第18話 完成!『ミオの動く工房』

超巨大な移動要塞『フロンティア号』の建設が始まってから、およそ二ヶ月。

「風薫る丘」は、もう完全に様変わりしとったわ。

空には巨大な骨組みがそびえ立ち、資材スライムたちが重機みたいに動き回る。

銀色のスライムが精錬済みの鉄骨を運び、緑色のスライムが巨大な木材を正確な形に加工していく。

「ぷるぷる~っ!」

スライムたちの可愛らしい声が、建設現場に響き渡る。

ドワーフのゴルムはんも、毎日工房に来ては、資材スライムの働く姿に目を輝かせとる。

「なんじゃと!?このぷるぷるした軟弱な生き物が、儂の鍛冶場より効率的じゃと!?ぐぬぬ……」

頭を抱えるゴルムはんの横で、銀色のスライムが「ぷるぷる♪」と精錬済みの鉄インゴットをポロンと出してやった。


ミオは、設計図と睨めっこや。

(フロンティア号の動力源、エーテルコアはよし。自動操縦システム、ゴーレムコアも順調。あとは、外装と居住区、そして畑の設置やな!)

巨大な要塞の建設は、想像以上に魔力を使った。何度も代償の眠気に襲われ、そのたびにフカフカソファでぐっすり寝た。

寝落ちしている間も、夢の中で工房の設計をしたり、資材スライムたちに指示を出したりしとったみたいやな。

(夢の中で、新しい素材の組み合わせとか、めっちゃ効率ええ建築方法とか、ひらめくねん!)


ルナリア姫もリリアーナ王女も、毎日工房に遊びに来てくれた。

二人の姫様は、資材スライムと遊んだり、ミオが作る絶品スイーツを頬張ったり。

「ミオよ!この『魔力アップルパイ』は、私の次元を歪ませる!」

「ミオ殿の工房は、まるで夢のようですわ……」

そんな二人の笑顔を見るたび、ミオは「まあ、ええか」って、引きこもりライフが遠のくことにも納得しつつあったんや。

特に、資材スライムが焼きたてのパンを運んでくるたびに、姫様たちが「ぷるぷるパンだ!」って喜ぶのが、めっちゃ可愛かったわ。


エルフの学者エリアスも、工房の常連や。

資材スライムが運んでくる珍しい古代の素材に目を輝かせとる。

「ミオ殿!この素材、分析してもよろしいか!?古代文明の叡智が、ここに……!」

エリアスが、目を血走らせながら資材スライムの吐き出した石ころを回収しとる姿は、ちょっと面白かったわ。


そして、ある晴れた日。

王都の空に、信じられへんほどの巨大な影が浮かび上がった。

『生産型移動要塞『フロンティア号』』が、ついに完成したんや!

それは、ミオの生産能力の集大成であり、王国の新たな力の象徴やった。

巨大な船体は、まるで空飛ぶ山脈のようだ。

船体には、王国の紋章が誇らしげに刻まれとる。

船の上部には、黄金麦が揺れる畑が広がり、野菜が実る庭園もある。

その横には、ミオの工房がまるごと乗っかってて、煙突からはモクモクと煙が上がっとる。

(うわぁ……めっちゃデカいし、めっちゃ動く工房やん!これ、王都の街中走らせたら、みんなビビるやろなぁ!)

ミオは、フロンティア号を見上げて、感嘆の声を上げた。

自分でも、まさかこんなデカいもんを作れるとは、思わへんかったわ。


フロンティア号の完成披露の場には、王族、冒険者、魔族の姫君、ドワーフ、エルフなど、様々な立場の者たちが集まっとった。

アルフレッド王子は、フロンティア号の圧倒的な存在感に、感動で言葉を失っとる。

リリアーナ王女は、目を輝かせながら、船の上の庭園を眺めている。

ルナリア姫は、フロンティア号の巨大さに興奮し、「あれで魔族の里まで行けるのか!?」と目を輝かせとる。

ライオスたちは、自分たちの活動拠点となるフロンティア号に、期待に胸を膨らませていた。

ゴルムは、フロンティア号の構造を解析しようと、目を皿のようにして船体を見つめとる。

エリアスは、フロンティア号の動力源であるエーテルコアの魔力に、興奮を隠せない様子や。


フロンティア号の完成を祝うパーティーは、盛大に行われた。

ミオの作った絶品料理が並び、資材スライムたちも料理の手伝いで大活躍や。

茶色のスライムは、焼きたてのパンを運んでくるし、緑色のスライムは、虹色野菜のサラダを盛り付けてくれる。

金色のスライムは、デザートのフルーツをキラキラさせて配っとる。

(あー、最高やなぁ……)

ミオは、みんなが笑顔で美味しいものを食べてるのを見て、心から幸せを感じた。

(別に必要かどうかちゃうねん。作りたいから作る。それがうちのロマンやねん!)

ミオは、自分だけの最高の工房が、世界を動かす要塞になったことに、ちょっとだけ得意げやった。


その夜。

フロンティア号の完成と、宴の疲労で、ミオは深い眠りについた。

能力の代償による深い眠りや。

資材スライムたちが、ミオの周りに団子になって集まり、彼女の寝顔を守るように寄り添う。

彼らの体が、優しい光を放っていた。

夢の中で、ミオはフロンティア号に乗って、世界中を旅する妄想を楽しんどったわ。

その夢の中では、資材スライムたちが勝手に調理してお菓子を完成させて、ミオが目覚めたら周囲のみんなが幸せそうに頬張ってるんや。

(あー、めっちゃストレスフリーな夢やなぁ……)


---


次回予告


完成したフロンティア号に乗って、いよいよ魔族の里へ出発や!

魔族との長年の不和を、うちのチート生産で解決できるんやろか!?

でも、魔族の里には、また新たな「ちょっとした」問題が待っとるんやろなぁ……。

次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?


第19話 魔族との交渉と文化交流、そして生産の影


お楽しみに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る