アークスの周りを嬉しそうに飛び跳ね、彼が破壊しようとしたものをモグモグ片付ける。

アークスは、資材スライムたちに振り回され、どこか生き生きとしているようやった。

彼の周りで、土色のスライムが瓦礫を片付け、銀色のスライムが破壊された金属をモグモグしている。

時には、フルーツ好きのスライムが、アークスに採れたての果物を「ぷる!」と差し出すことも。アークスは一瞬躊躇するが、結局は受け取ってしまう。

結局、アークスは、ミオが作った美味しいお菓子には目がなく、完全に懐柔されてしまうんや。

ミオは、深刻な葛藤に陥ることなく、アークスを「ちょっと困った友人」として扱うことにした。

(まあ、破壊の力は面倒やけど、お菓子に釣られるんなら、可愛いもんやん!これで、うちの工房も、もっと賑やかになるかもやし!)


この日、工房には、王族、魔族、ドワーフ、エルフ、そして転生者アークスまで、様々な種族が集まっていた。

ライオスたちは、アークスの破壊の力に警戒しつつも、ミオのお菓子で大人しくなった彼を見て、呆れと安堵の表情を浮かべとる。

「まさか、世界の命運を賭けた転生者が、お菓子に釣られるとはな……」

シエラが、呆れたように呟いた。

フィオナは、ミオとアークスが並んでお菓子を食べている姿を見て、にこやかに微笑んでいた。

ルナリア姫とリリアーナ王女は、新しいお菓子の味に夢中で、アークスのことなど気にも留めていない。

ゴルムはんは、アークスの「究極の破壊」能力に興味津々で、彼に「その破壊の原理をワシに教えてくれぬか!」と詰め寄っている。

エリアスは、アークスから語られる世界の真実の断片に、目を輝かせている。

ミオの工房は、今日も平和で賑やかや。

アークスの出現は、世界を大きく揺るがす危機となるはずやった。

やけど、ミオの『究極の生産』能力と、お菓子と資材スライムの可愛らしさのおかげで、そんな危機は、あっさりドタバタコメディに変わったんや。

ミオの工房は、今日も平和で賑やかや。


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次回予告


世界にまた新たな「ちょっとした」異変が!?

ミオのチート生産は、世界規模の問題をサクッと解決できるんやろか!?

そして、資材スライムはんたちは、どんな活躍を見せるんやろ!?

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第33話 世界は今日も平和です


お楽しみに!

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