第20話 古代遺跡と失われた技術の片鱗
『生産型移動要塞『フロンティア号』』での旅は、ほんま快適やったわ。
魔族の里での文化交流も無事に終わって、フロンティア号は次の目的地へと向かう。
船内には、王族や冒険者、ドワーフのゴルムはん、エルフのエリアス、そしてルナリア姫とリリアーナ王女といった、異色のメンバーが同乗しとる。
資材スライムたちも、船内で自由に動き回り、新しい素材を見つけては、モグモグと食べている。
(あー、これぞまさに「動く引きこもり楽園」やなぁ……)
ミオは、ふかふかソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。
フロンティア号の船窓から、遙か彼方に、森の中にそびえる巨大な建造物の影が見えてきた。
それは、古びた石の塊で、ツタに覆われとる。
まるで、大地の奥から生えてきた巨大な樹の切り株みたいや。
「ミオ殿!そろそろだ!目的地が見えてきたぞ!」
ライオスが、興奮した声で叫んだ。彼の声には、冒険者としての血が騒ぐような響きがある。
窓の外には、深い森の中に、古びた遺跡の姿が見える。
『忘れ去られた遺跡』。
そこは、古代文明の謎が眠る場所として、この世界では半ば伝説的な存在やった。誰もが畏れ、近づこうとせえへん場所や。
フロンティア号は、遺跡の近くにゆっくりと着陸する。
着陸の衝撃で、船体が微かに揺れる。
遺跡の入口は、ツタに覆われ、長い間誰も足を踏み入れていないことがわかる。石の扉は、苔むして、まるで森の一部になったみたいや。
空気がひんやりとしていて、どこか神秘的な雰囲気が漂う。肌に触れる空気は、独特の湿り気を帯びていた。
「ほう、これは古代の叡智の匂いじゃな……」
ゴルムはんが、目を輝かせながら遺跡を見つめる。彼の鼻が、微かに歴史の匂いを嗅ぎ取っているかのようだ。
エリアスも、興奮した様子で遺跡の壁に触れている。彼の指先が、古代文字の彫られた石肌をなぞる。
「これは……間違いありません!古代文字が刻まれています!失われた技術の痕跡だ!」
エリアスの声が、上擦っている。彼の瞳は、知識への探求心で爛々と輝いていた。
「スライムはん、ちょっと探してみてくれへん?なんか面白いもんないかな?」
ミオが、資材スライムたちに声をかけた。
資材スライムたちは、「ぷるぷる~!」と嬉しそうに遺跡の中へと散っていく。
茶色のスライムは、地面の土をモグモグとかじり、隠された通路を探す。彼らの軌跡は、まるで小さなトンネルのようだ。
銀色のスライムは、壁の石を舐めては、隠された仕掛けがないか確認する。彼らの体から、微かな金属の音が聞こえる。
キラキラ光る魔石スライムは、遺跡に眠る魔力を感知して、ミオに方向を示す。彼らの体が、光の点滅でミオを導く。
遺跡の中は、薄暗くて、ひんやりとしとった。
そこには、危険な罠や、古代の守護者「原初のゴーレム」が待ち受けているはずやった。
やけど、資材スライムたちは、そんな危険なんか気にせえへん。
「ぷるっ!」
罠を感知すると、その場で資材スライムが地面に穴を開け、罠を解除する。床に仕掛けられた落とし穴も、スライムたちがふさいでしまう。
「ぷるる~?」
ゴーレムの姿を見つけると、資材スライムがゴーレムの表面をモグモグしようとして、ゴーレムが困惑して動きが止まる。その巨体が、一瞬硬直する。
その隙に、ライオスたちがゴーレムをサクッと無力化していく。ライオスの剣が、ゴーレムの弱点を正確に捉える。
(うわぁ、スライムはん、便利すぎやん!ていうか、ゴーレム、あんなに困惑するんやなぁ。可愛い)
ミオは、資材スライムたちの万能さに、改めて感心した。
遺跡の最奥で、一行は古びた石板を発見した。
石板は、巨大で、部屋の壁一面を覆うほどや。表面は、長い年月によって風化しているが、複雑な模様と文字が刻まれとる。
石板には、エリアスでも読めないような、さらに古い古代文字が刻まれとる。その文字は、この世界の歴史書にも載っていないものや。
「これは……まさか、創造主の言葉!?」
エリアスが、震える声で呟いた。彼の指先が、古代文字をなぞる。
石板の前に立つと、ミオの能力が、微かに反応した。
(あれ?なんか、眠くなってきた……)
ミオの視界が、ぐにゃりと歪む。石板の文字が、光の粒となってミオの目に吸い込まれていくようだ。
「ふぁ~あ……」
ミオは、石板の前に座り込んで、そのまま眠りに落ちた。
資材スライムたちが、ミオの周りに団子になって集まり、彼女の寝顔を守るように寄り添う。彼らの体が、優しい光を放っていた。
その光の中で、ミオの夢の中に、不思議な光景が広がった。
それは、遥か昔、この世界が創造された時の記憶のようなものだった。
光に満ちた空間で、何かの「存在」が、素材を組み合わせて世界を創り出す。その手つきは、ミオが生産を行う時と、驚くほど似ている。
そして、その「存在」は、世界が完成すると、深い眠りにつく。
ミオの「究極の生産」能力は、この世界の「創造主」の力を一部受け継いだものであり、世界のバランスが崩れた際に転生者として召喚された、という事実の片鱗を、彼女は夢の中で見たんや。
(なるほどなぁ……うち、もしかして、神様やったんかなぁ……)
ぼんやりと、そんなことを考えていると、夢の中に、もう一つの影が現れた。
それは、破壊の力を司る存在。
アークスや。
夢の中のアークスは、悲しそうな顔で、ミオに語りかけてきた。彼の声は、どこか遠くで響くようだった。
「なぜ、お前は世界を創り続ける……?この世界は、もう……」
夢の中で、ミオの能力の起源と、アークスの存在の片鱗が、ぼんやりと示唆されたんや。
その夢から覚めると、ミオの頭の中には、新しい生産のヒントが満載やった。
「ねーねー、エリアスはん!この古代文字、もしかして、こういう意味なんちゃう!?」
ミオが、目を輝かせながらエリアスに話しかける。
エリアスは、ミオの言葉に驚き、石板の文字を改めて確認する。
「な、なんと!?確かに、そなたの言う通りに解釈すると、この記号は『魂の鍛造術』を示す……!」
失われた古代の技術の断片が、ミオの夢と知識によって、今、蘇ろうとしていたんや。
フロンティア号は、新たな知識と、資材スライムたちが集めた珍しい素材を積んで、次の目的地へと向かう。
---
次回予告
王都の平和を脅かす、裏社会の影が迫る!?
うちのチート生産技術を悪用しようと企む、怪しい組織とは一体!?
資材スライムはんの、まさかの諜報活動で、隠された陰謀が暴かれるんやろか!?
次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?
第21話 裏社会の影と情報戦
お楽しみに!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます