雪乃のお菓子相談と雪乃の恋

 時間は少し過ぎ去りドーナツ作りになる。その光景を木乃葉は相変わらず面白くない表情で眺めている。一方白石はドーナツを作りながら雪乃にちょっとした違和感を感じていた。


(なんだ、客商売としてなにかが足りないような気がする……)


「まずは、こうしてドーナツを作るんですね」

「うん」


 砂糖をかなり甘めに入れて和菓子風にする雪乃。白石はドーナツの形にしていく雪乃にこう言った。


「今回のドーナツは大きめで」

「え? 小さい方がいいのではないのですか、旦那?」

「いや、これこそわんぱく感あったほうがいい。一口で食べて味を見極めるタイプじゃないからね」


 そこで雪乃は少し考えると白石の言うとおりにしてドーナツを作っていく。笑顔を浮かべるがなにかが固い気がする。


 こうなんて言っていいのか自然の笑顔じゃないのだ。これは母と共に商いをしていた時からこうなのか? そんなことを白石は聞けずにドーナツ作りを一緒にしている。


 流石に油の扱い方は教えなければならない。江戸では確か屋内での油の取り扱いにはうるさかった筈だ。だから白石はなみなみと油を注がずに揚げ焼きができる状態までに鍋に油を張った。


「だいたいこのぐらいの油にしてください。あんまり油を張りすぎると天ぷらみたいになるので、それと、必ず七輪を使って屋外でやってください。火事なんか起きた日には洒落になりませんから」

「それは心得てます」

「一応火加減についてですが、ちょっと見ていてください」


 白石は七輪に火をつけどんどん中の燃焼材が燃えていくのを見る。なんどか団扇で扇ぎ七輪の温度を上げて完全に温まった七輪の上に鍋を置いた。

 油が温まると、白石はその中に用意しておいた少し緩い小麦粉一滴垂らす。


「なにをしてらっしゃるんですか旦那」

「これ雪乃さんもしなければならないことなので見ておいてください」


 一滴の小麦粉が下に沈んでゆっくり上に上がってくる。それを見た白石はこう雪乃に教える。


「この辺りが油のベストな温度だと思ってください。す、すみません……最適な温度でした」

「ふふふっ、本当に面白い旦那ですね」

「ええ、ちょっと記憶があれなものでして」

「ただ、よく分かりました。これぐらいが丁度な火加減なんですね」

「はい」


 白石は次にドーナツの生地を油の中へ入れて揚げていく。甘く香ばしい香りが周囲に広がる。しゅわしゅわと音を立てて肌色の小麦粉が揚がっていく。それは徐々に茶色へ変化してとても旨そうな香りになる。


「さて、この辺で」


 白石は鍋の縁を持つと一度地面へ置く。もちろん縁を持つときは持つ部分に厚手の布を被せることにする。


「なんで七輪から下ろしたんです旦那?」

「高温になってきているからです。油はあまりに高温になると発火します。なのでこのように余熱で揚げたりしていきます。そして冷めてきたらまた七輪の上に戻し、また高温になったらこうして下に下ろすを続けます」


「わ、分かりました。火事は怖いですからね旦那」

「はい」


 白石は冷めてきたのを見て再度七輪の上に鍋を戻し加熱していく。そうしている内にとてもよい感じのドーナツが出来上がる。


 ドーナツが出来上がると油を切り、平皿に適量に広げておいた砂糖を少しドーナツにつけてまぶすようにしていく。砂糖は加納屋の差し入れだ。なにも遠慮することはない。ただ砂糖は高価なのであくまでそのときに使う適量を平皿に盛っておくことを雪乃に教えた。


 少し熱めだが素肌でも持てるようになったぐらいで白石はドーナツを掴むと雪乃の口に持って行く。


「え?」

「どうぞ」


 やはり白石は身長が高いので見下ろす形になる。雪乃は少し恥ずかしがるがそれでも白石の手に握られているドーナツをはふといった様子で口ですくい取る。


 それを見ていた木乃葉は一瞬ムッとした表情になる。加納屋はそんな木乃葉の表情を見て青春だなと呟く。


 まるでリスのようにドーナツを頬張る雪乃はどんどん幸せと言える表情になっていき、そして誰にも見せたことのない笑顔を浮かべた。


「……え」


 その笑顔を見た瞬間、一瞬白石の周囲の景色が変わったような気がした。この茶屋に多くの客がいて、一人の女性が今の雪乃と似た笑顔を浮かべて接客している。


「なんなんだ……」


 とても器量が良く赤がよく似合う女性であった。自分は今なにを見ているのかと目を擦ると雪乃の声が聞こえる。


「旦那、旦那」

「あっ」


 雪乃の声が聞こえた瞬間、白石の周りからその景色はすっかり消えてしまっていた。そして今浮かべていた雪乃の笑みでさえも。


 不思議な体験はまた後に考えるとして、白石はここで一つ確信というものを掴んだ気がした。


「笑顔……」

「笑顔?」


 白石の笑顔という言葉に雪乃はうつむいた様子で笑顔という言葉を反芻する。とても嫌な部分を言われたような表情だ。


 しかしそこで雪乃はうつむくのをやめ、顔を上げると白石の瞳を見据えて真剣な表情でこう言った。


「わかってしまいますか、やっぱり旦那には」

「……」

「黙らないでくださいまし」

「すみません」

「謝らないでくださいまし」


 人間、人の一番嫌な部分を指摘してしまった形になったとき非常に気まずいものだ。雪乃は隠せませんでしたねというと、茶屋の椅子に腰を下ろす。そんな雪乃を木乃葉と加納屋は見やる。


 白石は雪乃の隣に座ると雪乃の言葉を待った。彼女は恐らくなにかを言うつもりであろうと。


 雪乃は遠くを見つめると、大きく息を吸い込んだ後に重い口調でこう言った。


「私に笑顔に違和感を持ったのは旦那が初めてでしたよ」

「……」


 そこで雪乃は過去を思い出すように一つ一つ語っていく。


「母は器量が良いというか、非常に人付き合いが上手く、その上茶屋を繁盛させていました。もちろんそんな母の周りには人が多く居て、母はその笑顔を絶やさない人でした」


 雪乃はそこで言葉を一つ切ると、先を続けた。


「しかし母が亡くなると、周りの人がどんどん居なくなってしまいます。この世の中の当たり前のことなのかもしれませんが、私には関わり合いになりたくなかったのかもしれませんね。最初はそうじゃなかったんですよ。来てくれる方もいました。ですが人というのは、その人間と付き合うことが良いことになるのか悪いことになるの見極めた瞬間に、捨てるという選択しになるのでしょうね」


 雪乃は現実を受け止めていた。いつの日も、どんな世界でも、人は罪な生き物だ。やっかいごとには極力関わりたくない、それはどんな時代にも共通して言えることだろう。


「そんな私のことを心配して下さった加納屋さんが、もう一回茶屋をしてみないかと言って下さったんです」


「ごほん」


 雪乃の言葉を聞いていた加納屋はそこで大きな咳をした。少し照れがあったのだろう。しかし雪乃はそんな加納屋を見やると、こう寂しい口調で言った。


「しかし流行りません。流行らないと言うことは私には一つしか選択肢がありません」


 その先は白石は聞きたくなかった。しかし雪乃は白石の顔をみやるとこう言った。


「この店を引き払い、野となれ山となれしかありません」


 野となれ山となれというキーワードがとても不吉な物に聞こえた。なにかこの娘にとって不幸なことにしかならないような気がした。確かに加納屋を頼って新たな職に就くことも可能だろうが、もしそれが遠方になってしまった場合、加納屋はその先になにが起こっているのか知りようがない。相談相手が居るとはいっても、まだ雪乃は若すぎるのだ。


 だからこそ白石はこの娘のことを助けたくなった。なんとしても。雪乃は心の中に溜めていた感情を吐露することで初めて瞳に涙を浮かべて涙を流した。


 白石は一瞬迷ったが雪乃の体を抱きしめ、そして強く抱きしめた。そんな白石に雪乃はまた、引きつけられるような笑顔を浮かべてこう言った。


「旦那、勘違いしちゃいますよ。そんなに優しくされると」

「それでも、俺はあなたを守りたい」


 そんな雪乃と白石の会話を聞いていた木乃葉は、出来上がった柿大福の皿を右手に持ち、そして出来ているドーナツの皿を左手に持つと意外な行動に出た。


 とても侍の家の人間とは思えない、そんな行動だった。

 通り行く通行人に向かって凜とした口調と笑顔でこう言い始めたのだ。


「本日こちらの茶屋で新製品が誕生いたしました! お一つどうでしょう? そこのお人、どうでしょうか?」


 引き留められた町人風の男性は最初はうざったそうにしていたが、お菓子を見て少し目を丸くした。


「これ菓子かい? なんていう変わった菓子だい」

「そうでしょう、我が店が自信を持ってお売りする最高に美味しいお菓子でございます」


 雪乃は目を丸くし、白石はそんな木乃葉の行動を見て、自分も動かないといけないと思い立ち上がった。


 そして木乃葉の隣に行くと、こう大きな声で客寄せをする。


「大福の中に柿を入れて、その柿の渋い甘みと絶妙にマッチするあんこ。果実のあまみとどっしりした食べ応えのある大福はいかがですかー。ドーナツという西洋お菓子もありますー。お茶と最高の組み合わせですよー」


 柿大福という見慣れないフレーズと、ドーナツが西洋菓子ということを聞いて客が集まり始める。


 雪乃は目を丸くした後にその顔に誰もを魅了する笑顔を浮かべる。白石に悩みを打ち明けてスッキリしたのもあるし、こうして自分の為に動いてくれた木乃葉と白石のことがなにより嬉しい。


 こんな嬉しいことをされて隠れた笑顔が浮かばないわけではなかった。雪乃も立って笑顔を浮かべてこういう。


「お茶も必要ですよね。すぐにお入れ致しますよ」


 そんな雪乃の笑顔を見た客の人は、


「なんていういい笑顔だい、菓子も旨い、あんたは器量よし最高な店じゃないかい」


 初めて来た男性だったのだろう。彼は率直に自分の意見を述べる。そしてその男性は雪乃にこう言った。いやこの男性だけではない、この店に集まった皆がこう言った。


『器量よしの姉ちゃん、はよう茶を」


 そんな皆の求めを聞いて雪乃は笑みを浮かべるのだった。白石、木乃葉、雪乃で客寄せをしつつ、客をさばいていく。お菓子も好評だったが雪乃自身のことも好評だった。


 暫く店のパフォーマンスをして客を呼び、その結果、多くのお客さんがお菓子に満足し、雪乃の笑顔にも満足した。気がつく頃にはお菓子は完全に売れ切れていた。


 雪乃は白石と木乃葉がハイタッチして喜ぶのを見て考える。自分の母が、自分に望んでいたことはなんだろうか? と。


 お前が良いと決めた男が目の前に現れた場合、その男と一緒になりなさい。私はお前が幸せになることを望んでいるんだから。


 この雪乃の母の思いは亡くなる直前まで変わらなかった。父親が居ない分、もし自分がこの雪乃を残して死んでしまったらということを常に母は考えていたんじゃないのかと雪乃は考える。


 店も一緒にやれて、更に最高の助言をしてくれ、とても優しく、そして一番遠い人。そう思うと雪乃はくすりと笑い、木乃葉に向かって頭を下げるとこう言った。


「お嬢さん、いえ木乃葉さん」

「はい?」

「ちょっと、あなたには怒られるかもしれませんが、私の正直な気持ちを白石さんに伝えますね」

「……」


 この雪乃の言葉に木乃葉は押し黙る。雪乃には分かっていた。自分と白石が仲良くお菓子を作り、談笑をしていた時に、この木乃葉は心が引き裂かれような気持ちで居たことを。


 加納屋と白石は嬉しそうに会話をしている姿が見える。これでいけるとかなんとか言っているが、そんな男達の喜ぶ会話の中に雪乃は入っていく。


「ちょっと、よろしいでしょうか?」

「なんだい雪乃?」


 加納屋と白石は会話を止め、雪乃の言葉を待った。雪乃は息を大きく吸い込むと崖から飛び降りる覚悟で白石に告白じみたことをする。


「旦那」

「はい」


 雪乃と白石の言葉に木乃葉は耳を傾けているのが雪乃にはよく分かった。気が気じゃないということが表情でひしひしと伝わるのがわかった。


 だから雪乃は心の中で思う。そんなに心配することじゃないんですよ。私はどうせ玉砕しますからと。


「白石さんは今、職に就いておられませんよね」


 痛い質問だったのか白石はやや視線を逸らす形になるが、雪乃はそんな白石に向かってこう言った。


「嫌みで言っているわけじゃありません。どうです旦那、私と一緒にこの店をやりませんか? お金も儲かるし職にも就けるし一石二鳥になりますよ」


 雪乃の言葉に白石は顎に手を置いて考える。そして木乃葉は耳をぴくぴく動かしながら二人の会話に耳を傾けているのが雪乃にはよくわかった。


 白石は暫く考えると雪乃にこう言葉を返した。


「嬉しい申し出なのですが、今回はお断りします。理由としてはせっかくこの店が繁盛しそうなのに、こんなむさ苦しい男がいたらそれも潰しかねないことにもなりかねないでしょう。俺はこの店には繁盛してもらいたいし、雪乃さんにも幸せになって貰いたい」


「どうしても駄目ですか? 今は柿が取れる季節ですけど、この先は取れなくなります。そうするとまた新たなお菓子が必要になります。その為には旦那の力が必要になるのではないかと……」


「そこは心配ご無用です。季節ごとに新しい料理を一緒にまた考えていきましょう」


「……」


 涙が流れそうになった。その白石の輝かんばかりの笑顔を見て、この人は優しいというのを飛び越えているのだなと。雪乃はそう思った。


 欲しいけど、絶対手に入らない存在。これで完全に雪乃の初恋は砕けた。だから涙を浮かべないようにして木乃葉の方を向くと、とびっきりの笑顔を向けてこう口だけを動かして伝えた。


「駄目でした」


 そんな雪乃の雰囲気が伝わったのか木乃葉は安堵すると共に、なんとも言えない悲しい表情を雪乃へ向けた。


 恋する女と振られた女。雪乃は木乃葉の元へ近づくと肩へぽんと手を置くと、

「旦那は茶屋だけで収まる人ではないですから」

 と、だけいって店の片付け準備を始める。そんな雪乃のことを白石は申し訳ない表情で見ていたが雪乃は気がつくわけもなかった。


 そして加納屋は顎髭を触ると、こう呟くのだった。


「悲しいことだが、これもまた青春だ」


 片付けが終わり、白石、木乃葉、加納屋の三人は帰路についていた。木乃葉は白石の隣を歩き、見上げるようにして白石の顔をちらりちらりと見やる。


「なんですか」

「いえ、やっぱり白石様なんだなと思いまして」

「え?」

「気前が良くて二枚目とはこのことを言うんでしょうかね」


 まさかこの江戸に来てその台詞を聞けるとは思わなかったと白石は思うと同時に、とても気恥ずかしい気持ちになった。


「でも、白石様は女の気持ちが分からない人と言うことが今日のことでよく分かりました」

「え?」


 木乃葉はぽんと白石の胸をタッチすると、囁くようにして言った。


「だって、いえなんでもないです」

「い、いやー、最後まで言って下さいよー」

「なんでもないです」


 木乃葉はそこで声には出さず、口だけを動かして心の中を表現した。

 私もあなたのことをお慕いしているのかもしれませんね。雪乃さんと仲良くしているのを見て、何度も帰ろうと思いましたので。


 でも、結果的に居てよかったと木乃葉は考える。自分の咄嗟の行動が一人の女の人生を救ったと。


 そこで木乃葉は笑顔を浮かべてまた白石の顔を見やるのだった。

 そんな二人を見て少々後ろに歩く加納屋はこう呟く。


「青春ですなあ」


 三人はそんなことを言いながら日本橋の橋を越えて江戸の町へ消えていくのであった。


 後日徳一屋が茶屋を訪れると、そこには母の時代に見た光景が広がっていた。雪乃の笑顔を中心になるように、客が談笑し、旨い菓子を食べ、それぞれがひとときの楽しみを謳歌している様子だった。


 徳一屋は雪乃の笑顔を見て、雪乃の亡き母を重ねる。


「そういえば、こういう店だったな」


 徳一屋は雪乃に目をやると、雪乃は徳一屋の元へ駆け寄ってきた。


「徳一屋さん……」


 雪乃は徳一屋の顔を見てきりっと表情を引き締めた。徳一屋は豪商なのでその店の動向がどうなっているのか判断するかもしれない。特に母の代からの常連だ。雪乃は徳一屋に認めて貰いたい気持ちが芽生え始めた。


「茶と菓子を頼む」

「はい!」


 暫くして徳一屋は柿大福とドーナツを食べ、雪乃にこう言った。


「よい味だ。甘さを求める客のことをよく考えてある。ふっふっふっ、白石の奴考えおったな」

「本当によくしていただいて」


 そこで雪乃は母のものと変わらぬ笑顔を浮かべる。それを見て徳一屋は初めてその顔に微笑を浮かべた。


「これで店の心配はいらぬだろう。お前の店は母を超えたと思ったと思っていい」

「ありがとうございます」

「しかし白石。面白き男よ」


 徳一屋はそこで言葉を一度切ると、先を続けた。


「精進するがよい」


 そこで茶を最後まで飲み干すと立ち上がる。そしてもう一度店の光景をもう一度眺めて昔を思い出すのであった。


「白石よ、お前は必ず儂の力を必要になるときがあろう。そのときは真剣に勝負をしようぞ」


 そう言いながら徳一屋は茶屋で忙しく動く雪乃を見てまだ見ぬ未来を予測するのだった。


 ある日の夜、重治郎と玉城伊織がお茶と共に柿大福とドーナツを食していた。伊織は柿大福とドーナツを食した後に重治郎にこう言った。


「やはり、重治郎この男をはただ者ではない。和を極め洋も極めているように思える」

「玉城様の仰るとおり私もそう思います」

「この男を逃がす手はない」

「私の意見書も上に読んで頂いておりますし、そろそろ頃合いではないかと」

「料理による外交か、上も興味をもっておる。上には白石を合議の席に着かせられるようになるように、私も交渉してみよう」

「はっ、よろしくお願い致します」


 そこで玉城は一息ついた後に重治郎に少しすごむ声音で言った。


「もっとも、この国の法を壊す恐れがあるという考え方の持ち主と思われてしまう可能性もある。もし白石が我々と行動を共にしたいと言うのであれば、それ相応の覚悟を持つように厳重に伝えよ」


「はっ! 心得ました!」


 自分も襲われた経験もあり、更には幕府内では鎖国派も非常に多い。この職に就くということは命を賭けるということなのだなと重治郎は心底思った。


 表情が陰る重治郎を見て、玉城は菓子を口に入れると場を和ますようにしてこう呟いた。


「うむ、それにしても菓子が旨すぎて茶が進むわ。この男の料理は、この世の喜びを集約したような不思議な感覚があるな」


 そんな玉城の表情にはさっきとは打って変わって人が最高に楽しんでいるという笑顔という表情が浮かんでいるのであった。


 こうして白石の知らぬ間に話が進んでいくのであった。

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