第34話〜戒厳令下のブロッサム〜

俺達、ドッグランナーがもたらしたBランク大型モンスター、バイトクラッシャーの出現、それを受けてブロッサム城の王族が城壁内への避難勧告を発令した、冒険者、商人、旅行者問わずブロッサム近辺の人員は城壁の内側へと退避せよと


「なんか、大事になってるね」


「そりゃそうよ、なんせ本来は高山地帯に生息してる筈のバイトクラッシャーが人里近くまで降りてきてるのよ、大事にならない方がおかしい」


「あ、空を見てっす」


レイに促され視線を空に映すと結界が張られ始めていた


「ブロッサム城に腕の良い結界師がいるって噂はホントだったみたいね、あんなに大規模な結界をこんな短時間で張るなんて」


と、パチュが感心した様に呟くのを聞きながら騒がしくなった冒険者ギルドの方に目を向ける


「Bランク以上の冒険者パーティへ緊急依頼です!討伐対象はバイトクラッシャー!」


ユキノさんが声を張り上げその言葉を聞いたAランク、Bランクの冒険者パーティ達が徒党を組み始める


「やっぱり、上位ランカーになると装備も凄いね、あの片手剣の人の装備、今から討伐に向かうバイトクラッシャーのクチバシだよ」


「バイトクラッシャーの刃は研ぎ知らず···だっけ?」


「そう、とても硬く鋭いバイトクラッシャーのクチバシは加工が困難だからそのままの形で剣や槍の刃先になる、その頑丈さから研ぎ知らずって言われてるわね」


と、雑談しているドッグランナー


「緊急討伐対象を発見した時の褒賞っていくらだったっけ?」


「金貨20枚っすね、今回の依頼報酬と合わせて山分けして1人金貨6枚っす」


ちなみにこんなにのんびりと雑談しているのは単にやる事が無いからだったりする、ドッグランナーはEランクパーティでありバイトクラッシャーの討伐にも街の防衛や避難民の誘導にも駆り出されないのだ、ちなみに街の防衛や避難民の誘導はA〜Cランクが駆り出されている、それだけバイトクラッシャーは強大なのだ


「ここに居ても邪魔になりそうだしパーティハウスに帰っとこうか」


「そうっすね、アタシ達の仕事は終わってるも同然っすし」


「じゃあ、解散かな、ツルギさんまた次の依頼で」


「了解、次はこんな緊急事態引かなければ良いな」


「あはは、そうだね」


と、苦笑いしながらパーティハウスに帰っていくドッグランナーの面々を見送りながら少し考える、少し引っかかる事がある


「電甲虫が爆ぜたのは何でだ?それに聞こえた咆哮はバイトクラッシャーの物とは少し違うような気がした···」


そう呟きながら冒険者ギルドの2階、資料室に向かう


階下の喧騒とは裏腹に資料室は静寂を保っていた


「そりゃ、今はテンヤワンヤしてるから当たり前か···」


独り言を零しながら資料を探す、目的は電甲虫の資料


「あった」


【電甲虫】

【身体に電気を蓄える性質を持つ不思議な甲虫、エメラルド質な甲殻はとても美しくその甲殻で絵画が作られる程、過剰な電気を蓄えた電甲虫は爆ぜる様な音を立てて放電する】

【なお、外的要因で過剰過ぎる電気を蓄えてしまった電甲虫は身体ごと爆ぜ命を散らす】


「これだ、外的要因···この外的要因に関する資料は···」


【電甲虫の研究資料】

【前略、電甲虫が過剰過ぎる電気を蓄える外的要因は落雷の他、Aランクモンスター、ライトニングウルフの咆哮を間近で受けてしまった事も要因となりうる】


「ライトニングウルフ···ライトニングウルフの資料は···」


【ライトニングウルフ】

【Aランク指定大型モンスター、平均20mの巨体を誇る緑色の大狼、高山地帯の更に奥地の森林地帯を根城にしている為目撃例が少ないが、人里近くに降りてきた例も有り発見した場合は煙玉を赤→緑→赤の順に打ち上げ、【緊急指定大型観測】の合図を送らなければならない】


ハッとして資料室の窓から紅玉川の方を見るとちょうど煙玉が打ち上がった、その色は


「赤、緑、赤···【緊急指定大型観測】···」


事態は最悪の方向へ転がり始めていた

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